DTガール!

Kasyta

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がっこうにいこう!

111話「金狼」

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 薄暗い朝もやの中、騎士たちが鎧をカチカチと鳴らしながら忙しそうに駆けまわっている。
 俺たちも朝食と準備を終え、いつでも出発可能だ。
 昨日集まったウーラ隊の大きなテントに入ると、彼女以外の全員が集まっていた。
 俺たちに気付いた魔法騎士の一人が気さくに話しかけてくる。

「やぁ、君たちも準備は出来たようだね。もう少しでウルシュラ様も戻られると思うから、それまで待機していてくれたまえ。」
「分かりました。」

 テントの中には魔法騎士4名に騎士が5名、冒険者が俺達を含め20名。
 ウーラを入れて総勢30名の部隊。
 他の隊は魔法騎士1~2名に騎士が数名、大体20~25名くらいになるよう残りを冒険者で補う編成となっている。
 俺達の隊に魔法騎士が多いのは、砦への突入部隊も兼ねているからだ。

「すみません、皆さま。お待たせしてしまいました。」

 少し遅れてやってきたウーラに、全員の目線が釘付けになる。
 それもその筈、彼女の背には身の丈を軽く超える巨大な剣が聳え立っていたのだ。
 あのジロー先生でさえ、やや引き気味である。

「剣と言うよりも鉄塊、ってヤツですか・・・・・・。」
「以前に作って頂いたのですが、ようやく陽の目を見れそうですわ。」

 若干ウキウキしたご様子の聖女様。

「ま、まぁ・・・・・・これから一狩り行く相手にはちょうど良いんじゃないですか。」
「ふふっ、そうでしょう?」

 ドデカい大剣を背負っている割にウーラの振る舞いは全くその重さを感じさせない。
 あの大剣も鎧と同じく魔鉱石で作られた物のようである。
 何という無駄遣い。

「それでは皆様、そろそろ出発したいと思います。準備は宜しいでしょうか?」

 その場に居た全員が頷き、強行軍が開始された。

*****

 森の中を進む俺たちの周囲からは戦いの音が絶え間なく聞こえてくる。
 部隊は縦長の十字に並べられ、ウーラ隊はそのド真ん中。つまりは一番安全な場所だ。
 とは言っても、森の中を進み出して戦いが始まってからは冒険者達は好き勝手に動き、最早隊列もクソもない。
 しかし、それも作戦の内。
 他の騎士たちは何を言うでもなく、自らは隊列を崩さずに俺たちの周囲を固めている。

 冒険者たちは冒険者たちでキッチリと仕事をこなしており、討ち漏らされたヴォルフが襲ってくる事は殆ど無い。
 休憩を取る時などは、ちゃんと自分たちの隊の場所へ戻っているようだ。

 まぁ、一日で組まれた急造の混成部隊が連携できるなんて誰も思う筈がない。
 だからこそ人数の多い冒険者たちはパーティごとに部隊に振り分けたのだ。
 わざわざバラして組み直すより、慣れたパーティ単位で扱ってしまった方が効率的なのである。

 それに、少し強化されてるとは言え相手は所詮雑魚。
 団結した冒険者たちの前では、数も脅威ではない。
 長引いてしまえば別の話だが、その為の短期決戦だ。

 ただ、面白くないのは道中守られているだけのウーラ隊、つまりは俺たちの隊。
 討ち漏らされたヴォルフも周りを固める騎士たちに迎撃されてしまうため、完全に手持無沙汰なのである。

「ふふっ、逸る気持ちはお察ししますが、しばらく我慢してくださいね。活躍の舞台はご用意しておりますので。」

 その一言で抑えてしまうのは聖女様の人徳が為せる技だろう。
 きっと背中の大剣の所為では無い筈だ。多分。

 そして、足を進めること数時間。
 陽が頂点を過ぎて傾き始めた頃に、砦のある広場へと到着した。

「居やがるな、砦の天辺だ。」

 ジロー先生の言葉に従い、視線を砦の上に向ける。
 陽の光を反射してキラキラと輝く金色の体毛。獲物を射抜くような鋭い目に、全てを噛み砕きそうな顎と鋭い牙。
 その眉間には黒い石が怪しい光を放っている。
 昨夜のジロー先生の言葉通り、身の丈は彼の二倍を軽く超えていそうだ。

 金色のヴォルフが天に向かって吠え、森中に響き渡った。
 すると、砦の中からわんさかとヴォルフが飛び出してくる。
 更には周囲の森から。数えるのも面倒な程だ。
 空から降って来ないだけマシだろう。

