367 / 453
BACK TO THE ・・・・・・
43話「神言の果てに」
しおりを挟む
寝転がった状態で痛みが走る個所に治癒魔法をかける。
戦闘中は無我夢中だったお陰で痛みも緩和されていたらしく、時間が経つにつれ痛みが激痛へと変わっていく。
痛みが全て取り除かれたころ、額にはじっとりと脂汗が滲んでいた。
「さすがにヤバかった・・・・・・。」
呟きながら横たえていた身体を起こし、一息つく。
いや、あんなのを相手によくこれだけの怪我で済んだと言うべきか。山の方は穴だらけで酷い惨状になってしまったが・・・・・・。
<なんや、もう治ったんかいな。>
「何さそれ。治らないほうが良かったの?」
<いや・・・・・・さすが御使い様や思うてな。>
「まぁ、あんまりこんな所に長居はしたくないしね。早く山を下りよう。」
側に転がっていた光の剣を掴み、杖代わりにして立ち上がった。
――ピキッ!
反射的に音のなった方へ視線が向く。
手元の光の剣・・・・・・その中心に収まっている賢者の石へ。
「ど・・・・・・どうしたの、それ?」
俺の視界には、中央に大きく亀裂の入った賢者の石が映り込んでいる。
そしてこうしている間にも亀裂から小さなひびが生まれ、徐々に広がっていく。
<どうもこうもあらへんわ。あれだけの魔力を捌ききるのはウチでも中々しんどかったで。>
「そ、そんなこと聞いてるんじゃないよ! どうやったら直せるの、それ!?」
<どないしたらって言われてもなぁ・・・・・・あの強大な魔力を受けて壊れてもうたんや。もうどないしようもあらへん。まぁでも邪竜を倒すまで持たせられて良かったわ!>
「そうだ、治癒魔法なら・・・・・・っ!」
賢者の石へ向けて治癒魔法をかける。
しかし注いだ魔力はそのまま空しく亀裂から漏れ出ていってしまう。
<せやから無理や言うてるやんか。>
「でも・・・・・・っ! 邪竜を倒して、”約束の地”も取り戻して・・・・・・これからでしょ!?」
<ええんや、ウチの仕事はここまでや。もともと事が済んだら光の剣は封印してもらうつもりやったしな。永遠に眠らされるよりはここで壊れてもうた方がいっそ清々しいで。手間も省けるしな。>
「だからって・・・・・・!」
亀裂から割れないよう手で押さえるも、触れた個所からボロボロと賢者の石が崩れていく。
<ウチのことは気にする必要あらへん。それに、御使い様にはまだやらなアカンことが残っとるやろ?>
「私のやること・・・・・・?」
<帰らなアカンとこがあるんやろ?>
「それは・・・・・・。」
そう、俺の目的は邪竜を倒すことでも、”約束の地”を取り戻すことでもない。
未来へ帰ること、だ。
<なんや、忘れとったんかいな。しっかりせなアカンで。>
「うん、ごめん・・・・・・。」
<そない辛気臭いツラしなや。これでも御使い様にはごっつい感謝しとるんやで。>
「感謝って、私は何も・・・・・・。」
<御使い様はウチらがやってきたことが正しかったと証明してくれたんや。神言を視ることが出来ても、どうしても不安は拭えんかったからな。けどこれでやっと肩の荷が下りたわ。>
巫女たちは神言が視える、と言ってもそれは明確なものではなかった。
その不明瞭さ故に常に葛藤が絶えなかったのだろう。
そして賢者の石は・・・・・・彼女は長きにわたりその葛藤を続けてきたのだ。
<最後まで手伝ってやれんのは残念やけど、そこは堪忍してや。>
「気にしないで。私は私の目的を・・・・・・ちゃんと果たすから。」
<その言葉が聞けて良かったわ。短い間やったけど・・・・・・ありがとうな――。>
完全に砕けて砂のように細かくなった賢者の石が、指の間からサラサラと零れていく。
そして、彼女の声は聞こえなくなった。
賢者の石を失った光の剣もまた、その形を保つことが出来ず崩壊していく。
支えを失った俺の身体は、尻もちを着いて倒れた。
「くそっ、何で・・・・・・。」
俺がもっと上手く立ち回っていれば、彼女に無理をさせることは無かったかもしれない。
そうすれば、こんなことには・・・・・・。
沼に嵌まっていきそうな思考を頭を振って止める。
