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がっこうにいこう!
234話「お姉ちゃんには従順に」
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衣装を決め終えて、お茶菓子が空になったところでお茶会はお開きとなった。
その後はババ様に追い出されるように屋敷を後にして家路についている。彼女なりに気遣ってくれたのだろう。
フラムはババ様の屋敷に残ることになった。彼女の実家には殆ど滞在しなかったため、家族と取れる時間も短かったしな。
「ただいまー。」
家に辿り着き扉を開けると、出かけた時より人口密度が上がっていた。
ニーナとヒノカ、そして――
「お久しぶりね、アリス。貴方も随分立派になりましたね。」
「ありがとうございます。ルーナさんもお元気そうで何よりです。」
「あら、私が歳だと言いたいのかしら?」
「い、いえ、滅相もありません!」
「フフ・・・・・・まぁおめでたい席ですから、これ以上からかうのは勘弁してあげましょう。結婚おめでとう、アリス。」
か、変わってないなこの人も。
「あ、ありがとうございます。」
「学院に行くと言い出した時も驚いたけれど、もっと驚くことになるとは思わなかったわ。まさか結婚して戻ってくるなんてね。それも貴族と。」
「あはは・・・・・・。でも何というか、私にとっても意外過ぎて未だに実感が無いです・・・・・・。」
書類みたいなのを書かされた程度だったからなぁ。
その時に結婚式は時間が掛かりそうだから断ったはずなんだけど、まさか先回りして準備万端で待ち構えてるとは夢にも思わなかった。もう明日にでも始められるらしい。というか明日やると張り切っていた。
エルクたちがまだ帰って来ていないのだが、帰って来てから二回目をやれば良いだろうという結論に達したようだ。口を挟むとなんか怒られそうだったので、俺は黙って従うことにした。フラムも楽しみにしてるみたいだし、これは不可抗力だろう。
「お母さんもアリスが貴族になったなんて実感が湧かないわ・・・・・・。」
「あ・・・・・・そういやそうだった。」
気を抜いたら自分が貴族になったことさえ頭から抜け落ちてしまう。
平民根性が根っこまで沁みついてるのだ。
「ハァ・・・・・・何を言っているのですか、アリス。しっかりなさい。そんな様では相手の子に見限られてしまいますよ。」
「ぅ・・・・・・ハイ。」
「全く、性根から叩き直す必要がありそうですね?」
「だ、大丈夫です!!」
直立不動で敬礼する。
これから扱かれるなんて冗談じゃない。
「まぁ、今日は軽く挨拶に来ただけですから、それで良しとしましょう。明日の花嫁を連れまわす訳にもいきませんからね。ニーナ、帰りますよ。」
「うん! ・・・・・・ヒノカ姉は?」
「いや、私は・・・・・・。」
ヒノカが遠慮がちにルーナの方へ視線を向ける。
相手がルーナさんとニーナなんだし、そこまで気を遣う必要も無いと思うが。
「夕食前に軽く運動をしたいのですけれど、ニーナでは力不足でしょうから貴方にもお願いするわ、ヒノカ。」
「・・・・・・はい! 喜んでお受けいたします。」
なんとか矛先は逸れたか。
と、胸を撫でおろしているとくるりと振り返ったルーナさんと目が合う。
「学院での生活で貴方たちの腕が鈍っていないか、きちんと確かめる必要がありそうですね。」
結局そうなるのかよ・・・・・・。
*****
「サーニャちゃん、私の料理はお口に合うかしら?」
「ンまいにゃ!」
ルーナさんたちと別れた後、俺たちは家で夕食をとっている。何年ぶりだろうか、母の手料理ってのは。フィーも嬉しそうに料理を頬張っている。
小さな食卓を囲んでいるのはフィーとリーフ、サーニャと俺、そしてサレニア。
エルクは出かけていて正解だったかもしれないな。周りが女の子だらけでは彼も肩身が狭いだろう。
「それにしても、結婚式を二回するだなんて聞いたことがないわ。まぁでも、貴女たちらしいと言えば貴女たちらしいのかしらね・・・・・・。」
屋敷での話を聞いていたリーフが食事の手を止めて、呆れたように溜め息を吐いた。
その様子を見ていたサレニアが小さく笑う。
「ふふ・・・・・・あのフラムって子、すごく大人しそうに見えるけど結構ワガママさんなのね。」
