RISE

鈴本佳菜

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滅びゆく国8

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 歩きながら話す二人を今も冷たい風が襲い、視界にうつる景色はどんよりと曇っていた。

 「滅びたって……国はあるじゃないですか。人もいるし建物もあるし」

 「愛俚さんにはそう見えるんだね。でも確かに滅びてしまったんだ。今まであったアリティネという国は。今のこの国はもう別の国にしか思えない。さっきの商人に優しさを感じた?」

 さっきのおばさん……優しいどころか嫌な感じしか受けなかった。確かにりんごを持ってた私が犯人みたいだけど、人の話もろくに聞かないでショーンさんがいなかったら今頃どうなっていたか。

 「優しくは思えなかったでしょ?でも昔はあの人も違ったんだ。商人たちは皆気さくで明るくてオマケをしてくれたり冗談を言って笑ったり。今はみんなそんな余裕がないから……子供まで」

 ショーンの言葉にふと愛俚は違和感を感じた。

 あれ……そういえばさっきショーンさん、あのおばさんに落として行ったのは男の人だって言わなかった?見てたんだよね?なら子供が犯人だと知っているはず、嘘ついたんだ。

 「着いた。ここが僕の家だよ」

 二人はショーンの自宅でもある二階建の店に着いた。クリーム色の壁にレンガやカラフルなガラスが埋め込まれた外壁に、可愛い店名のプレートが飾られていた。

 「可愛い!!これガラス?すごい綺麗。ヨーロッパの建物みたい。花もいっぱいだし」

 今まで見てきた建物があまりに色がなく無機質な物だったせいか、ショーンの店だけがとても鮮やかに輝いて見えた。

 そのせいか先程まで頭に浮かんでいた疑問などすでに愛俚は忘れていた。喜ぶ愛俚を嬉しそうに見ながら、ショーンはドアを開けた。

 「いらっしゃい。あら、おかえりショーン。そちらは?」

 「ただいま、母さん」
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