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第十二話 隠者
しおりを挟む○渓谷
カフィンたち一行、河原で洗濯したり食器を洗ったり。
カフィン「そうだスウブルさあ、なんかこう、結界を張れるアイテムとか、モンスターと吸い寄せ合わなくなる呼吸法とか、知らないか? モンスター目線でよ」
タルニコを手伝って毛布を干していたスウブル、しばし考えて、
スウブル「物知りの隠者が住んでる所なら、おいら一つ知ってるけどな」
カフィン「それは、モンスターの隠者?」
スウブル「(首を振って)ない。人間の隠者」
サトバク「(たわしで鍋を磨きつつ)その隠者って、モンスターと仲良しなのかい」
スウブル「いいや。モンスターと仲良しの隠者は、お話の中だけ。本物の隠者は、めちゃコワい」
カフィン「スウブルが紹介してくれるわけじゃないのか?」
スウブル「ない。あの隠者は、モンスターのこと嫌ってるからな」
ロクパンク「(誰かのズボンにちくちくと継ぎを当てながら)それなら、どうして居場所を知ってるのだ」
スウブル「昔、可哀相なおいらは、生きてくために、色んなものを頼ったからな」
タルニコ「その隠者さんは、スウブルを助けてくれなかったの?」
スウブル「なかった。物知りの隠者、モンスターが嫌いだった」
カフィン「ふうん。(みんなと顔を見交わして)――なんかよくわかんないけど、行ってみるか」
○森の中
一同、鼻歌を歌いながら進む。
スウブルとタルニコ、倒した小型モンスターを二人で引きずりつつ。
と、そこへ、スウブルが「警戒!」と叫ぶ。
呆気にとられる一同。
すぐそこの茂みがぼこっとへこむ。
みんなそちらを見る。
スウブル「そっちない! 敵は透明をしてる!」
タルニコ「あっ!……(殴られたように吹っ飛び、倒れる)」
カフィンが即座に駆け寄ろうとするが、スウブルがとめる。
カフィン立ち止まる。
止まっていなかったら進んでいたあたりで、大きな爪痕がえぐれる。
スウブルが目を閉じ、静止したと思うと、カッと目を開け、ゆらりと向こうへ行きかけたと思うと、いきなり振り返ってなにもない空間に一撃。
気持ち悪い声、なにか大きなものが倒れた音のあと、絶命したモンスターが現れる。
スウブル、ダメ押しの二発、三発、四発。
カフィン、タルニコをそっと抱え起こす。
タルニコ、こめかみから血を流しつつも、弱々しくピースする。
カフィンがタルニコを負ぶい、ロクパンクとサトバクはあたりを警戒しつつ、去る。
スウブル、このたびのモンスターの死骸をも引きずって続こうとするが、ふとタルニコの血痕に目が行く。
誰も見ていないのを確かめると、さっと指でぬぐって舐める。
恍惚の表情。
はっと我に返り、自分の頭をポカリ。
○岩場
一行が進んでゆく。
タルニコは額に包帯を巻いているが、もう自力で歩いている。
○森の中・滝壺の傍
スウブル、一人茂みに隠れている。(矢印「外で待機」)
洞窟の中。茣蓙に座る隠者。
やれやれとため息をつき、
隠者「なんぼ強いか知らんが、こんな奥地まで、回復魔法もなしでか」
タルニコ、包帯した後ろ頭を掻く。
カフィン「まあそう本格的に冒険しようってわけじゃァなかったんでね」
隠者「(すごく嫌そうな顔で、ため息をつき)それで、なんの用があって奥地くんだりまで?」
カフィンが口を開こうとすると、隠者おしとどめて、
隠者「待った。なにか教えて欲しくば、ワシの依頼を聞いてもらおうか」
カフィン「まずおっさんがこっちの質問に答えられるかどうか、いったん聞いてよ」
