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第十一話 人語をしゃべるモンスター
しおりを挟む○《シラサギ亭》の寝室(夜)
カフィンの部屋。
ホームシックの涙をにじませるカフィン。
布団の上から抱きしめて添い寝するタルニコ。
同室、広やかなソファで寝ているロクパンクとサトバク。
床には、遅くまで遊んでいたらしい、すごろくのようなもの、食い散らかされたお菓子や飲み物。
窓をコツコツとたたく音。
誰も起きず、反応なし。
窓がそっと開き、滑り入る曲者のシルエット。
カフィンたち四人、跳ね起きて一瞬で戦闘態勢。
スパリグ「(フードを脱いで顔をあらわし)オレサマ」
カフィン「(戦闘態勢を解いて)どしたの。マズい感じ?」
スパリグ「だいぶマズい。スパイや殺し屋の連中が、トーシローが手ェ出しやがったって」
タルニコ「でも、誰も敵いっこなかったんでしょ? 感謝こそすれ」
ロクパンク「(サトバクを見て)なにか、裏社会のバランスオブパワーでも脅かしたかな」
サトバク「(肩をすくめて)僕は汚いものは見ないことにしてるから」
スパリグ「とにかく、オレサマたち全員、朝にはバラされてる感じらしいから、オレサマは逃げる。アバヨ(窓から去る)」
一同、ちょっとぼんやりしたあと、それぞれの部屋に戻り、速やかに荷物をまとめる。
コレクションや高価な嗜好品の類を、一瞬未練がましく見つめるも、ごっそり置いて行く。
○ダイベイの町・外(朝まだき)
野原の向こう、シルエットな四人が歩き去る。(矢印「スパリグのパーティー」)
先頭の一人が振り返り、手を振る様子。
カフィンたち一同、大きく振り返す。
朝日が昇る。
○平野
カフィン、タルニコ、サトバク、《侵された地》を迂回する。
迂回し終えた所で待っていると、《侵された地》からロクパンクが駆けて来る。
ボロボロの姿。(矢印「ゾンビにやられた」)
手になにか持っている。(矢印「戦利品」)
○《奥地》の森の中
《奥地》のテロップ。
見果てない大地のそこここに大型モンスターの糞、そこから奇妙な大樹が生えている風景。
森の中。大型モンスターが襲って来る。
サトバクが切り刻む。
と、茂みから中型モンスターたちが飛び出して来て、大型モンスターの死骸をむさぼり食う。
タルニコ、中型モンスターたちをかき分けて、さっと可食部を切り取る。
(体毛はちょっと伸びて、だいぶ大モグラ感が戻っている。)
○樹上の寝床・外観
木の下に立っているロクパンク。(矢印「見張り・交代制」)
○樹上の寝床・中
寄り添って眠るカフィン、タルニコ、サトバク。
○野原(朝)
川で体を洗う一行。
新聞屋の伝書鳩(大型)が頭上を横切る。
カフィンが指笛を吹くと降りて来る。
コインを渡して一部買う。
○陽だまりの射す雑木林
木々のあいだにハンモックを吊るして昼寝するサトバク。
少し離れて立っているロクパンク。(矢印「見張り・交代制」)
荷物を枕に寝転んで『風上新聞』を読むカフィン。
その上にクロスして腹ばいになり、花かんむりを編んでいるタルニコ。
カフィン、無意識にタルニコの体毛をつまんでねじる。
タルニコ「(鬱陶しそうにカフィンの手を払って)伸びて来ちまって、色気がなくって悪いねェ」
カフィン「――いいや? 懐かしいよ(と言って体毛をなでる)」
タルニコ「(完成した花かんむりをカフィンにかぶせて)勇者一行は?」
新聞記事。勇者一行の写真。
マグカフ、さらに傷まみれの顔で不敵に笑う。
ペルトボル、一段とごつくなった肉体。
オルコル、中指を立て、舌を出している。
カフィン「(花かんむり、されるがままで)進展なし。みんな退屈な修行中」