「うわぁ・・・・・・すごい数。何匹いるんだろ?」
「ですが、突入する手間は省けたようですね。あとはあの金色の子が降りて来てくれれば良いのですが。」

「あ、あのっ・・・・・・私が魔法で狙ってみましょうか?」

 名乗りを上げたリーフに、ウーラが微笑み返す。

「えぇ、是非お願い致しますわ。」
「は・・・・・・はい!」

 リーフが構え、砦の上にいる金色のヴォルフに向かって無数の氷の矢を放った。
 周囲の騎士たちからも感嘆の声が上がるほどの魔法だったが――

「ガルゥッ!!!」

 金色のヴォルフが呻りと共に豪腕を振るうと、その悉くを打ち砕いたのだ。

「えっ・・・・・・う、嘘ぉっ!?」

 会心の魔法を打ち破られたリーフの顔が驚愕の色に染まる。
 それは周囲の者たちも同じようだ。

「困りましたね。まさかあれ程の魔法を払い除けてしまうなんて・・・・・・。」
「も、申し訳ありません、ウルシュラ様・・・・・・。」

「お気になさってはいけませんわ、リーフ様。相手がこちらの予想を上回っていただけで、貴女様の魔法は大変素晴らしいものでした。・・・・・・こうなれば、直接出向くしかないようです。」

 砦を見上げるウーラの背に声を掛ける。

「あっ、ちょっと待って下さい。・・・・・・フラム、お願いできる?」
「で、でも・・・・・・。」

「大丈夫。半分の半分くらいの力で撃ってくれればいいから。」
「ぅ、うん・・・・・・。」

 それくらいであれば周囲が一瞬サウナになる程度で済むだろう。

「はんぶんの・・・・・・はんぶん・・・・・・。」

 ぼそぼそと口を動かしながらフラムが構えると、周囲の温度が少しずつ上がっていく。
 その変化に戸惑う者たちを余所に、魔法を発動させた。

「・・・・・・≪火弾≫!」

 フラムの掌から放たれた光が真っ直ぐ金狼に向かって伸びる。
 魔法を打ち払う構えを取っていた金狼だが、危険を察知したのかひらりと身を翻し、魔法を避けた。
 光はそのまま砦の壁に突き刺さり、大爆発を起こす。
 その様子に流石のウーラも驚愕を隠せないようだ。

『レーザービームかよ・・・・・・。』

 ただ、その威力に一番驚いたのは当の本人であるが。

「ひぁぅっ・・・・・・! ご、ごめん、なさい・・・・・・ごめんなさい・・・・・・っ!」

 フラムの涙声にハッと我に返り、慌てて聖女スマイルを返すウーラ。

「い、いえ・・・・・・あんなものは修理してしまえば良いのですよ。でも、お手柄です。あの子もようやくやる気になってくれたようですね。」

 立ち込める粉塵を振り払い、今にも飛び掛かろうと牙を剥き出しにした金狼が姿を現す。
 ウーラは背中の大剣の留め金を外し、まるで小枝でも扱うかのように振るい切っ先をヤツに向けた。

「さぁ、私が御相手致しますわ。」

 金狼が砦の壁を一気に駆け下り、重力と自らの脚力を乗せた一撃をウーラに振り下ろした。
 鈍い金属音が響く。

「ウ、ウルシュラ様ぁ!!」

 騎士たちの声が空しく木霊する。
 しかし彼らの心配を余所に、ウーラは金狼の爪を剣で受け止め、平然と二本の足で立っていた。

「はぁっ!!」

 気合いと共に爪を弾き返し、その勢いで身体を一回転させ、よろけた金狼の胴体に遠心力を一杯に乗せた剣の腹をぶち当てた。
 ゴゥン!! という風を暴力的に切り裂く轟音と共にブッ飛んでいく金狼。

 ・・・・・・・・・・・・嘘やろ。

 金狼は「キャウン」という可愛い悲鳴を上げ、ボールのように地面を跳ねながら豪快に転がっていった。
 その先で戦っていた騎士や冒険者、さらにはヴォルフの群れまで巻き込みながら。
 うん・・・・・・今回の戦闘で一番被害が大きいんじゃないかな、あれ。

「おいおい・・・・・・どこが”聖女様”だよ。あれじゃあ俺達の出る幕は無さそうだな。」

 ジロー先生の視線の先に転がる金狼は泡を吹きながらピクピクと痙攣し、もはや虫の息。
 あの様子では満足に動くことすら叶わないだろう。

「それでは、騎士達は砦の確保。他の皆様は掃討戦に移って下さい。」

 何事も無かったかのように指示を飛ばすウーラに、溜め息を漏らしながらジロー先生が応じる。

「へいへい、仕方ねえな。じゃあ、俺は好きにやらせてもらうぜ。」

 各々の冒険者パーティたちは好きなように散開し、これまでの憂さを晴らすように残った魔物を蹂躙していった。
 頭を失い統率の取れなくなった相手など、此処に集まった者たちにとっては最早敵ではない。
 半分以上は文字通り尻尾を巻いて森の奥へと消えて行ったが、今回のように群れる事はもうないだろう。

 陽が紅くなった頃には全ての決着が付いていた。
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