「普段は見た目通り大人しい子なのですけど、アリスの事となると見境が無くなるというか・・・・・・。」
「随分愛されているのねぇ。」
「えぇ、それはもう。」
リーフとの話が弾んでいたサレニアが、何かを思い出したように「あっ」と声を上げる。
「そういえばあの子はどうしているの? ミアちゃん、だったかしら? あの子もアリスのことが好きだって、ずっと言っていたわね。」
「レンシアの街で元気にしてるよ。」
「あら、連れて来てあげなかったの?」
「まぁ、一応学院の卒業旅行だし・・・・・・埋め合わせはちゃんとするよ。」
「そうしてあげなさい。きっと寂しがってるわよ、あの子。」
「うん・・・・・・。」
とんでもない事をせがまれそうだなぁ・・・・・・。
他にも学院での話や迷宮の話、バカンスの話。喋るネタは尽きない。
気付けば夜もすっかり更けてしまっていた。
リーフとサーニャは拡張した方の寝室へ、俺とフィーは自宅の寝室を使うことになった。
しかしベッドが固いな・・・・・・。俺もすっかり贅沢を覚えてしまったらしい。
「ねぇ、フィー、アリス。今日はお母さんと一緒に寝ようか。」
「・・・・・・うん!」「え、急にどうしたの・・・・・・?」
「あら、アリスは嫌?」
少し寂しそうな表情を見せるサレニア。
「ううん、お母さんがいきなりそんなこと言うから驚いただけだよ。」
「せっかく久しぶりに子供たちに会えたんだもの。少しくらい良いじゃない。」
ぎゅっと苦しいくらいに抱きしめられる。
断ったところで無理矢理ベッドに引きずり込まれそうな感じだ。
「わ、分かったよ・・・・・・。でも、三人で寝たら寝台から落ちちゃいそうだよ?」
「あら、ホントね。二人とも大きくなっちゃったわねぇ。」
「だから、私はいいからお姉ちゃんと一緒に寝なよ。」
「・・・・・・だめ。」
離れようとした腕をフィーに掴まれる。
「でも・・・・・・。」
「・・・・・・新しいの作ったらいい。」
「新しい寝台を作っても置き場所が無いよ。」
「・・・・・・お父さんのを別の部屋に持っていって後は詰めればいい。」
「分かりました・・・・・・。」
親父ィ・・・・・・。
すまねぇ、これ以上お姉ちゃんに楯突いたら俺が怒られるんだ。
その後はババ様に追い出されるように屋敷を後にして家路についている。彼女なりに気遣ってくれたのだろう。
フラムはババ様の屋敷に残ることになった。彼女の実家には殆ど滞在しなかったため、家族と取れる時間も短かったしな。
「ただいまー。」
家に辿り着き扉を開けると、出かけた時より人口密度が上がっていた。
ニーナとヒノカ、そして――
「お久しぶりね、アリス。貴方も随分立派になりましたね。」
「ありがとうございます。ルーナさんもお元気そうで何よりです。」
「あら、私が歳だと言いたいのかしら?」
「い、いえ、滅相もありません!」
「フフ・・・・・・まぁおめでたい席ですから、これ以上からかうのは勘弁してあげましょう。結婚おめでとう、アリス。」
か、変わってないなこの人も。
「あ、ありがとうございます。」
「学院に行くと言い出した時も驚いたけれど、もっと驚くことになるとは思わなかったわ。まさか結婚して戻ってくるなんてね。それも貴族と。」
「あはは・・・・・・。でも何というか、私にとっても意外過ぎて未だに実感が無いです・・・・・・。」
書類みたいなのを書かされた程度だったからなぁ。
その時に結婚式は時間が掛かりそうだから断ったはずなんだけど、まさか先回りして準備万端で待ち構えてるとは夢にも思わなかった。もう明日にでも始められるらしい。というか明日やると張り切っていた。
エルクたちがまだ帰って来ていないのだが、帰って来てから二回目をやれば良いだろうという結論に達したようだ。口を挟むとなんか怒られそうだったので、俺は黙って従うことにした。フラムも楽しみにしてるみたいだし、これは不可抗力だろう。
「お母さんもアリスが貴族になったなんて実感が湧かないわ・・・・・・。」
「あ・・・・・・そういやそうだった。」
気を抜いたら自分が貴族になったことさえ頭から抜け落ちてしまう。
平民根性が根っこまで沁みついてるのだ。
「ハァ・・・・・・何を言っているのですか、アリス。しっかりなさい。そんな様では相手の子に見限られてしまいますよ。」
