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第8話:リハーサル
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スタジオを包む空気は、逃げ場のない熱を孕みながらも、カミソリのような鋭利な冷徹さに支配されていた。
セットの周囲には、休憩を終えた撮影部がすでに配置についていた。
撮影監督の柴田を筆頭に、昨日まで美沙姫と談笑していたスタッフたちが、重厚なカメラを囲むようにスタンバイしている。
しかし、彼らの様子は昨日までとは決定的に違っていた。
誰も美沙姫と目を合わせようとしない。
昨日までなら「美沙姫ちゃん、準備いい?」と明るく声をかけていたはずの彼らが、まるでそこに何も存在しないかのように、黙々と機材の数値を調整し、レンズの奥へと視線を逃がしている。
それが彼らなりの、彼女に対する、精一杯の敬意であり、優しさであることは美沙姫にも分かっていた。
自分を傷つけないよう、見ないふりをしてくれているのだ。
だが、その沈黙と回避された視線が、かえって美沙姫を突き放した。
彼女は、その「気を使われた静寂」の真ん中へと、一人で足を踏み入れていく。
天井に組まれた無数の照明が、セットという名の「檻」の中にいる三人を、逃げ場がないほど鮮明に照らし出した。
「……よし、リハーサルを始める。本番のつもりでいけ」
監督の声が静寂を切り裂いた。
しかし、いざ始まってみると、高木と宮崎の動作はあまりにぎこちなかった。
数十人のスタッフが注視する異様な空気の中、二人の指先は美沙姫の肩や腰に触れる直前で小刻みに震えている。
それはまるで、触れることを禁じられた聖域を前に立ち尽くしているかのようだった。
画面越しでも伝わるその中途半端な距離感が、現場に張り詰めた緊張をよりいっそう際立たせていた。
「……カーーット!!」
監督の怒声が防音壁に跳ね返った。
パイプ椅子を激しく蹴る音が響き渡り、スタッフたちは一斉に下を向く。
スタジオの温度が数度下がったかのような錯覚に陥るほどの殺気が、セットを支配した。
「おい、お前ら。何回同じことをやらせるんだ? 遊んでるのか? 画面から伝わってくるのはお前らの臆病な自意識だけだ!」
監督の怒声が響き、リハーサルが中断される。
セットの真ん中、使い古されたベッドの上で、美沙姫は仰向けに横たわったままだった。
彼女を囲むように、高木と宮崎が左右に。
「……す、すみません、美沙姫さん……。どうしても、その、本物を前にすると……手が、震えちゃって……ヒヒっ」
「申し訳ないです、美沙姫ちゃん。僕たちの不甲斐なさのせいで、何度も……。つい、大切に扱わなきゃって」
至近距離から、二人の脂汗の匂いと、怯えたような、それでいて執着を孕んだ吐息が美沙姫の顔に降りかかる。
男たちは美沙姫を覗き込むようにして、何度も頭を下げた。
彼らが戸惑えば戸惑うほど、現場の殺気は増した。
今の彼女には、彼らを気遣うような精神的な余裕はどこにもなかった。
ただ、この息苦しい沈黙と、監督の罵声を終わらせたかった。
美沙姫は乱れた髪が顔にかかるのも構わず、仰向けのまま、自分を囲む男たちを見上げて、震える声を絞り出した。
「……いいんです。そんなに謝らないでください」
再開されたリハーサルも、やはり空転した。
ついに監督がモニター前から立ち上がり、重い足取りでセット内に踏み込んできた。
「おい、デブ。お前、女の胸を揉んだことないのか?」
肥満体の高木が喉を鳴らし、震えながら答える。
「ふ、風俗の、お姉さん相手にしか……経験、ありませんからぁ……。デュふっ、ヒヒッ…」
「情けねえな。金払わなきゃ触れねえのかよ。女優を待たせるのか、バカ野郎!」
見かねた美沙姫は思わず。
「遠慮なく……やってください。お芝居ですから。私は、大丈夫です……」
犯される格好のまま、自分を蹂躙するはずの男たちに「遠慮なくやってくれ」と懇願する。
その言葉は、自らの魂を切り売りするような響きを持って、無機質なスタジオに虚しく吸い込まれていった。
