23 / 26
最終話 また会う日まで
しおりを挟む○泉のほとり
パチミト「――じゃァあとは、各地の人間ゾンビたちを戻してやることと、それから一部の自分勝手な迷惑千万な冒険者どもに、倒したモンスターの死骸はちゃんと処理するよう、徹底的に叩き込むことだね」
サトバク「然るべき職業の創出と、冒険者養成学校の建設が急務だ」
パチミト「あんた、いかにもそういうの向いてそう。由緒ある家系だし」
サトバク「荷が重いよ。《表》の篤志家に任せるさ」
カフィンが『風上新聞』を読んでいる。
その傍でロクパンクと伝書鳩が、パイプを吸っている。
ロクパンク「なにか面白いことはあったか」
カフィン「(手枕して寝転がり、新聞を顔にかぶせて)勇者マグカフ一行が、魔王を倒したよ」
パチミト「(寄って来て)結局あの連中が持ってったか」
カフィン「ああ。世界は平和になりました。パチミト、間に合わなかったね」
パチミト「――……タルニコ、戻って来るかな」
一同、沈黙。
あたりは、泉のきらめき、草花、小鳥、トカゲ、ちょうちょ。
最強の冒険者「(いつの間にかカフィンの隣に寝転がっていて)お疲れさま」
一同、見るけれど、反応は薄い。
最強の冒険者、べつに意に介さず、
最強の冒険者「(カフィンに)賢いやり方をしたね」
カフィン「(新聞で顔を覆ったまま)そうでしょ。勇者になれない切れ者さ。自分で言うのもナンだけど。誰も言ってくれないから」
最強の冒険者、おかしそうに笑う。
カフィン「ちなみに、あんただったら、どうしてた? 今回のような場合」
最強の冒険者「そうだなァ……俺なら、占い師だの隠者だの、行ったり来たりしないで、最強の冒険者に助けを借りたかな。それぐらいの関係性はあったんだし。そしたらもっと一瞬で片付いてたよ」
カフィン「なるほど。その手があったか。――でも、どっちにしろ、そんなことでは、オレは永遠にあんたにはなれないわけでしょ」
最強の冒険者「まあ、それはそうだね。しかし――」
袋をまさぐり、ある物を出す。
虹色の鉱石(?)に根を張った黒い花。
最強の冒険者「俺は君のこと好きだよ。はい、これあげる」
カフィン「(新聞を取って)……?」
最強の冒険者「最強のモンスターの糞に根差した花だ。季節に関係なく、咲き続ける。煮ても焼いても再生し、あと百年ぐらいは咲く。この花からは、ある種のにおいが出ている。俺たちの鼻じゃァわからないけれど、これを置いときゃ、半径数十キロは、いかなるモンスターも寄り付かない。――こういうもので俺は今、静かに子育てをしてるというわけさ」
カフィン「(起き上がり、居住まいを正して)じゃあ、これがあれば、オレはこのままホリウドの村に戻っても」
最強の冒険者「もうモンスターを吸い寄せない」
カフィン、その場で、頭がめり込むほどの土下座をする。
地面にぽたぽたと涙が落ちる。
最強の冒険者、朗笑。
ロクパンクとサトバクとパチミト、ほほ笑んで見ている。
○泉のほとり・別アングル
最強の冒険者はもういない。
足を組んで寝転んでいたパチミト、足を上げ、振り下ろす勢いで座り込み、
パチミト「――さァて。それじゃ私は、《表》に帰るよ。バチクソ腕も磨けたし、無敵のアイテムも多々あるしね。勇者マグカフ一行が暴れ散らした後始末でもしながら、ぼちぼち世界を回ろうかな」
サトバク「僕もお供していいかい」
パチミト「いちいち聞かなくていいの」
カフィンとロクパンク、気を利かせてその場を離れる。
○少し離れた岩場
ロクパンク、カフィンに握手を求める。
カフィン、握手に応じながら、
カフィン「タルニコに会わなくていいの?」
ロクパンク「ああ。お前さんから、よろしく言っておいてくれ」
カフィン「ロクパンク、オレたち、変な縁だったけどさ、」
しかし、ロクパンクはもういない。
カフィン「――……マジで楽しかったよ」
○泉のほとり
カフィンが花かんむりを編んでいる。
なかなか器用なもの。
そこへ、タルニコがやって来る。
カフィン、振り返って、
カフィン「お疲れさん」
タルニコ「うん。ありがと」
カフィン、最強の冒険者にもらった花を見せ、
カフィン「これでようやく、ホリウドの村に帰れる」
タルニコ「どういうこと?」
カフィン、かくかくしかじか。
タルニコ、カフィンに、ぶつかるように抱きつく。
カフィン、強く抱きつかれたまま、タルニコの頭に花かんむりを乗せる。
タルニコ「よかったね」
カフィン「ああ、ほんとによかった」
タルニコ「……」
しばし、抱き合ったままの二人。
やがて、カフィンがそっとタルニコを引きはがす。
タルニコ、涙にぬれた目でカフィンを見つめる。
カフィン、その目を見て、ほほ笑んでうなずき、
カフィン「――そりゃそうだ。もう会えないと思ってた親子の再会だもんな。しばらくいたっていいさ」
タルニコ「……しばらくじゃ、ない」
カフィン、あくまで涼しい顔で、沈黙。
タルニコ、カフィンの腕を取って、優しく引き寄せる。
カフィン、膝をつき、タルニコの胸元に顔がうずもれる格好に。
タルニコ、カフィンの頭を、いい子いい子しながら、
タルニコ「カフィンも、こっちで一緒に暮らさない? あたし、カフィンがどんなにイジメられても、全力で守ってあげるよ」
カフィン、タルニコの胸の中で、ふるふると首を振る。
タルニコ「……そっか。……そうだね」
タルニコ、体を離す。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃのカフィンの顔に、自分の顔をくっつけ、額と額を合わせて、
タルニコ「いつかまた、眠ったまま、ホリウドの村まで行っちゃうかもしれないな。寝相の悪さが、復活してさ――」
カフィン「(ずびずびに泣きぬれたまま)ああ。いつでも来いよ」
タルニコ「その時は、また守ってくれる?」
カフィン「おう。オレが守ってやる。だから、なんの心配もいらねえ」
タルニコ、カフィンにキスをする。
○ホリウドの村(引き)
広大な森の中、少し高台。森を見下ろす山村。
○森の中・大きな木の前
つる草に覆われたお墓。
『冒険者のおっさん』と彫ってある。
カフィン、『冒険者のおっさん』にばってんをし、上に『ロクパンク』と彫る。
パイプを供え、しばらくたたずんだあと、去る。
○ホリウドの村(寄り)
村の入り口の柵に軽くもたれかかって立っているコーチャ。
ふと顔を上げ、笑顔で手を振って、カフィンを迎える。
~終わり~
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎
倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。
栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。
「責任、取って?」
噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。
手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。
けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。
看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。
それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる