Untold Quest

尼子猩庵

文字の大きさ
14 / 26

第十四話 休息

しおりを挟む



○草原(昼)

   歩いて行く一行。
   《朝》のテロップ。
   タルニコ、あぐらをかくカフィンにもたれかかって、

タルニコ「――ちょっと、休みたいかな」

   カフィン、タルニコの肩に腕を回して、

カフィン「ああ。休もう」
ロクパンク「(地図を見て)一番近い町は――」
サトバク「(地図を覗き込み、指さして)ガリテンの町には、僕の実家がある」

   《現在》のテロップ。
   向こうに町が見える。
   そこへ、大型のモンスターが襲い掛かって来る。

カフィン「……オレたち、ちょっと、休むんだから」

   カフィン、一刀両断。
   中型のモンスターたちが死骸に群がり、むさぼり食うのを無視して、一行、ガリテンの町へ。
   モンスターが数匹ついて来るが、一行が結界をくぐると、モンスターたちポカンとして、きびすを返す。

○ガリテンの町・外観

   ブルージュ風の大きな町。

○サトバクの実家

   《サトバクの実家》のテロップ。
   外観、古色蒼然たる館。
   中、カーペットの敷かれた階段や、廊下に鎧甲冑、先祖代々の肖像画等々。
   大広間。長いテーブルに着き、カフィンたち、豪華な食事をいただいている。
   上座にサトバクの父親。貫禄のある、強そうなおじさん。
   あんがい砕けた笑顔で、

サトバクの父親「いやァ、甘ったれの倅がこんなに立派なパーティーを連れて来る日が来ようとは……母さんにも見せてやりたかった」

   壁に掛けられた肖像画(サトバクの母親)を見やり、少ししんみりしたあと、豪快にハハハハハと笑い、

サトバクの父親「あらためて、歓迎しますぞ。倅のパーティーの方々。バラエティー豊かな冒険者諸君。私は嬉しい――よくやった!(とサトバクの背中をバン。サトバクは大いにむせる)」

   それからサトバクの父親、イマドキの《こっち》への不平不満。
   周囲に控える召使いの人々も厳しい顔でうなずいている。

サトバクの父親「(こぶしを握り締め、どこだかをにらみつけて)いつまでもこんな時代は続かんぞ。辺境だ?《こっち》だ? 以前はここも《表》だったんだ。ェえ? そうさ。現状は《表》の風下の吹き溜まりに過ぎんが、今に見とれよ。世界の《表裏》がひっくり返る日が必ず来るぞ――……正統と異端のひっくり返る日がな!!」

   サトバクの父親、ますます演説に熱を帯びる。
   執事風の老人、深くうなずく。

サトバクの父親「最強のモンスターがいるのはどこだ?《こっち》さ。最強の冒険者がいるのは?《こっち》だ! それにこの辺境には、まだまだ未知の資源が埋まっている。いずれはホリウドの人々や、大モグラ族の時代も来るだろう。あちこちでコソコソしている占い師どもの勢力が伸びれば、ロクパンク殿のような幽霊の時代も来るであろう――」

   カフィンとロクパンクはふむふむ聞いているが、タルニコはバクバクと食べている。
   どこか異常な食欲。
   もう完全に大モグラに戻った外見。(服も着ていない)
   サトバクの父親や召使いたちは意に介していないふう。
   サトバク、そんなタルニコを心配そうに見やる。

サトバクの父親「まあ、倅にはどしどし手柄を立ててもらいたいところだが、休養は大事じゃ。いくらでも滞在してくだされい」

○ガリテンの町・目抜き通り

   タルニコが独り、歩いてゆく。
   ケガはほぼ治っている。
   足取りは軽やか、表情も明るいけれど、目に光がない。

○サトバクの実家

   カフィンの部屋。
   こんこんとノック、タルニコが入って来る。
   またトリミングをして来たらしく、全身の体毛を剃り上げ、洋服を着ている。
   まだ片方のまぶたは少し腫れが残っているものの、大きな美しい目。
   カフィンのベッドの上に、買って来たものをどさりと置き、ドレスなど取り出しては、その場でもそもそ、慣れない手つきで着替え、くるりと回ってみせたりする。

タルニコ「どう?」
カフィン「ばっちし」
タルニコ「(ふふふふと笑い)みんなにも見せて来よっと。この館の人たち、もうほとんど友だちだかんね」

   出て行く。
   入れ違いに入って来るロクパンクとサトバク。

ロクパンク「――見てられんわ」
カフィン「カラ元気も必要かも」
ロクパンク「(かぶりを振り)この部屋を出た瞬間に、電池切れのようになっとったよ。わしより幽霊みたいだった」
サトバク「(非難するようにカフィンを見て)なんとか、元気づけてやりなよ。カフィン、ちょっと薄情だぞ。ほったらかしじゃないか」
カフィン「オレは、不変であることに徹してるんだよ。そう決めたんだ」
サトバク「でも……」
ロクパンク「わしもカフィンに賛成だが、元気づける役も要るとは思う。お前さんが買ってやったらどうだ。この町にも詳しいんだ、デートにでも連れて行ってやらっしゃい」