隠者「だめ。答えられそうなら痛めつけて吐かせようって輩がいるんだ。《こっち》の、イマドキの冒険者なんぞ。時代が違えばゴロツキか浮浪者だ、あんなもんは」
カフィンたち、頭を寄せ合い、こしょこしょと相談して、
カフィン「オーケー。受けるかどうかはわかんないけど、依頼のほう聞かせてもらうよ」
隠者「なんか癪に障るな。――まあいい、ある村にな、モンスターを、かたくなに処分させない連中がおるのだ。襲うタイプの中型モンスターをだ。『心をひらけばわかり合えるはずだ』という主義でな」
カフィン「いるね。時々。それで?」
隠者「そいつらを、説得して来てほしい。いらんことはやめて、さっさと処分しろとな」
ロクパンク「それはまた、えらく干渉的ですな。隠者でおらっしゃるお方が」
隠者「(腕を組み、泰然として)たいがいのことはどうでもいいが、個人的にケッタクソの悪いことはな。こんな暮らしをしとっても、耳に入れば腹も立つ」
カフィン(心の声)「スウブルを置いて来て正解だったな」
ロクパンク「完全な没交渉ではおらっしゃらぬですか」
隠者「ワシだって、たまには甘いものや酒なんぞ欲しいでな。物売りがちょくちょく来るのよ」
○岩場
一同、てくてくと歩いて行く。
サトバク「説得ったって。それにスウブルがいたら逆効果な気がするけど」
カフィン「やっぱりそうかな」
サトバク「そりゃね。『モンスターとはわかり合えませんよ』って。『どの口が』ってなもんだよ」
ロクパンク「確かに、確かに」
スウブル「(チッチッチと指を振り)モンスターと人間は、絶対にわかり合えねえよ。だからおいらは、モンスターを片っ端から倒しまくって、人間になるんだよ」
サトバク「……思った以上に、ややっこしいな」
○くだんの村
《くだんの村》のテロップ。
荒れ果てている。
あたりには食い散らされた人々の痕跡。
タルニコ「ひどい……」
スウブル「それ見たことか」
一行、村の奥へ進んでいく。
教会の向こうに、モンスターの背中。
むくりと起きて、こちらを向く。
懸賞金クラスのデカブツ。
カフィン「こいつ、進化したんじゃないの?」
ロクパンク「状況的に、そうだろうな」
カフィン「一気に? そんで、冒険者以外をこんなに殺したの?」
ロクパンク「(かぶりを振って)《こっち》の因果律の、バグり具合よ」
カフィン「なんにせよ、こいつにはまだ懸賞金、かかってないわけか……」
襲って来る。
一同、応戦。
○森の中・滝壺
外で待つスウブル。
洞窟。隠者、報告を聞いて、ただただ苦虫を噛み潰したような顔。
カフィン「まあとにかく、これで依頼は」
隠者「ああ、よろしい。でも、できるだけあちこちで吹聴してくれよ。人間とモンスターの共生、結果はどうなるかをな」
カフィン「わかったわかった」
隠者「それで? なにを聞きたい」
カフィン「(居住まいを正して)早い話が、オレは故郷に帰りたい。そのために、いかなるモンスターとも吸い寄せ合わない体になりたい。――以上」
隠者「(しばし沈黙ののち)――……そういうものは、すまないが、知らない」
一同、肩を落とす。
隠者、キセルをくわえ、深々と吸い込み、長々と煙を吐いて、
隠者「ノーカンじゃ。次の質問を許す!」
カフィンたち、顔を見合わせる。
タルニコが挙手。
一同頭を寄せ合い、こしょこしょと相談ののち、
タルニコ「大モグラの集落の場所を、教えてください」
隠者「(キセルの灰をポンと捨てて)それならたやすい。地図を描いて進ぜよう」
タルニコ、カフィンとハイタッチ。
隠者「(筆でさらさらと描きながら)――今では《侵された地》だがな」
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