自らに言い聞かせるように、彼女は何度も小さく頷いた。
だが、強張った頬は引きつり、伏せられた長い睫毛は細かく震えている。
「女優はやる気なんだよ。お前らがしっかりやらないでどうする。遠慮はいらねぇって言ってんだから。ほら、行け!」
監督は吐き捨てると、高木の湿った太い手首を荒々しく掴んだ。
そして、抵抗する間も与えず、その手を美沙姫の柔らかな膨らみへ押し当てた。
「っ……!」
美沙姫は声を漏らさぬよう、瞬時に唇を噛み締めた。
監督は容赦なく、高木の太い指を美沙姫の乳房に食い込ませ、その肉を鷲掴みにさせた。ブラジャーの薄いカップが歪む。
「ヒヒッ、フゥーッ、フゥーッ……!」
高木は、監督に手を押し当てられた瞬間、あまりの弾力と温もりに理性が吹き飛んだような声を漏らした。
湿った吐息を荒く吹きかけながら、指先に伝わる柔らかな感触を確かめるように、喉の奥で下卑た感嘆の音を鳴らし続ける。
そのあまりに生々しい反応に、美沙姫の全身に鳥肌が立った。
「おい、いいか。ただ置いてるだけじゃ揉んでるとは言わねえんだよ」
監督の御子柴が、高木の太い手首を上からがしりと掴み、その指を無理やり動かし始めた。
「こうだ。掌を大きく開いて、左右から肉を中央に寄せるようにグイッと集めるんだ。ブラジャーの上からでも、中の肉の形をしっかり潰すつもりで力を入れろ。……ほら、こうだろ。今度は逆に、外側に向かって円を描くように広げていくんだよ。この弾力を、指の腹で逃さず感じ取れ」
御子柴の誘導によって、高木の指が美沙姫の胸を深く、執拗にこね回す。
重なり合った二つの掌の重みが、仰向けに寝ている美沙姫の胸を容赦なく押し潰し、ブラジャーの中で肉が左右に激しく逃げ惑う。
「あ、あ、あああっ……! ヒヒッ」
高木は、自分の指を通して伝わる信じられないほどの柔らかさに完全に理性を失っていた。
鼻息を荒くして歓喜の声を漏らし、導かれるままに、その未体験の弾力を貪るように味わい尽くす。
美沙姫は目を固く閉じ、込み上げる嫌悪感を飲み込んだ。
男の厚い掌に自分の肉が弄ばれるたび、彼女の指先はズボンの裾を白くなるほど握りしめる。
屈辱に顔を真っ赤に染めたその時、高木の股間が醜く膨らみ、彼女の太ももにぐにゅりと押し付けられた。
生々しい男の硬い感触が、ズボン越しに伝わってくる。
美沙姫は逃げ場のない密着に、呼吸を止めて身体を強張らせた。
自分の脚に押し付けられるその異様な熱に、背筋が凍るような戦慄を覚えながらも、彼女は「これは仕事だ」と心の中で血を流す思いで唱え続けた。
「……っ、……ふ、ぅ……」
「わかったか。この柔らかさを、指の神経全部に叩き込め!」
指導を終えた御子柴が、ようやく手を離した。
高木も監督の合図に従い、吸い付いていた手をゆっくりと離していく。
だがその指先は、名残惜しさを隠しきれず、ブラジャーの布地をなぞるように最後までねっとりと肌を滑らせてから、震える手でようやく宙に浮いた。
しかし、まだ終わらない。
「次、ハゲ。来い」
監督の御子柴が、怯えて立ち尽くす宮崎を呼びつけた。
逃げ腰の彼の腕を乱暴に掴むと、ベッドに横たわる美沙姫のシャツの裾を捲り上げる。
露わになった白い腹部。
御子柴はその隙間に、宮崎の手を無理やりねじ込んだ。
「触れ。この生身の質感を脳に刻み込め」
宮崎の、興奮でびちゃびちゃに汗ばんだ指先が、美沙姫の肌を捉えた。
レッスンで厳しく鍛え上げられた腹部は、薄く筋が浮くほど引き締まっていながら、指を押し返してくるような女性特有の柔らかさを絶妙に残している。
これまで鉄壁のガードに阻まれてきたその聖域に触れた瞬間、宮崎の内にあったのは、純粋な「悦び」だった。
彼はその感触を慈しむように、フェザータッチで執拗に撫で回す。
その指先から伝わる執拗な愛撫と、陶酔しきった熱い吐息は、美沙姫の肌に耐え難いほどの不快感を刻みつけていった。
(ああ……なんて肌だ……。小学生の頃から追ってきた美沙姫ちゃんの肌に、今、俺は直接触れている……!)
「おい、腹を撫でる暴漢がいるか!触るのは胸だよ、胸!」
御子柴が、宮崎の汗ばんだ手首を上から抑え込み、シャツのさらに奥へと誘導した。
美沙姫は恐怖に目を見開いた。ヌチャリとした男の汗の不快な感触が、腹から肋骨へ、そして確実に自分の胸へと這い上がってくる。
(嫌……こないで……お願い……!)
心の中の悲鳴も虚しく、宮崎の湿った手はブラジャーで隠れていない胸の上部の、剥き出しの肌に密着した。
「ヒッ……」
美沙姫の喉が引きつる。
布地というフィルターさえない、ナマの男の肉体の温度。
ねっとりと肌に張り付く汗の不快感。
生理的な嫌悪感が全身を駆け巡り、脳が真っ白に染まっていく。
「ほら、こうだ。指を広げて、胸の付け根から全体を包み込むように揉め」
御子柴の指導に従い、宮崎は震えながらも大胆に手を動かし始めた。
「……どうだ、ハゲ。感触は」
「……ア、アァ……最高です……。柔らかい……こんなおっぱいだったんだね」
宮崎は変態的な陶酔の声を漏らしながら、
無心に揉みしだき続けた。
その時、執拗な指の動きによって、ブラジャーのカップが徐々に押し下げられていった。
宮崎に悪意があったわけではない。
ただ、その執着ゆえの熱量が、偶然にも彼女の防波堤を崩し始めていた。
(……え!?)
美沙姫は、自分の胸の上部が、先ほどよりも広く空気に晒されていくのを感じた。
男の手が動くたび、ブラジャーのレースがじりじりと下にずれ、守られていたはずの場所が暴かれていく。
摩擦で生じる不気味な熱、そして、少しずつ少しずつ「先端」へと近づいていく男の指先の気配。
(嫌……ダメ、もうこれ以上は……!)
その自覚が、さらなる臨場感を持って美沙姫を襲う。
心臓の鼓動が耳元でうるさいほど鳴り響き、全身の毛穴が収縮するような戦慄が彼女を支配した。
そしてついに、揉みしだかれる動きに耐えきれず、ブラジャーが限界を超えてずり落ち、隠されていた先端が、冷たい外気の中へとこぼれ落ちた。
「……っ!」
美沙姫はハッとして目を見開いた。
空気に触れた突起は、羞恥と冷たい外気にさらされ、瞬時に硬く尖った。
それが薄いシャツの布地を内側から押し上げ、隠しようのない一点の隆起として、はっきりとその形を晒し出した。
「見ろ。お前らが本気になれば、女の体はこうなるんだ。恐怖か、興奮か……感じるとこうなるんだよ。わかったか!」
監督の勝ち誇ったような声が響く。
高木と宮崎の二人の視線が、一点に集中した。
シャツに浮き出た彼女の「恥部」。
それを凝視する男たちの剥き出しの欲望を含んだ視線が、触れられるよりも生々しく美沙姫の肌を焼く。
自分の身体が、意志とは無関係に反応している事実を、眼前の男たちに突きつけられる。
美沙姫は、もはや耐えきれず顔を背けた。
首筋から耳の裏まで真っ赤に染まり、激しく上下する胸元。
猛烈な羞恥に、彼女の精神は悲鳴を上げていた。
「……休憩挟んで、本番行きます! 準備!」
助監督の事務的な声が、残酷な幕引きを告げた。
だが、その声が響いても、宮崎の手はすぐには止まらなかった。
「……あ、終わりですか。はい、……はい」
そう口にしながらも、宮崎のシャツの下にある手は、未練を断ち切れない蛇のように、なおも美沙姫の肌を這い回っていた。
抜き去るふりをしながら、その指先はわざと遠回りをし、何かを探し当てるように彼女の左胸の斜面をじりじりと滑り落ちていく。
(……やめて、早く出して……!)