   サトバク、カフィンを見る。
   カフィン、コクリとうなずいて、

カフィン「できればそうしてやってくれ。ちょうど今、またべっぴんさんだしさ」
サトバク「(カフィンの軽口に少し眉をひそめ)――わかった」

   サトバク、出て行く。

○廊下

   なにか話しかけるサトバク。
   嬉しそうにぴょんと跳ねるタルニコ。

○町

   デートする二人。
   食事。買い物。サイクリング。ドッグレース。etc.
   サトバクの腕に自分の腕を絡めるタルニコ。
   赤面するサトバクと、無邪気にはしゃぐタルニコ。(目に光なし)

○サトバクの実家(夜)

   カフィンの部屋。
   暗闇の中、一人じっと天井を見つめているカフィン。

○サトバクの実家(朝)

   廊下。サトバクの部屋から、タルニコが出て来る。
   しばし窓から外を見つめ、歩き出そうとしたところ、カフィンが歩いて来る。
   タルニコ、目に光ないまま、ニッコリ笑って、

タルニコ「おはよ」
カフィン「(笑みを返して)おはようさん」

○大広間

   上座にはニコニコしたサトバクの父親。ロクパンクとなにやら話している。
   タルニコ、無心にバクバク食べる。
   サトバク、カフィンの顔色をうかがっている。

○中庭

   カフィンが噴水の金魚を釣ろうとしている。
   そこへサトバクがやって来て、

サトバク「カフィン……」
カフィン「(びくっとして、糸を引き上げ)針はついてないから!」
サトバク「タルニコのことだよ」
カフィン「(また糸を水の中へ垂らして)ああ。――慰めてやってよ」

   サトバク、カフィンの顔をじっと見る。

サトバク「……決闘を申し込まれても仕方ないと、覚悟しているんだけど」
カフィン「絶対ダメ。そういう類は。今のあいつにダメージになりそうなことは全部却下」
サトバク「……しかし、君の気持ちは?」
カフィン「オレの気持ちは…………タルニコのこと、全力で頼むってだけだよ。――つまり、タルニコがまた、オレのとこに来たとしても、今度はサトバクが許してやってね」

   サトバク、背筋を正し、

サトバク「カフィン。君は、彼女がそんなに節操の――」
カフィン「(さえぎるように)なんだ? 実家に帰って来たら、急に騎士感出すじゃんか」

   サトバク、ムッとする。
   カフィン、金魚を釣り上げかけるが、針がないので、金魚は水面から出たところでぴちゃんと水中へ戻る。

カフィン「――……いちおう言っとくけど、オレ、平気じゃねえからな。相手がサトバクじゃなかったら、深い穴掘って、大泣きしてるとこだ。お前のこと好きだから、全力で頼むってんだよ、タコ助」
サトバク「……」

   その時、向こうからタルニコが、鼻歌を歌いつつ、やって来る。
   片手には花かんむり。
   二人に気づくと、嬉しげに手を振る。

タルニコ「(サトバクに)探してたんだ。はいこれ」

   と、なにか渡して、「ちゃんと飲んどいてね」と言うと、カフィンには花かんむりをかぶせ、見かけは陽気に、行ってしまう。

サトバク「(渡された小袋を見て)……?」
カフィン「(小袋をちらっと見て、平然と)抗生物質。あと、念入りに洗うこと」

   と言うと、釣竿をかついで、向こうへ行きかける。
   サトバク、カッとなって、

サトバク「また君は、彼女をまるで動物かなにかのように――」

   カフィン、キッとして振り返るも、サトバクの真剣な顔を見つめるうち、ちょっと沈み込むようになり、

カフィン「……そこんところだけは、きれいごとじゃないから」

○サトバクの実家(朝)

   廊下。サトバクの部屋からタルニコ出て来る。
   しばし窓から外を見つめ、歩き去る。

○カフィンの部屋

   カフィンとロクパンク、チェスを指している。

カフィン「(ふとロクパンクを見て)――ロクパンク、なんだか薄くない?」
ロクパンク「(自分を見て)ああ。宿主(タルニコ)の精神状態がわかりやすくて、よかろう?」
カフィン「――……やっぱり、今のままじゃ、ダメだろうか」
ロクパンク「そうさな。わしも復讐を遂げるまでは、消えるわけにはいかん。ひとつ腰を入れて、解決策を考えようか」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎ 倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。 栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。 「責任、取って?」 噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。 手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。 けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。 看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。 それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...