RISE

滅びゆく国9

　ショーンの後ろにいる愛俚に気付き、母親がカウンターへと招く。

 ｢母さんこちら愛俚さん。訳あってアリティネに来たんだけど、さっき出会って食事がまだみたいだから何か作ってくれない？｣

 ｢あら、サンドイッチでもいいかしら？｣

 ｢はい。あの……ありがとうございます｣

　外観と同様店内も木のテーブルや椅子に、植物や花が飾られ温かい空間が漂い日本にあるカフェと変わらないように思えた。

 ｢飲み物温かい紅茶でいいですか？｣

 ｢はい。ありがとうございます｣

　そう声をかけてきたのは店主らしき男性だ。

　ショーンさんのお父さん……かな。でもあんまり似てないな。

　ショーンは白い肌に茶色の細い髪の毛、メガネをかけ日本で言う草食系男子という感じだ。しかし店主らしき男性は、真っ黒の肌に黒い髪の毛、筋肉のしっかりついた体はどう見ても肉食系男子だ。あきらかに対照的な二人に、愛俚はおそるおそる聞いた。

 ｢あの……もしかしてショーンさんのお父さん？｣

 ｢そうだよ。父さん、こちら愛俚さん｣

　茶葉にお湯を高い位置から注ぐ父親は、視線を茶葉から逸らさないまま話した。

 ｢どこから来たんだ？｣

 ｢聞いても大丈夫かな？｣

 ｢えっと……日本なんですけど知ってます？｣

　三人は顔を見合わせると、少し首を傾げた。

  ｢日本……聞いたことない国だな。ここにはどうやって来たんだい？｣

  ｢それは事情があるみたいなんだ｣

 「はい……。」

　何やらショーンさんは誤解してるみたいだけど、それで良かったかもしれない。だって気づいたらここにいたなんて、そんな話誰が信じてくれる？