199 / 453
がっこうにいこう!
168話「最後方」
しおりを挟む
週末。放課後の教室。気怠い表情で席に着く生徒たち。
残暑が厳しい中で休日を目前にした呼び出しである。仕方ないと言えば仕方ない。
ただ、この時期の催しは決まっている。
生徒たちも集められた理由を何となく察しており、期待半分の表情。
「さて、諸君。来週の頭からは・・・・・・君らの待ちに待った課外授業だ。」
アンナ先生の放った一言に、一部の生徒がうだるような暑さを吹き飛ばしそうなほど一気に沸き立った。
リーフがポツリと呟く。
「もうそんな時期なのね・・・・・・。」
そして、これが最後の課外授業だと考えると感慨深いものがある。
「集まってもらったのは他でもない。明日明後日は休日だし、編成を伝えておこうと思ってね。休みの間にゆっくり準備してくれたまえ。」
教室が静まるのを待ち、先生が言葉を続ける。
「では、名前を呼んでいくよ。まず――」
手元のカンペに視線を落とし、パーティの代表者を一人ずつ読み上げるように呼んでいく先生。
戦闘能力の高いパーティから呼んでいるようだ。おそらく最前線を張るメンバーだろう。
当然、俺たちのパーティもその中に入っている。
「――以上、君たちには最後方で支援に当たってもらうよ。」
最”後方”・・・・・・? 聞き間違いか?
呼ばれた生徒たちからも「おいおい、間違ってんぜセンセー!」などと野次が飛んでいる。
「間違えてはいないよ。君たちは最後方だ。」
再度告げるアンナ先生。
聞き間違いでも、言い間違いでもないようだ。
茶化すようだった野次も、強い不満の声に変わっていく。
「静まりたまえ、君たち。」
先生の静謐だが迫力ある声に、不満の声を上げていた生徒たちが押し黙った。
ため息を一つ吐き、口調を戻して話を続ける。
「別に君たちが弱いからと後方に下げる訳じゃない。その逆だよ。」
「えっと・・・・・・どういう事ですか、アンナ先生?」
不満気な生徒たちを代表し、俺が手を上げて先生に問いかける。
他の奴らに任せてたら話が進みそうにないからな・・・・・・。
「あくまでも授業という事さ。君らが活躍しすぎると、実力を計れない者が出てくるのだよ。言ってしまえば、いま名前を呼んだ者たちは既に認められた実力者という訳だ。」
先生の言葉に「まぁ、そういう事なら・・・・・・。」と、溜飲が下がる生徒たち。
ああ言われては声を荒げることも出来ないだろう。
「ただ、調査は済ませているけれど・・・・・・去年のように何があるか分からないからね。その時は君たちに頼らせてもらうよ。」
要するに「おもりをしろ」と言うことである。
まぁ、同級生が命を落としたとなれば、あまり気分が良いものではないしな。
不満気だった生徒たちも「そこまで言われりゃ仕方ねえな」と息巻いている。単純な奴らだ。
しかし、名前を呼ばれなかった生徒たちは等しく顔面蒼白。
そりゃあそうだろう。当てにしていた戦力をゴッソリと失うことになったのだ。
彼らの影に隠れていればハイ終わり、という話ではなくなったのである。
そして、今度こそ前線のメンバーが呼ばれていく。無慈悲に。
騎士科や剣術科の生徒も勿論混じってはいるが、実戦経験が少ない者ばかり。
先に呼ばれた生徒たちに比べれば戦力差は天と地ほどある。
本来なら去年の課外授業で経験を積むはずだった、という点を考慮すれば可哀想だが。
しかも去年の事件は人災だしな・・・・・・。いや、魔女災が正しいか?