タルニコ「(新しい花かんむりを編みつつ)まだあの魔術師に勝てないの?」
(回想)記事。
装備自体の強さや譲り受けた魔法などを無効にする能力。
魔術師の写真。
勝ち誇った顔でピースしている。
カフィン「(もう一個花かんむりをかぶせられつつ)ああ。まだ挑み直してすらない。とにかく肉体と精神を鍛えまくってる。素手で倒すつもりだな」
魔術師の写真、ギクッとする。
タルニコがもう一つ花かんむりを編もうとしているところへ、ロクパンク「敵襲」と言って構える。
一同、一瞬で殺気立つ。
すると、茂みの中から、「トモダチ!」と声がする。
見つめていると、両手を上げながらゆっくり、大きなもふもふのモンスターが出て来る。
スウブル「トモダチ。なにもしない。まるごし」
一同、武器をおさめる。
人語を話すもふもふのモンスター、ほっと吐息する。
タルニコ「あなた、言葉が話せるの?」
スウブル「おうおう(とうなずく)」
タルニコ「(ちょっと疑わしげに)――お名前は?」
スウブル「おいらのお名前は、スウブル」
タルニコ「あたしはタルニコ。――へえ、ほんとに話せるのね」
スウブル「話せる。悪い人間に教えられた。おいらは特別うまくいった天才だったんで、悪い人間によくホメられて、みんなにイジメられた。それで、まだ小さかったおいら、逃げ出した。それから、モンスターにも人間にも、食われないように、逃げ続けて来た、おいら、滅多にいないほど可哀相な奴」
カフィン「(花かんむりを取って)その悪い人間って……?」
スウブル「《沼地の館》に住んでる。気を付けないと、あそこの地下にはヤバいのが待機してるから、行っちゃダメだぞ」
カフィン「ご忠告ありがと。ほんとに敵じゃないんだな」
スウブル「ほんとに敵じゃない。おいらの夢、聞きたいのか?」
タルニコ「教えて?」
スウブル「(タルニコを見て、一瞬目を細め)――お前、もしかして大モグラか?……」
タルニコ「そうだよ」
それから、瞳を輝かせて、
タルニコ「もしかして、大モグラに友だちがいたりする?」
スウブル、なにか答えかけて、パクパクしたあと、
スウブル「何匹か、見たことあるだけだ。でも、そういえば最近見ない。久しぶりに見た」
カフィン「もしかして、大モグラの集落の場所、知ってたりする?」
スウブル「(かぶりを振って)大モグラの巣は、なかなか見つからない」
カフィン、「巣?」と、反応しかけるが、タルニコが制して、
タルニコ「それで、あなたの夢って?」
スウブル「(嬉しそうに)よく聞いてくれた。おいらの夢は、人間になること。徳を積んで、人間になるよ」
ロクパンク「(サトバクを向いて)徳を積んだら、人間になれるのか?」
サトバク「(肩をすくめて)そういう話は、昔からあるけど、実例にはまだ会わないな」
○木々の点在する草原(夜)
カフィン、焚火に串刺し肉を並べつつ、
カフィン「それで、徳を積むって、具体的にどうするんだ?」
スウブル「(手伝いながら)人間にとっての徳だから、モンスターを倒すこと。おいら、モンスターをいっぱい倒すよ」
カフィン「(ロクパンクとサトバクと目を見交わし合い)なかなか頼もしい仲間ができたな」
向こうの、枝の丸くたわめられた木から、虫がポトポト落ちる。
やがてタルニコが、少し顔を赤らめてやって来る。
その時、かすかに漂って来た《虫よけのにおい》が、スウブルの鼻に届く。
スウブル、すっと垂れたよだれを慌ててぬぐい、ぶるぶると頭を振る。
隣に腰かけたタルニコにほほ笑みかけられ、ほほ笑み返す。
見えないように、自分の背中を力いっぱいつねっている。
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