DTガール!

Kasyta

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がっこうにいこう!

120話「私のために争わないで」

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「はぁ・・・・・・一体何をやっているのよ、貴女たちは。」

 話を聞いたリーフは額に手を当てて溜め息を吐いた。
 返す言葉も無い。

 授業を終えた俺たちは、いつも稽古している場所に集まっていた。
 うちのパーティは勿論のこと、二人の見届け人としてアンナ先生にリヴィのパーティメンバーまで。
 フラムとリヴィは距離を取り、お互いを正面から見据え合っている。

「そもそも、アリスはそれで構わないのか?」
「えっと・・・・・・何が?」

「勝った方と結婚するのだろう?」
「ぅ・・・・・・それは・・・・・・。」

「何よ。煮え切らないわね。」
「だ、だっていきなり結婚なんて言われても・・・・・・分かんないよ。」

 学校の勉強ならいざ知らず、結婚どころか恋人さえいなかったのだ。
 強くてニューゲームしたところで育ってないスキルはそのままなのである。
 そんな俺にこの修羅場を乗り切れる妙案が浮かぶ筈もない。

「ふふっ、ごめんなさい。貴女もちゃんと年相応の子供だった訳ね。」

 ・・・・・・凄い複雑なんですけど、その科白。
 そんな話をしている内に二人の準備は整ったようだ。
 勝負内容は近接戦なしで魔法のみ、どちらかが負けを認めるか気絶するまで、といった感じだ。

「フラム、恨みっこは無しです。構いませんわね?」
「ぅ・・・・・・うん。」

「それじゃあ、二人とも準備は良いね? ・・・・・・構えて――」
「・・・・・・待って。」

 開始の合図をしようとしたアンナ先生を二人の間に歩み出たフィーが止めた。

「――っと。どうしたんだい、フィーティア君?」
「・・・・・・その勝負をするなら、二人でわたしに勝ってから。」

 集中を途切れさせられ、少し不機嫌な様子でリヴィがフィーに話しかける。

「失礼ですけれど、貴女はどちら様ですの?」
「・・・・・・アリスはわたしの妹。」

「アリス様のお姉様・・・・・・。承知致しました。お義姉様がそう仰られるのでしたら。」

 フィーが剣を抜くと、リヴィもそれに応えるように腰の剣を抜いた。

「私も剣でお相手させて頂きます。」
「ふむ・・・・・・話はついたようだね。それじゃあ始めるよ。・・・・・・構えて――」

 一瞬時間が止まったように沈黙が走る。

「――始め!!」

 疾風迅雷、電光石火。そんな陳腐な言葉が正に合う。
 先生の合図で弾丸のように飛び出したフィーの剣先は、リヴィの首筋にピタリと吸い付いていた。

「ぇ・・・・・・?」
「・・・・・・まず一人。」

 カラン、と中程から折られたリヴィの剣の刃先が地面に転がった。
 うわぁ・・・・・・あの剣高そうなのに。

 リヴィが侮っていた、という訳ではない。
 そもそも強化魔法全開のフィーに初見で対応しろと言うのは無茶な相談である。

「いやぁ、凄いねぇフィーティア君。さすが噂に聞く小鬼教官。」

 ちなみにヒノカが鬼教官。戦術科の後輩たちから密やかにそう呼ばれているのだ。
 フィーはくるりとリヴィに背を向け、抜き身の剣をぶら下げたままスタスタとフラムに近づく。

「ぅ・・・・・・ぁ、の・・・・・・。」

 フラムの身は竦み、結局そのままフィーが近づく事を許してしまった。

「・・・・・・フラム。」
「ひ、ひゃぃっ・・・・・・!」

「・・・・・・アリスが困ってる。」
「ぁ・・・・・・う・・・・・・ひぐっ・・・・・・ご、ごめんなさいぃ・・・・・・。」

 泣き崩れたフラムの頭をフィーが撫でてから立ち上がらせ、剣を納めてフラムと一緒にこちらへ戻って来た。

「・・・・・・おわりました。」
「うん、そうだね。中々良いものを見せてもらったよ、フィーティア君。」

 お、終わったのか・・・・・・修羅場。

「あ、あの・・・・・・ありがとう、お姉ちゃん。」
「・・・・・・。」

 ジッとフィーがこちらを見つめる。

「な、何・・・・・・?」
「・・・・・・ばかありす。」

「ぅ・・・・・・ご、ごめん。」

 ただ、そう言いながらもフィーは優しく頭を撫でてくれた。
 折られた剣の柄を抱えながら、リヴィも沈んだ表情でこちらへ戻ってくる。

「アリ・・・・・・アリューシャ様。その・・・・・・申し訳、ありません。」
「ど、どうして謝るの?」

「私が娶ると言っておきながら、約束を果たせませんでした・・・・・・。」
「いや、それは気にしなくても・・・・・・き、きっと私にはまだ早いって事だと思うんだ! え、えーっと・・・・・・ほら、背だってリヴィよりずっと低いし!」

「ま、まだ私の事をリヴィと呼んで下さるのですか・・・・・・?」
「え・・・・・・ダ、ダメだった?」

「い、いいえ! そんなことは・・・・・・! けれど、私はアリューシャ様との約束を違え、裏切ってしまったのですよ・・・・・・?」
「う、裏切ったって・・・・・・そんな深刻に考えなくても・・・・・・。えーっと・・・・・・じゃあこうしよう!」

「・・・・・・?」
「私がそれを許す代わりに、一つ私が欲しいものを貰えるかな?」

「な・・・・・・何を差し上げればよろしいのでしょう?」
「リヴィが愛称で呼んでくれる権利。」

「どう、して・・・・・・そんなものを?」
「いや、何かあったらまたすぐ戻っちゃいそうだし。その権利がある限り、私の事はちゃんとアリスって呼んでね。何があっても。」

「ア、アリス様・・・・・・ぐすっ・・・・・・アリス様ぁ・・・・・・。」
「いや、何も泣く程のことじゃ・・・・・・。」

「も、申し訳・・・・・・あ、ありませ・・・・・・んっ・・・・・・で、でも・・・・・・うれし・・・・・・くてっ・・・・・・。」

 困っている俺の肩をポンとアンナ先生が叩いた。

「貴族にとって、愛称で呼び合える仲の人というのは・・・・・・とても得難いものなんだ。特に彼女くらいの家柄ともなるとね。分かってあげてくれたまえ、アリューシャ君。」
「は、はぁ・・・・・・、そういうものなんですね。」

 そういえば、ロールも同じ様に泣いて喜んでたな・・・・・・。
 貴族も大変みたいだ。

「まぁ、色々しがらみというものがね・・・・・・涙を流すのは自分の子供達だと言うのに、全く。」
「あれ・・・・・・でもフラムには初対面でいきなり愛称で呼んで欲しいと言われましたど・・・・・・?」

 凋落云々はともかく、家柄としては同格の筈だ。
 流石にその辺に疎い俺でも、ここまで言われれば簡単に愛称で呼べるような相手ではないというのは分かる。
 ・・・・・・今更だけども。

「そ、それは本当ですの、フラム!?」

 リヴィが驚愕の声を上げる。
 涙も思わず引っ込むくらいの驚きだったらしい。

「ぅ・・・・・・うん。」
「その・・・・・・アリス様が素晴らしい方だというのは分かりますけれど、初対面でというのはあまりにも・・・・・・。どうしてですの?」

「ぁ、あの、ね・・・・・・ウィロウが・・・・・・そ、そうしたら・・・・・・お友達が沢山、できるって・・・・・・。」
「ウィロウ・・・・・・? あの老執事が吹き込んだのですね! なんという不敬を・・・・・・!」

 なるほど・・・・・・あの爺さんの入れ知恵というわけか。
 ただまぁ、フラムにリヴィの様な貴族然とした態度を望むのも酷な話だ。
 ウィロウさんの判断は結果的に正しかったと言えるだろう。

「い・・・・・・良いのリヴィ! ほ、本当に、お・・・・・・お友達、できた、から・・・・・・。」
「そのよう、ですわね・・・・・・。ま、まぁ貴女の家で雇っている執事の問題ですし、私が関知する事ではありません・・・・・・ということにしておきますわ。」

 ホッと胸を撫で下ろすフラム。
 それと同時に周囲の緊張が解れ、ゆるやかな空気が流れる。
 肩の荷が下りた俺にもドッと疲れが出てきた。

「ふむ、とりあえず一件落着のようだな、アリス。」
「何とか、ね。」

「なら、そろそろ稽古を始めるか。」

 ・・・・・・やっぱやるよね、稽古。
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