RISE

孤独2

　何……この人たち……まさか。

 ｢ちっ、早くしねぇから起きちまったじゃねぇか｣

 ｢でも、この女何も持ってねーんだよ｣

　……やばい。この人たちが誰とか、そんなことどうでもいい。とにかく逃げなきゃ、やばい。

　愛俚の体が、神経すべてが危険と恐怖を感じて警告していた。女としての危険、命の危険を……。叫ぶ？でも……声が出ない。

　真っ青になっている愛俚に、男は近づき言った。

 ｢おい。あんた旅者だろ。金ねぇのかよ｣

　お金目当て？

　答えられない愛俚に、もう1人の男が言った。

 ｢俺たちは金か、金に変えられる物が欲しいだけだ。大人しく差し出せば何もしない｣

　……本当に？

　愛俚の視線が取られたリボンへと落ちる。

 ｢ん？ああ……これはなかなかいい生地だったからな。金になりそうだ｣

　本当にお金目当てなら、出せば助かるかもしれない。愛俚は夜食の入った紙袋から一枚のお札を取り出した。ブシュナー夫妻から貰った、唯一のアリティネ国で使える紙幣だった。

 ｢お、持ってんじゃねぇか。他には？｣

　震える手で愛俚はジャケットから財布を取り出すと、地面に中身をぶちまけた。

 ｢使えるのか？どこの金だ｣

 ｢に……ほん｣

 ｢聞いたことねぇな｣

　何を話しているのか、ただ愛俚は待つしかなかった。

 ｢仕方ねぇ。一万リノだけか。それも貰っていくから脱げ｣

　え……ジャケットを？

 ｢早くしろ｣

　冷たい目に愛俚はただ従うしかなかった。男たちは愛俚から、ジャケットとリボンと唯一持っていた一万リノ、その上夜食の紙袋まで奪って行った。

　男たちの足音が聞こえなくなった途端、愛俚の体は崩れた。