「ぅ・・・・・・ハイ。」
「全く、性根から叩き直す必要がありそうですね?」
「だ、大丈夫です!!」
直立不動で敬礼する。
これから扱かれるなんて冗談じゃない。
「まぁ、今日は軽く挨拶に来ただけですから、それで良しとしましょう。明日の花嫁を連れまわす訳にもいきませんからね。ニーナ、帰りますよ。」
「うん! ・・・・・・ヒノカ姉は?」
「いや、私は・・・・・・。」
ヒノカが遠慮がちにルーナの方へ視線を向ける。
相手がルーナさんとニーナなんだし、そこまで気を遣う必要も無いと思うが。
「夕食前に軽く運動をしたいのですけれど、ニーナでは力不足でしょうから貴方にもお願いするわ、ヒノカ。」
「・・・・・・はい! 喜んでお受けいたします。」
なんとか矛先は逸れたか。
と、胸を撫でおろしているとくるりと振り返ったルーナさんと目が合う。
「学院での生活で貴方たちの腕が鈍っていないか、きちんと確かめる必要がありそうですね。」
結局そうなるのかよ・・・・・・。
*****
「サーニャちゃん、私の料理はお口に合うかしら?」
「ンまいにゃ!」
ルーナさんたちと別れた後、俺たちは家で夕食をとっている。何年ぶりだろうか、母の手料理ってのは。フィーも嬉しそうに料理を頬張っている。
小さな食卓を囲んでいるのはフィーとリーフ、サーニャと俺、そしてサレニア。
エルクは出かけていて正解だったかもしれないな。周りが女の子だらけでは彼も肩身が狭いだろう。
「それにしても、結婚式を二回するだなんて聞いたことがないわ。まぁでも、貴女たちらしいと言えば貴女たちらしいのかしらね・・・・・・。」
屋敷での話を聞いていたリーフが食事の手を止めて、呆れたように溜め息を吐いた。
その様子を見ていたサレニアが小さく笑う。
「ふふ・・・・・・あのフラムって子、すごく大人しそうに見えるけど結構ワガママさんなのね。」
「普段は見た目通り大人しい子なのですけど、アリスの事となると見境が無くなるというか・・・・・・。」
「随分愛されているのねぇ。」
「えぇ、それはもう。」
リーフとの話が弾んでいたサレニアが、何かを思い出したように「あっ」と声を上げる。
「そういえばあの子はどうしているの? ミアちゃん、だったかしら? あの子もアリスのことが好きだって、ずっと言っていたわね。」
「レンシアの街で元気にしてるよ。」
「あら、連れて来てあげなかったの?」
「まぁ、一応学院の卒業旅行だし・・・・・・埋め合わせはちゃんとするよ。」
「そうしてあげなさい。きっと寂しがってるわよ、あの子。」
「うん・・・・・・。」
とんでもない事をせがまれそうだなぁ・・・・・・。
他にも学院での話や迷宮の話、バカンスの話。喋るネタは尽きない。
気付けば夜もすっかり更けてしまっていた。
リーフとサーニャは拡張した方の寝室へ、俺とフィーは自宅の寝室を使うことになった。
しかしベッドが固いな・・・・・・。俺もすっかり贅沢を覚えてしまったらしい。
「ねぇ、フィー、アリス。今日はお母さんと一緒に寝ようか。」
「・・・・・・うん!」「え、急にどうしたの・・・・・・?」
「あら、アリスは嫌?」
少し寂しそうな表情を見せるサレニア。
「ううん、お母さんがいきなりそんなこと言うから驚いただけだよ。」
「せっかく久しぶりに子供たちに会えたんだもの。少しくらい良いじゃない。」
ぎゅっと苦しいくらいに抱きしめられる。
断ったところで無理矢理ベッドに引きずり込まれそうな感じだ。
「わ、分かったよ・・・・・・。でも、三人で寝たら寝台から落ちちゃいそうだよ?」
「あら、ホントね。二人とも大きくなっちゃったわねぇ。」
「だから、私はいいからお姉ちゃんと一緒に寝なよ。」
「・・・・・・だめ。」
離れようとした腕をフィーに掴まれる。
「でも・・・・・・。」
「・・・・・・新しいの作ったらいい。」
「新しい寝台を作っても置き場所が無いよ。」
「・・・・・・お父さんのを別の部屋に持っていって後は詰めればいい。」
「分かりました・・・・・・。」
親父ィ・・・・・・。
すまねぇ、これ以上お姉ちゃんに楯突いたら俺が怒られるんだ。
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