美沙姫は、その指の動きに宿る明確な「悪意」を察知して、息を止めた。
宮崎の汗ばんだ人差し指が、不自然な角度で彼女の乳輪の境界線にたどり着く。
逃げ場のないシャツの闇の中で、男の指の腹が、ふっくらと盛り上がった輪郭を執拗になぞり始めた。
絹のようにきめ細かく、それでいてふわりと瑞々しい弾力を備えたその感触は、男の理性をじわじわと侵食していく。
美沙姫の背筋に、氷を押し当てられたような戦慄が走る。
ヌチャリという湿った音まで聞こえてきそうなほど、男の汗が彼女の肌に染み込んでいく。
そして指先は、その中心にある、羞恥で硬く尖った先端へと狙いを定めた。
「あっ……」
一瞬の沈黙。
宮崎の濡れた指は、慈しむような、それでいて略奪するような仕草で、、ねっとりとひと撫でして通り過ぎた。
布地という遮蔽物すらない、ナマの指先が彼女の最も敏感な場所に触れた瞬間、美沙姫の脳内には真っ赤な閃光が走った。
男の手がようやくシャツから抜かれたとき、宮崎の指先には美沙姫の体温と湿り気が、そして彼女の胸には、男の執着を煮詰めたような脂ぎった感触が、拭い去れない呪いのように深く刻み込まれていた。
美沙姫は弾かれたように、震える手で捲り上げられたシャツを急いで引き下げ、乱れた襟元を整えた。
しかし、隠したところで、先ほど蹂躙されたばかりの先端から、男の指の感触がいつまでも消えることはなかった。
そこへ、再び高木が近寄ってきた。
その目はまだ、美沙姫の胸元への興奮を隠しきれず、濁った光を帯びている。
「あ、あ、あのぉ……美沙姫さん、すみません……。わ、私、あんなことするつもりじゃ……グフッ、監督がああしろって、ね? 強引に手を……」
高木は、己の欲望を監督の命令という隠れ蓑で覆い隠しながら、だらしなく突き出た腹を揺らして擦り寄ってきた。
口角からは粘ついた唾液が微かに漏れ、その濁った瞳は、先ほどまで自分の指が沈み込んでいた彼女の胸元を、記憶を反芻するようにじっと見つめている。
謝罪の言葉を口にしながらも、その声は隠しきれない興奮で上ずり、まるで汚泥のようなねっとりとした響きを帯びていた。
「……大丈夫です。わかっていますから……」
「……本当にごめんね、美沙姫ちゃん。僕たちのせいで監督を怒らせて、君にまで嫌な思いをさせてしまって……。でも、次は失敗しない。僕も本気で、精一杯やらせてもらうから。……本番も、よろしくね」
宮崎は、あくまで「共演者」として、そして「誠実なファン」としての体裁を完璧に保ち、申し訳なさそうに、けれど真っ直ぐに彼女の目を見て言った。
その誠実そうな顔の裏に、自分を蹂躙しようとする「男」の欲望を隠したまま。
「……はい、こちらこそ。よろしくお願いします」
礼儀正しく、誠実であろうとすればするほど、彼女のその真っ直ぐな心が、自らを逃げ場のない底なしの沼へと引きずり込んでいく。
謝罪を受け入れ、暴行を仕事として肯定し、あまつさえ次の凌辱を自ら「よろしくお願いします」と願い出る――。
この、あまりに丁寧で残酷な言葉のやり取りによって、彼女の魂は一歩ずつ、確実に殺されていった。
セットの周囲には、休憩を終えた撮影部がすでに配置についていた。
撮影監督の柴田を筆頭に、昨日まで美沙姫と談笑していたスタッフたちが、重厚なカメラを囲むようにスタンバイしている。
しかし、彼らの様子は昨日までとは決定的に違っていた。
誰も美沙姫と目を合わせようとしない。
昨日までなら「美沙姫ちゃん、準備いい?」と明るく声をかけていたはずの彼らが、まるでそこに何も存在しないかのように、黙々と機材の数値を調整し、レンズの奥へと視線を逃がしている。