とにかく学院側は二年分をスパルタでやるつもりらしい。
流石に死人が出るような真似はしない・・・・・・と思いたい。
「――以上が前線組。呼ばれていないパーティは後衛組だからね。そのつもりで準備するように。」
残っていたパーティの戦力が高い半分を前衛。低いパーティを後衛とざっくり分けたようだ。
後衛に回されたパーティは安堵の表情を浮かべつつも、青い顔色は変わらない。
頼りない前衛が瓦解すれば・・・・・・次の餌食は後衛だからな。
微妙な空気の中、集まりは解散となった。
実力者たちは気負う様子もなく、談笑しながら教室を後にする。
残った者たちは・・・・・・まるでお通夜だ。
中には「やっと自分の実力を見せる時が来た」などと気炎を吐く者もいるが、そんな彼らの実力はお察しである。
「私たちも帰ろうか。晩御飯の用意もしないといけないし。」
「えぇ、そうしましょう。課外授業の準備は前日にいつもどおりで良さそうね。」
席から重い腰を上げると、背後から声がかかる。
「ア、アリスちゃ~ん・・・・・・。」
振り返ると、半べそのロールとそのパーティの子たちが立っていた。
「ど・・・・・・どうしたの、ロール?」
「わ、私たち・・・・・・どうすればいいの?」
彼女らのパーティは呼ばれていなかったはずなので後衛組か。
そこまで身構える必要は無いと思うが・・・・・・。授業だからと突き放すのも可哀想だ。
少し助言するくらいなら問題ないだろう。
「よし、じゃあ皆でご飯でも食べながら相談しようか。」
「い・・・・・・良いの?」
「私たちの方は大丈夫だよ。ね、皆?」
「あぁ、構わないぞ。」
頷くヒノカたち。聞くまでもなかったかな。
「そっちは何も予定とかは無い?」
「う、うん・・・・・・私たちも大丈夫、だよね?」
ロールのパーティの一人、カレンが答える。
「今日の予定は無いのじゃ。」
「なら問題無いね。それで、ご飯だけど――」
「――食事のことでしたら、ワタクシ達にお任せ頂けませんかしら?」
マリーが俺の言葉を遮る。
申し出は有り難いのだが・・・・・・。
「い、いや、そんな気にしなくても――」
「――いいえ、そういう訳にはいきませんの! 私たちのせめてものお礼ですの!」
今度はキーリが俺の言葉に割り込んできた。
「そうだよ、アリスちゃん! 私たちに任せて!」
「わ・・・・・・わかったよ、ご飯の事はお願いするから。こっちの要望を聞いてくれる?」
「勿論だよ! アリスちゃん達は何を食べたいの?」
「何を・・・・・・って訳じゃないけど・・・・・・制服で行けて、安くて量が多いところをお願い。」
とりあえずドレスコード無しに指定しておけば、貴族御用達の超高級店みたいな場所には連れて行かれないだろう。
量は・・・・・・少ないと文句を言うのがウチに居るからな。
「うん、分かった! たくさん食べられたら良いんだよね!」
「・・・・・・安いところで良いからね?」
「何を言う。妾の大切な友人たちに粗末なものを口にさせる訳にはゆかぬのじゃ!」
「そうですの! 最高のお店を用意するですの!」
不安しかなかった。
残暑が厳しい中で休日を目前にした呼び出しである。仕方ないと言えば仕方ない。
ただ、この時期の催しは決まっている。
生徒たちも集められた理由を何となく察しており、期待半分の表情。
「さて、諸君。来週の頭からは・・・・・・君らの待ちに待った課外授業だ。」
アンナ先生の放った一言に、一部の生徒がうだるような暑さを吹き飛ばしそうなほど一気に沸き立った。
リーフがポツリと呟く。
「もうそんな時期なのね・・・・・・。」
そして、これが最後の課外授業だと考えると感慨深いものがある。
「集まってもらったのは他でもない。明日明後日は休日だし、編成を伝えておこうと思ってね。休みの間にゆっくり準備してくれたまえ。」
教室が静まるのを待ち、先生が言葉を続ける。
「では、名前を呼んでいくよ。まず――」
手元のカンペに視線を落とし、パーティの代表者を一人ずつ読み上げるように呼んでいく先生。
戦闘能力の高いパーティから呼んでいるようだ。おそらく最前線を張るメンバーだろう。
当然、俺たちのパーティもその中に入っている。
「――以上、君たちには最後方で支援に当たってもらうよ。」
最”後方”・・・・・・? 聞き間違いか?
