DTガール!

Kasyta

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がっこうにいこう!

168話「最後方」

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 週末。放課後の教室。気怠い表情で席に着く生徒たち。
 残暑が厳しい中で休日を目前にした呼び出しである。仕方ないと言えば仕方ない。

 ただ、この時期の催しは決まっている。
 生徒たちも集められた理由を何となく察しており、期待半分の表情。

「さて、諸君。来週の頭からは・・・・・・君らの待ちに待った課外授業だ。」

 アンナ先生の放った一言に、一部の生徒がうだるような暑さを吹き飛ばしそうなほど一気に沸き立った。
 リーフがポツリと呟く。

「もうそんな時期なのね・・・・・・。」

 そして、これが最後の課外授業だと考えると感慨深いものがある。

「集まってもらったのは他でもない。明日明後日は休日だし、編成を伝えておこうと思ってね。休みの間にゆっくり準備してくれたまえ。」

 教室が静まるのを待ち、先生が言葉を続ける。

「では、名前を呼んでいくよ。まず――」

 手元のカンペに視線を落とし、パーティの代表者を一人ずつ読み上げるように呼んでいく先生。
 戦闘能力の高いパーティから呼んでいるようだ。おそらく最前線を張るメンバーだろう。
 当然、俺たちのパーティもその中に入っている。

「――以上、君たちには最後方で支援に当たってもらうよ。」

 最”後方”・・・・・・? 聞き間違いか?
 呼ばれた生徒たちからも「おいおい、間違ってんぜセンセー!」などと野次が飛んでいる。

「間違えてはいないよ。君たちは最後方だ。」

 再度告げるアンナ先生。
 聞き間違いでも、言い間違いでもないようだ。
 茶化すようだった野次も、強い不満の声に変わっていく。

「静まりたまえ、君たち。」

 先生の静謐だが迫力ある声に、不満の声を上げていた生徒たちが押し黙った。
 ため息を一つ吐き、口調を戻して話を続ける。

「別に君たちが弱いからと後方に下げる訳じゃない。その逆だよ。」
「えっと・・・・・・どういう事ですか、アンナ先生?」

 不満気な生徒たちを代表し、俺が手を上げて先生に問いかける。
 他の奴らに任せてたら話が進みそうにないからな・・・・・・。

「あくまでも授業という事さ。君らが活躍しすぎると、実力を計れない者が出てくるのだよ。言ってしまえば、いま名前を呼んだ者たちは既に認められた実力者という訳だ。」

 先生の言葉に「まぁ、そういう事なら・・・・・・。」と、溜飲が下がる生徒たち。
 ああ言われては声を荒げることも出来ないだろう。

「ただ、調査は済ませているけれど・・・・・・去年のように何があるか分からないからね。その時は君たちに頼らせてもらうよ。」

 要するに「おもりをしろ」と言うことである。
 まぁ、同級生が命を落としたとなれば、あまり気分が良いものではないしな。
 不満気だった生徒たちも「そこまで言われりゃ仕方ねえな」と息巻いている。単純な奴らだ。

 しかし、名前を呼ばれなかった生徒たちは等しく顔面蒼白。
 そりゃあそうだろう。当てにしていた戦力をゴッソリと失うことになったのだ。
 彼らの影に隠れていればハイ終わり、という話ではなくなったのである。

 そして、今度こそ前線のメンバーが呼ばれていく。無慈悲に。
 騎士科や剣術科の生徒も勿論混じってはいるが、実戦経験が少ない者ばかり。
 先に呼ばれた生徒たちに比べれば戦力差は天と地ほどある。
 本来なら去年の課外授業で経験を積むはずだった、という点を考慮すれば可哀想だが。
 しかも去年の事件は人災だしな・・・・・・。いや、魔女災が正しいか?

 とにかく学院側は二年分をスパルタでやるつもりらしい。
 流石に死人が出るような真似はしない・・・・・・と思いたい。

「――以上が前線組。呼ばれていないパーティは後衛組だからね。そのつもりで準備するように。」

 残っていたパーティの戦力が高い半分を前衛。低いパーティを後衛とざっくり分けたようだ。
 後衛に回されたパーティは安堵の表情を浮かべつつも、青い顔色は変わらない。
 頼りない前衛が瓦解すれば・・・・・・次の餌食は後衛だからな。

 微妙な空気の中、集まりは解散となった。
 実力者たちは気負う様子もなく、談笑しながら教室を後にする。
 残った者たちは・・・・・・まるでお通夜だ。
 中には「やっと自分の実力を見せる時が来た」などと気炎を吐く者もいるが、そんな彼らの実力はお察しである。

「私たちも帰ろうか。晩御飯の用意もしないといけないし。」
「えぇ、そうしましょう。課外授業の準備は前日にいつもどおりで良さそうね。」

 席から重い腰を上げると、背後から声がかかる。

「ア、アリスちゃ~ん・・・・・・。」

 振り返ると、半べそのロールとそのパーティの子たちが立っていた。

「ど・・・・・・どうしたの、ロール?」
「わ、私たち・・・・・・どうすればいいの?」

 彼女らのパーティは呼ばれていなかったはずなので後衛組か。
 そこまで身構える必要は無いと思うが・・・・・・。授業だからと突き放すのも可哀想だ。
 少し助言するくらいなら問題ないだろう。

「よし、じゃあ皆でご飯でも食べながら相談しようか。」
「い・・・・・・良いの?」

「私たちの方は大丈夫だよ。ね、皆?」
「あぁ、構わないぞ。」

 頷くヒノカたち。聞くまでもなかったかな。

「そっちは何も予定とかは無い?」
「う、うん・・・・・・私たちも大丈夫、だよね?」

 ロールのパーティの一人、カレンが答える。

「今日の予定は無いのじゃ。」
「なら問題無いね。それで、ご飯だけど――」

「――食事のことでしたら、ワタクシ達にお任せ頂けませんかしら?」

 マリーが俺の言葉を遮る。
 申し出は有り難いのだが・・・・・・。

「い、いや、そんな気にしなくても――」
「――いいえ、そういう訳にはいきませんの! 私たちのせめてものお礼ですの!」

 今度はキーリが俺の言葉に割り込んできた。

「そうだよ、アリスちゃん! 私たちに任せて!」
「わ・・・・・・わかったよ、ご飯の事はお願いするから。こっちの要望を聞いてくれる?」

「勿論だよ! アリスちゃん達は何を食べたいの?」
「何を・・・・・・って訳じゃないけど・・・・・・制服で行けて、安くて量が多いところをお願い。」

 とりあえずドレスコード無しに指定しておけば、貴族御用達の超高級店みたいな場所には連れて行かれないだろう。
 量は・・・・・・少ないと文句を言うのがウチに居るからな。

「うん、分かった! たくさん食べられたら良いんだよね!」
「・・・・・・安いところで良いからね?」

「何を言う。妾の大切な友人たちに粗末なものを口にさせる訳にはゆかぬのじゃ!」
「そうですの! 最高のお店を用意するですの!」

 不安しかなかった。
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