それが彼らなりの、彼女に対する、精一杯の敬意であり、優しさであることは美沙姫にも分かっていた。
自分を傷つけないよう、見ないふりをしてくれているのだ。
だが、その沈黙と回避された視線が、かえって美沙姫を突き放した。
彼女は、その「気を使われた静寂」の真ん中へと、一人で足を踏み入れていく。
天井に組まれた無数の照明が、セットという名の「檻」の中にいる三人を、逃げ場がないほど鮮明に照らし出した。
「……よし、リハーサルを始める。本番のつもりでいけ」
監督の声が静寂を切り裂いた。
しかし、いざ始まってみると、高木と宮崎の動作はあまりにぎこちなかった。
数十人のスタッフが注視する異様な空気の中、二人の指先は美沙姫の肩や腰に触れる直前で小刻みに震えている。
それはまるで、触れることを禁じられた聖域を前に立ち尽くしているかのようだった。
画面越しでも伝わるその中途半端な距離感が、現場に張り詰めた緊張をよりいっそう際立たせていた。
「……カーーット!!」
監督の怒声が防音壁に跳ね返った。
パイプ椅子を激しく蹴る音が響き渡り、スタッフたちは一斉に下を向く。
スタジオの温度が数度下がったかのような錯覚に陥るほどの殺気が、セットを支配した。
「おい、お前ら。何回同じことをやらせるんだ? 遊んでるのか? 画面から伝わってくるのはお前らの臆病な自意識だけだ!」
監督の怒声が響き、リハーサルが中断される。
セットの真ん中、使い古されたベッドの上で、美沙姫は仰向けに横たわったままだった。
彼女を囲むように、高木と宮崎が左右に。
「……す、すみません、美沙姫さん……。どうしても、その、本物を前にすると……手が、震えちゃって……ヒヒっ」
「申し訳ないです、美沙姫ちゃん。僕たちの不甲斐なさのせいで、何度も……。つい、大切に扱わなきゃって」
至近距離から、二人の脂汗の匂いと、怯えたような、それでいて執着を孕んだ吐息が美沙姫の顔に降りかかる。
男たちは美沙姫を覗き込むようにして、何度も頭を下げた。
彼らが戸惑えば戸惑うほど、現場の殺気は増した。
今の彼女には、彼らを気遣うような精神的な余裕はどこにもなかった。
ただ、この息苦しい沈黙と、監督の罵声を終わらせたかった。
美沙姫は乱れた髪が顔にかかるのも構わず、仰向けのまま、自分を囲む男たちを見上げて、震える声を絞り出した。
「……いいんです。そんなに謝らないでください」
再開されたリハーサルも、やはり空転した。
ついに監督がモニター前から立ち上がり、重い足取りでセット内に踏み込んできた。
「おい、デブ。お前、女の胸を揉んだことないのか?」
肥満体の高木が喉を鳴らし、震えながら答える。
「ふ、風俗の、お姉さん相手にしか……経験、ありませんからぁ……。デュふっ、ヒヒッ…」
「情けねえな。金払わなきゃ触れねえのかよ。女優を待たせるのか、バカ野郎!」
見かねた美沙姫は思わず。
「遠慮なく……やってください。お芝居ですから。私は、大丈夫です……」
犯される格好のまま、自分を蹂躙するはずの男たちに「遠慮なくやってくれ」と懇願する。
その言葉は、自らの魂を切り売りするような響きを持って、無機質なスタジオに虚しく吸い込まれていった。
自らに言い聞かせるように、彼女は何度も小さく頷いた。
だが、強張った頬は引きつり、伏せられた長い睫毛は細かく震えている。
「女優はやる気なんだよ。お前らがしっかりやらないでどうする。遠慮はいらねぇって言ってんだから。ほら、行け!」
監督は吐き捨てると、高木の湿った太い手首を荒々しく掴んだ。
そして、抵抗する間も与えず、その手を美沙姫の柔らかな膨らみへ押し当てた。