呼ばれた生徒たちからも「おいおい、間違ってんぜセンセー!」などと野次が飛んでいる。
「間違えてはいないよ。君たちは最後方だ。」
再度告げるアンナ先生。
聞き間違いでも、言い間違いでもないようだ。
茶化すようだった野次も、強い不満の声に変わっていく。
「静まりたまえ、君たち。」
先生の静謐だが迫力ある声に、不満の声を上げていた生徒たちが押し黙った。
ため息を一つ吐き、口調を戻して話を続ける。
「別に君たちが弱いからと後方に下げる訳じゃない。その逆だよ。」
「えっと・・・・・・どういう事ですか、アンナ先生?」
不満気な生徒たちを代表し、俺が手を上げて先生に問いかける。
他の奴らに任せてたら話が進みそうにないからな・・・・・・。
「あくまでも授業という事さ。君らが活躍しすぎると、実力を計れない者が出てくるのだよ。言ってしまえば、いま名前を呼んだ者たちは既に認められた実力者という訳だ。」
先生の言葉に「まぁ、そういう事なら・・・・・・。」と、溜飲が下がる生徒たち。
ああ言われては声を荒げることも出来ないだろう。
「ただ、調査は済ませているけれど・・・・・・去年のように何があるか分からないからね。その時は君たちに頼らせてもらうよ。」
要するに「おもりをしろ」と言うことである。
まぁ、同級生が命を落としたとなれば、あまり気分が良いものではないしな。
不満気だった生徒たちも「そこまで言われりゃ仕方ねえな」と息巻いている。単純な奴らだ。
しかし、名前を呼ばれなかった生徒たちは等しく顔面蒼白。
そりゃあそうだろう。当てにしていた戦力をゴッソリと失うことになったのだ。
彼らの影に隠れていればハイ終わり、という話ではなくなったのである。
そして、今度こそ前線のメンバーが呼ばれていく。無慈悲に。
騎士科や剣術科の生徒も勿論混じってはいるが、実戦経験が少ない者ばかり。
先に呼ばれた生徒たちに比べれば戦力差は天と地ほどある。
本来なら去年の課外授業で経験を積むはずだった、という点を考慮すれば可哀想だが。
しかも去年の事件は人災だしな・・・・・・。いや、魔女災が正しいか?
とにかく学院側は二年分をスパルタでやるつもりらしい。
流石に死人が出るような真似はしない・・・・・・と思いたい。
「――以上が前線組。呼ばれていないパーティは後衛組だからね。そのつもりで準備するように。」
残っていたパーティの戦力が高い半分を前衛。低いパーティを後衛とざっくり分けたようだ。
後衛に回されたパーティは安堵の表情を浮かべつつも、青い顔色は変わらない。
頼りない前衛が瓦解すれば・・・・・・次の餌食は後衛だからな。
微妙な空気の中、集まりは解散となった。
実力者たちは気負う様子もなく、談笑しながら教室を後にする。
残った者たちは・・・・・・まるでお通夜だ。
中には「やっと自分の実力を見せる時が来た」などと気炎を吐く者もいるが、そんな彼らの実力はお察しである。
「私たちも帰ろうか。晩御飯の用意もしないといけないし。」
「えぇ、そうしましょう。課外授業の準備は前日にいつもどおりで良さそうね。」
席から重い腰を上げると、背後から声がかかる。
「ア、アリスちゃ~ん・・・・・・。」
振り返ると、半べそのロールとそのパーティの子たちが立っていた。
「ど・・・・・・どうしたの、ロール?」
「わ、私たち・・・・・・どうすればいいの?」
彼女らのパーティは呼ばれていなかったはずなので後衛組か。
そこまで身構える必要は無いと思うが・・・・・・。授業だからと突き放すのも可哀想だ。
少し助言するくらいなら問題ないだろう。
「よし、じゃあ皆でご飯でも食べながら相談しようか。」
「い・・・・・・良いの?」
「私たちの方は大丈夫だよ。ね、皆?」
「あぁ、構わないぞ。」
頷くヒノカたち。聞くまでもなかったかな。
「そっちは何も予定とかは無い?」
「う、うん・・・・・・私たちも大丈夫、だよね?」
ロールのパーティの一人、カレンが答える。
「今日の予定は無いのじゃ。」
「なら問題無いね。それで、ご飯だけど――」
「――食事のことでしたら、ワタクシ達にお任せ頂けませんかしら?」
マリーが俺の言葉を遮る。
申し出は有り難いのだが・・・・・・。
「い、いや、そんな気にしなくても――」
「――いいえ、そういう訳にはいきませんの! 私たちのせめてものお礼ですの!」
今度はキーリが俺の言葉に割り込んできた。
「そうだよ、アリスちゃん! 私たちに任せて!」
「わ・・・・・・わかったよ、ご飯の事はお願いするから。こっちの要望を聞いてくれる?」
「勿論だよ! アリスちゃん達は何を食べたいの?」
「何を・・・・・・って訳じゃないけど・・・・・・制服で行けて、安くて量が多いところをお願い。」
とりあえずドレスコード無しに指定しておけば、貴族御用達の超高級店みたいな場所には連れて行かれないだろう。
量は・・・・・・少ないと文句を言うのがウチに居るからな。
「うん、分かった! たくさん食べられたら良いんだよね!」
「・・・・・・安いところで良いからね?」
「何を言う。妾の大切な友人たちに粗末なものを口にさせる訳にはゆかぬのじゃ!」
「そうですの! 最高のお店を用意するですの!」
不安しかなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
心が折れた日に神の声を聞く
木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。
どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。
何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。
絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。
没ネタ供養、第二弾の短編です。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる