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「――できると思う?」
「本気でやったらね。みんなやらないだけで。ひそかにやって、できてる人もいると思う。あたしたちが知らないだけで」
そう言って、歩き出したとたん、もう先ほどからあたりの匂いでわかっていたけれど、果たして雨が降り出した。
わたしたちは、広い田畑に通ずるレンガ造りのトンネルに逃げこんで、雨宿りをした。
だんだん本降りになる。雨雲レーダーではもうやんでいてもいいはずなのに、まったくやみそうもなかった。二人ともちょっと濡れていて、寒かった。
どうにもできないのだろうか。こんなに願っているのに――これほど願っていることが叶わないなんておかしい。人間は住む世界をまちがっている。これがまちがっていないというのなら、人間は、人間としておかしい。
「なにか話して。やさしいお話」
すると乃愛はしばらく考えて、
「あたし、話すことはできない。こ、こここ、こんなんだし。……けっきょく、語り部と書き手はちがうの」
(本文より)
※『』のタイトルは乃愛の小説。
※ステキブンゲイにて、ジャンル別ランキング(青春部門・児童小説部門)最高1位。
※表紙画像:「シェヘラザードは物語を続けた」。ヴァージニア・フランシス・ステレット(1900-1931)著『アラビアンナイト』からの挿絵。ペン出版(1928年)。
(画像引用元:ウィキメディア・コモンズ)
文字数 162,692
最終更新日 2026.08.16
登録日 2026.08.11
「落ち着いて。いいかい、よく聞くんだ」
静かな声でそう言うと、ヘイヤさんは、ミキさんと手をつないで、ゆっくりと楽園を見渡した。
「たしかに、僕たちはみんな、四日目の朝に、きれいさっぱり忘れた。――だけど、本気で思い出そうとすれば、今でも思い出せるはずだよ。ほんとはね」
ぼくは、ヘイヤさんを見つめた。ヘイヤさんは、なんともわからない顔で、続けた。
「みんなは、強い気持ちで――人によっては、弱い気持ちであったとしても――とにかく覚悟を決めて、雀になることを選んだんだ」
ミキさんが、つないだ手を少し振っていた。
「だけど、君はちがう。はずみでやってきたのに過ぎないし、君は自分で、帰るって決めた。だから君は、なにがなんでも思い出さなくてはならない」
(本文より)
※ステキブンゲイにて、ジャンル別ランキング(冒険部門)最高1位。
※表紙画像:渡辺省亭『Sparrows Flying』(1887年頃)
(画像引用元:ウィキメディア・コモンズ)
文字数 29,213
最終更新日 2026.08.11
登録日 2026.08.10
祖母に聞かせてあげるお話を探しに。
里子に贈る鈴花の冒険。
ベランダから異世界と行き来して、話のタネを集める。
翼を生やせるお姉さん
高望みの神さま(少女)
幽霊の紳士
コアラのじじい
カピバラのじじい
新聞係の福耳さん
etc.
ひたすら、旅を日記につけてゆくこと。
※ステキブンゲイにて、ジャンル別ランキング(ファンタジー部門・冒険部門)最高1位。
文字数 99,472
最終更新日 2026.08.07
登録日 2026.08.04
独り川辺に座り、流れを見つめる孤独な少年。
ある日、少年が見つめる先に、水中からパイプのようなものが現れて――。
(※シナリオ形式)
※kindleにて販売中の掌編(「タイプライターのためのインヴェンション」収録)を大幅に脚色しました。
文字数 4,371
最終更新日 2026.08.02
登録日 2026.08.02
「私は飛んでっちゃいたい。もっとラクな世界に」
「どこでも駆けつけるよ。呼ばれなくても遊びに行くよ」
「一緒に来てもいいよ」
けれども、舞は優しくなでながら、
「一緒には、もう行けないよ」
美那子の閉じた目に、涙がにじんだりしたかもしれなかった。しばらく閉じたままでこらえて、それは流れることなく消えたりしたかもしれなかった。
「――……仕方ないね。きっと遊びに来てね」
「うん。絶対に行くね」
(本文より)
※第四十四回すばる文学賞(2020)第1次予選通過(のち改稿)
第5回幻冬舎ルネッサンス新人賞(2024)大賞候補(のち改稿)
※ステキブンゲイにて、ジャンル別ランキング(ヒューマンドラマ部門)最高1位。
文字数 115,779
最終更新日 2025.12.31
登録日 2025.12.29
花やかな冒険に満ちた《表》とは違う、陰気で退屈で荒唐無稽な《こっち》の世界で、不本意に「冒険者」となってしまった少年が、「冒険者」でなくなるための旅に出る。
(※シナリオ形式)
大モグラの少女(ヒロイン)
《表》から来た「冒険者」の幽霊
大いなる開拓者の遠い末裔
《こっち》の頂点を目指すライバル
etc.
語られない冒険
知られざる物語
前日譚あるいは後日譚
最初からスピンオフ
分厚い攻略本と反則級の裏ワザを携えて、サブイベントをしかやらない神々。
冒険をやめるためだけの冒険。
それでも、世界を救わないでもない。
※表紙画像:アントニオ・デル・ポッライオーロ『竜と戦う大天使ミカエル』(1465年頃)
(画像引用元:ウィキメディア・コモンズ)
※ステキブンゲイ・カクヨムにも掲載中。
文字数 67,091
最終更新日 2025.12.29
登録日 2025.12.28
深夜に、男が、灯油の入ったポリタンクを、中谷さん宅の塀の内側に並べて行く。
胸ポケットに、マッチを秘めて。
中谷さん一家が眠りこけているなか、中谷家に住む害虫たちが、曲者の気配に気づく。
(※シナリオ形式)
※kindleにて販売中の自作ショートショート(「タイプライターのためのインヴェンション」収録)を大幅に脚色しました。
※ステキブンゲイ・カクヨムにも掲載中。
文字数 6,233
最終更新日 2025.12.28
登録日 2025.12.28
白崎基一が育てているのは、世にも美しい花を咲かせる、この上もなく醜い木。
いつまで経っても花は咲かない。
幹の穴に虫や蛙を入れると、木はそれを食い、より生き生き育つことを発見する基一。
ある日、基一の友人の娘が、幹の穴に近づいてゆく。
(※シナリオ形式)
※kindleにて販売中の自作ショートショート(「タイプライターのためのインヴェンション」収録)を大幅に脚色しました。
※ステキブンゲイ・カクヨムにも掲載中。
文字数 7,055
最終更新日 2025.12.28
登録日 2025.12.28
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