「っ……!」
美沙姫は声を漏らさぬよう、瞬時に唇を噛み締めた。
監督は容赦なく、高木の太い指を美沙姫の乳房に食い込ませ、その肉を鷲掴みにさせた。ブラジャーの薄いカップが歪む。
「ヒヒッ、フゥーッ、フゥーッ……!」
高木は、監督に手を押し当てられた瞬間、あまりの弾力と温もりに理性が吹き飛んだような声を漏らした。
湿った吐息を荒く吹きかけながら、指先に伝わる柔らかな感触を確かめるように、喉の奥で下卑た感嘆の音を鳴らし続ける。
そのあまりに生々しい反応に、美沙姫の全身に鳥肌が立った。
「おい、いいか。ただ置いてるだけじゃ揉んでるとは言わねえんだよ」
監督の御子柴が、高木の太い手首を上からがしりと掴み、その指を無理やり動かし始めた。
「こうだ。掌を大きく開いて、左右から肉を中央に寄せるようにグイッと集めるんだ。ブラジャーの上からでも、中の肉の形をしっかり潰すつもりで力を入れろ。……ほら、こうだろ。今度は逆に、外側に向かって円を描くように広げていくんだよ。この弾力を、指の腹で逃さず感じ取れ」
御子柴の誘導によって、高木の指が美沙姫の胸を深く、執拗にこね回す。
重なり合った二つの掌の重みが、仰向けに寝ている美沙姫の胸を容赦なく押し潰し、ブラジャーの中で肉が左右に激しく逃げ惑う。
「あ、あ、あああっ……! ヒヒッ」
高木は、自分の指を通して伝わる信じられないほどの柔らかさに完全に理性を失っていた。
鼻息を荒くして歓喜の声を漏らし、導かれるままに、その未体験の弾力を貪るように味わい尽くす。
美沙姫は目を固く閉じ、込み上げる嫌悪感を飲み込んだ。
男の厚い掌に自分の肉が弄ばれるたび、彼女の指先はズボンの裾を白くなるほど握りしめる。
屈辱に顔を真っ赤に染めたその時、高木の股間が醜く膨らみ、彼女の太ももにぐにゅりと押し付けられた。
生々しい男の硬い感触が、ズボン越しに伝わってくる。
美沙姫は逃げ場のない密着に、呼吸を止めて身体を強張らせた。
自分の脚に押し付けられるその異様な熱に、背筋が凍るような戦慄を覚えながらも、彼女は「これは仕事だ」と心の中で血を流す思いで唱え続けた。
「……っ、……ふ、ぅ……」
「わかったか。この柔らかさを、指の神経全部に叩き込め!」
指導を終えた御子柴が、ようやく手を離した。
高木も監督の合図に従い、吸い付いていた手をゆっくりと離していく。
だがその指先は、名残惜しさを隠しきれず、ブラジャーの布地をなぞるように最後までねっとりと肌を滑らせてから、震える手でようやく宙に浮いた。
しかし、まだ終わらない。
「次、ハゲ。来い」
監督の御子柴が、怯えて立ち尽くす宮崎を呼びつけた。
逃げ腰の彼の腕を乱暴に掴むと、ベッドに横たわる美沙姫のシャツの裾を捲り上げる。
露わになった白い腹部。
御子柴はその隙間に、宮崎の手を無理やりねじ込んだ。
「触れ。この生身の質感を脳に刻み込め」
宮崎の、興奮でびちゃびちゃに汗ばんだ指先が、美沙姫の肌を捉えた。
レッスンで厳しく鍛え上げられた腹部は、薄く筋が浮くほど引き締まっていながら、指を押し返してくるような女性特有の柔らかさを絶妙に残している。
これまで鉄壁のガードに阻まれてきたその聖域に触れた瞬間、宮崎の内にあったのは、純粋な「悦び」だった。
彼はその感触を慈しむように、フェザータッチで執拗に撫で回す。
その指先から伝わる執拗な愛撫と、陶酔しきった熱い吐息は、美沙姫の肌に耐え難いほどの不快感を刻みつけていった。
(ああ……なんて肌だ……。小学生の頃から追ってきた美沙姫ちゃんの肌に、今、俺は直接触れている……!)
「おい、腹を撫でる暴漢がいるか!触るのは胸だよ、胸!」
御子柴が、宮崎の汗ばんだ手首を上から抑え込み、シャツのさらに奥へと誘導した。
美沙姫は恐怖に目を見開いた。ヌチャリとした男の汗の不快な感触が、腹から肋骨へ、そして確実に自分の胸へと這い上がってくる。
(嫌……こないで……お願い……!)
心の中の悲鳴も虚しく、宮崎の湿った手はブラジャーで隠れていない胸の上部の、剥き出しの肌に密着した。
「ヒッ……」
美沙姫の喉が引きつる。
布地というフィルターさえない、ナマの男の肉体の温度。
ねっとりと肌に張り付く汗の不快感。
生理的な嫌悪感が全身を駆け巡り、脳が真っ白に染まっていく。
「ほら、こうだ。指を広げて、胸の付け根から全体を包み込むように揉め」
御子柴の指導に従い、宮崎は震えながらも大胆に手を動かし始めた。
「……どうだ、ハゲ。感触は」
「……ア、アァ……最高です……。柔らかい……こんなおっぱいだったんだね」
宮崎は変態的な陶酔の声を漏らしながら、
無心に揉みしだき続けた。
その時、執拗な指の動きによって、ブラジャーのカップが徐々に押し下げられていった。
宮崎に悪意があったわけではない。
ただ、その執着ゆえの熱量が、偶然にも彼女の防波堤を崩し始めていた。
(……え!?)
美沙姫は、自分の胸の上部が、先ほどよりも広く空気に晒されていくのを感じた。
男の手が動くたび、ブラジャーのレースがじりじりと下にずれ、守られていたはずの場所が暴かれていく。
摩擦で生じる不気味な熱、そして、少しずつ少しずつ「先端」へと近づいていく男の指先の気配。
(嫌……ダメ、もうこれ以上は……!)
その自覚が、さらなる臨場感を持って美沙姫を襲う。
心臓の鼓動が耳元でうるさいほど鳴り響き、全身の毛穴が収縮するような戦慄が彼女を支配した。
そしてついに、揉みしだかれる動きに耐えきれず、ブラジャーが限界を超えてずり落ち、隠されていた先端が、冷たい外気の中へとこぼれ落ちた。
「……っ!」
美沙姫はハッとして目を見開いた。
空気に触れた突起は、羞恥と冷たい外気にさらされ、瞬時に硬く尖った。
それが薄いシャツの布地を内側から押し上げ、隠しようのない一点の隆起として、はっきりとその形を晒し出した。
「見ろ。お前らが本気になれば、女の体はこうなるんだ。恐怖か、興奮か……感じるとこうなるんだよ。わかったか!」
監督の勝ち誇ったような声が響く。
高木と宮崎の二人の視線が、一点に集中した。
シャツに浮き出た彼女の「恥部」。
それを凝視する男たちの剥き出しの欲望を含んだ視線が、触れられるよりも生々しく美沙姫の肌を焼く。
自分の身体が、意志とは無関係に反応している事実を、眼前の男たちに突きつけられる。
美沙姫は、もはや耐えきれず顔を背けた。
首筋から耳の裏まで真っ赤に染まり、激しく上下する胸元。
猛烈な羞恥に、彼女の精神は悲鳴を上げていた。
「……休憩挟んで、本番行きます! 準備!」
助監督の事務的な声が、残酷な幕引きを告げた。
だが、その声が響いても、宮崎の手はすぐには止まらなかった。
「……あ、終わりですか。はい、……はい」
そう口にしながらも、宮崎のシャツの下にある手は、未練を断ち切れない蛇のように、なおも美沙姫の肌を這い回っていた。
抜き去るふりをしながら、その指先はわざと遠回りをし、何かを探し当てるように彼女の左胸の斜面をじりじりと滑り落ちていく。
(……やめて、早く出して……!)
