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第十話 悪者成敗
しおりを挟む○カフェテラス
カフィンとスパリグ、コーヒーを飲んでいる。
スパリグ「――そんなに欲張ると、死ぬぞ?」
カフィン「いや、そこまでの熱意でもないんだけどね。ただこう、毎日があまりにも、『毎日があまりにも』だもんでさ」
スパリグ「(くっくっくと笑って)お前、あれだろ。《表》の勇者一行と自分を、重ね合わせてんだろ」
『風上新聞』の記事。
勇者一行の写真(前と同じ)。
その下に「勇者一行、敗北す」とある。
詳細な記事。
勇者一行を倒した魔術師は、装備自体の強さや、譲り受けた魔法などを無効にする能力を持つとのこと。
勇者一行は、ダメージの回復を待ち、それぞれ腰を据えて修行に励む所存とのこと。
カフィン、「馬ッ鹿野郎、お前、」と口ごもり、コーヒーをぐいっとあおって、
カフィン「(急に落ち着き)まあ正直、それもちょっとはあるけどさ。オレ、ホリウドの村に帰りたいんだよ」
スパリグ「……帰りゃいいじゃんか。お前とタルニコだったら、懸賞金クラスが来たってヨユーだろうに」
カフィン、ふるふるとかぶりを振り、
カフィン「モンスターなんか来ないようにして、帰りたいんだ」
スパリグ「(コーヒーに砂糖をドバッと足して)そりゃ無理な相談だ。いったん冒険者になっちまったら。骨髄まで染み込んだ隠しきれない凄み。それが強者の宿命よ」
カフィン「べつに、なりたかなかったんだよ」
スパリグ、肩をすくめる。
○ルーキーたちの墓地
ただ風が吹いているばかり。
○カフェテラス
カフィン「こう、オーラを消す方法とか。吸い寄せ合わなくするアイテムとか。どこかにはあるんじゃねえかって思ってね。この町みたいに結界を張る魔法とか――」
スパリグ「結界は、もともとあんだよ。その上に町を作ったってわけ。だからまあ、せいぜいあと七、八発、デカブツ倒して、その金でホリウドの村ごとどっかの結界の上に移築するって手はあるな」
カフィン「それじゃダメなんだよ。あの場所、あの景色、あの匂い……(遠い目)」
スパリグ、つまらなさそうにタバコをひと吸いして、鼻からフーンと吐くと、表情を明るませ、
スパリグ「じゃあさ、なんぞ方法が見つかるまで、オレサマの切磋琢磨に付き合えよ。オレサマは『《こっち》の勇者一行』になるんだから」
カフィン「また、恥ずかしげもなく言うね」
スパリグ「言うとも。人には言うなよ? ――それで、どうだい。一仕事、乗るか?」
カフィン「そりゃァ、やぶさかじゃないとも」
スパリグ、あたりを見回し、顔を近づけて声を落とす。
カフィンも真剣な表情になって顔を寄せる。
スパリグ「オレサマは、お前にも負けねえと思ってるが、いかんせんランクが低い。もっともっとランクを上げてえ。そのためには実績だ。しかし仕事は、待ってても来ねえ。欲しけりゃ、冒険者じゃダメだ。スパイとか、殺し屋に登録すれば、保安官事務所に行きゃいくらでも紹介してもらえるんだが――」
カフィン「でもそっちのほうは、試験とか、なったあとの心得とか、ガチガチで面倒そうだけどな」
スパリグ「だからよ、いっちょモグリでよ――」
○道(夜)
保安官事務所の前。
カフィンとスパリグ、忍び足でやって来る。
掲示板に指名手配犯の写真がずらり並んでいる。
スパリグ「(一つ一つ選んで行って)こいつなんかどうだ」
カフィン「(示された手配書を読む)なになに。モンスターを飼育・教育しているらしい……悪い人っていうか、ヤバい人だな」
スパリグ、手配書の紙を触り、
スパリグ「だいぶ古い。っていうことは――」
カフィン「誰も相手にしないチンカス野郎か、いまだ負けなしのデカチン野郎か、だな」
スパリグ「行くか?」
カフィン「いいよ。誰か加える?」
スパリグ「いや、かえって少ないほうがいいな」
○《シラサギ亭》の寝室
カフィンの部屋。
テーブルに置手紙。
○荒野(夜)
星空の下、焚火と寝袋。
○沼地の館(曇っていて暗い)
《沼地の館》のテロップ。
門前に、警護するように立ちはだかる、中型のモンスターたち。
鎧兜に、斧だの槍だの。
明らかに訓練された立ち姿。
草陰に潜んでいるカフィンとスパリグ、覗き込み、
カフィン「どうやらデカチンくさいぞ」
スパリグ「まあ、正々堂々やってもヨユーだけど、いちおう奇襲かけとくか」
カフィン「賛成」
向こうに石を投げ、門衛のモンスターたちがそちらを向いた瞬間に飛び出すカフィン。
立て直しきれないモンスターたちをスパンスパンと斬る。
館の中からさらに屈強そうなモンスターたちの影。
スパリグ、両手を前に突き出し、呪文を唱える。
炎や雷、氷や竜巻。
武装したモンスターたちが次々と倒れる。
地響きがして、カフィンとスパリグ、よろめく。
少し離れた所の地面が盛り上がり、懸賞金クラスのデカブツが出て来る。
相変わらず武装している。
スパリグ、天に手をかざして呪文、隕石がデカブツの頭部に直撃。
ぐらついたところを、カフィンが一刀両断。
○沼地の館(晴れていて明るい)
館の中からスパリグが出て来る。
その後ろに、両手を戒められた男。
指名手配の写真と同一人物。
カフィン、あたりの累々たるモンスターの死骸を見ている。
スパリグ「じゃ帰るぞ」
カフィン「ちょっと待ってくれ、こいつら埋めちまうから」胸中(しっかし地面が悪いな……)
スパリグ、こともなげに「ああ、それなら任しとけ」と言うと、戦闘中の炎とは違う、黒々した、とろとろした炎を浴びせて回る。
死骸はみるみる燃えて溶け、カラカラの骨になる。
カフィン「(感心したように)ほえー……ヤキウド怖えーな」
スパリグ「こっちに言わせりゃ、ホリウドも怖えーよ」
デカブツまで骨にしてゆくスパリグの後ろで、両手を戒められた男、憮然としている。
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