美沙姫は、その指の動きに宿る明確な「悪意」を察知して、息を止めた。
宮崎の汗ばんだ人差し指が、不自然な角度で彼女の乳輪の境界線にたどり着く。
逃げ場のないシャツの闇の中で、男の指の腹が、ふっくらと盛り上がった輪郭を執拗になぞり始めた。
絹のようにきめ細かく、それでいてふわりと瑞々しい弾力を備えたその感触は、男の理性をじわじわと侵食していく。
美沙姫の背筋に、氷を押し当てられたような戦慄が走る。
ヌチャリという湿った音まで聞こえてきそうなほど、男の汗が彼女の肌に染み込んでいく。
そして指先は、その中心にある、羞恥で硬く尖った先端へと狙いを定めた。
「あっ……」
一瞬の沈黙。
宮崎の濡れた指は、慈しむような、それでいて略奪するような仕草で、、ねっとりとひと撫でして通り過ぎた。
布地という遮蔽物すらない、ナマの指先が彼女の最も敏感な場所に触れた瞬間、美沙姫の脳内には真っ赤な閃光が走った。
男の手がようやくシャツから抜かれたとき、宮崎の指先には美沙姫の体温と湿り気が、そして彼女の胸には、男の執着を煮詰めたような脂ぎった感触が、拭い去れない呪いのように深く刻み込まれていた。
美沙姫は弾かれたように、震える手で捲り上げられたシャツを急いで引き下げ、乱れた襟元を整えた。
しかし、隠したところで、先ほど蹂躙されたばかりの先端から、男の指の感触がいつまでも消えることはなかった。
そこへ、再び高木が近寄ってきた。
その目はまだ、美沙姫の胸元への興奮を隠しきれず、濁った光を帯びている。
「あ、あ、あのぉ……美沙姫さん、すみません……。わ、私、あんなことするつもりじゃ……グフッ、監督がああしろって、ね? 強引に手を……」
高木は、己の欲望を監督の命令という隠れ蓑で覆い隠しながら、だらしなく突き出た腹を揺らして擦り寄ってきた。
口角からは粘ついた唾液が微かに漏れ、その濁った瞳は、先ほどまで自分の指が沈み込んでいた彼女の胸元を、記憶を反芻するようにじっと見つめている。
謝罪の言葉を口にしながらも、その声は隠しきれない興奮で上ずり、まるで汚泥のようなねっとりとした響きを帯びていた。
「……大丈夫です。わかっていますから……」
「……本当にごめんね、美沙姫ちゃん。僕たちのせいで監督を怒らせて、君にまで嫌な思いをさせてしまって……。でも、次は失敗しない。僕も本気で、精一杯やらせてもらうから。……本番も、よろしくね」
宮崎は、あくまで「共演者」として、そして「誠実なファン」としての体裁を完璧に保ち、申し訳なさそうに、けれど真っ直ぐに彼女の目を見て言った。
その誠実そうな顔の裏に、自分を蹂躙しようとする「男」の欲望を隠したまま。
「……はい、こちらこそ。よろしくお願いします」
礼儀正しく、誠実であろうとすればするほど、彼女のその真っ直ぐな心が、自らを逃げ場のない底なしの沼へと引きずり込んでいく。
謝罪を受け入れ、暴行を仕事として肯定し、あまつさえ次の凌辱を自ら「よろしくお願いします」と願い出る――。
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