「メッセージ・・・・・・確認しなきゃ。」
今は彼女の遺した言葉通りに、未来へ帰るために行動しなければ。
未来から送られてきたメッセージを確認する。
「・・・・・・魔法陣が完全に復元されてる。」
作りかけの魔道具にこの魔法陣を刻めば、未来へ帰るための魔道具が完成するだろう。
その為にも、まずはこの山を下りないと。
倒れていた身体を再び立ち上がらせる。
その時――
「――この魔力、何だっ!?」
頭上から強大な魔力を感じ、慌てて見上げる。
雲の切れ間から差し込む金色の光。
その中心には黄金の鱗がびっしりと生えた長い体躯。すべてを貫くような黄金の角。
金色の瞳に射貫かれ、身動ぎ一つできない。
「黄金の・・・・・・龍。」
空から舞い降りてきた圧倒的な存在。邪竜とは全く比べ物にならない。
その美しさ故か、息を呑むことすらできずにいる。
聞いてないぞ・・・・・・こんな裏ボスが出てくるだなんて。
戦闘中は無我夢中だったお陰で痛みも緩和されていたらしく、時間が経つにつれ痛みが激痛へと変わっていく。
痛みが全て取り除かれたころ、額にはじっとりと脂汗が滲んでいた。
「さすがにヤバかった・・・・・・。」
呟きながら横たえていた身体を起こし、一息つく。
いや、あんなのを相手によくこれだけの怪我で済んだと言うべきか。山の方は穴だらけで酷い惨状になってしまったが・・・・・・。
<なんや、もう治ったんかいな。>
「何さそれ。治らないほうが良かったの?」
<いや・・・・・・さすが御使い様や思うてな。>
「まぁ、あんまりこんな所に長居はしたくないしね。早く山を下りよう。」
側に転がっていた光の剣を掴み、杖代わりにして立ち上がった。
――ピキッ!
反射的に音のなった方へ視線が向く。
手元の光の剣・・・・・・その中心に収まっている賢者の石へ。
「ど・・・・・・どうしたの、それ?」
俺の視界には、中央に大きく亀裂の入った賢者の石が映り込んでいる。
そしてこうしている間にも亀裂から小さなひびが生まれ、徐々に広がっていく。
<どうもこうもあらへんわ。あれだけの魔力を捌ききるのはウチでも中々しんどかったで。>
「そ、そんなこと聞いてるんじゃないよ! どうやったら直せるの、それ!?」
<どないしたらって言われてもなぁ・・・・・・あの強大な魔力を受けて壊れてもうたんや。もうどないしようもあらへん。まぁでも邪竜を倒すまで持たせられて良かったわ!>
「そうだ、治癒魔法なら・・・・・・っ!」
賢者の石へ向けて治癒魔法をかける。
しかし注いだ魔力はそのまま空しく亀裂から漏れ出ていってしまう。
<せやから無理や言うてるやんか。>
「でも・・・・・・っ! 邪竜を倒して、”約束の地”も取り戻して・・・・・・これからでしょ!?」
<ええんや、ウチの仕事はここまでや。もともと事が済んだら光の剣は封印してもらうつもりやったしな。永遠に眠らされるよりはここで壊れてもうた方がいっそ清々しいで。手間も省けるしな。>
「だからって・・・・・・!」
亀裂から割れないよう手で押さえるも、触れた個所からボロボロと賢者の石が崩れていく。
<ウチのことは気にする必要あらへん。それに、御使い様にはまだやらなアカンことが残っとるやろ?>
「私のやること・・・・・・?」
<帰らなアカンとこがあるんやろ?>
「それは・・・・・・。」
そう、俺の目的は邪竜を倒すことでも、”約束の地”を取り戻すことでもない。
未来へ帰ること、だ。
<なんや、忘れとったんかいな。しっかりせなアカンで。>
「うん、ごめん・・・・・・。」
<そない辛気臭いツラしなや。これでも御使い様にはごっつい感謝しとるんやで。>
「感謝って、私は何も・・・・・・。」
<御使い様はウチらがやってきたことが正しかったと証明してくれたんや。神言を視ることが出来ても、どうしても不安は拭えんかったからな。けどこれでやっと肩の荷が下りたわ。>
巫女たちは神言が視える、と言ってもそれは明確なものではなかった。
その不明瞭さ故に常に葛藤が絶えなかったのだろう。
そして賢者の石は・・・・・・彼女は長きにわたりその葛藤を続けてきたのだ。
<最後まで手伝ってやれんのは残念やけど、そこは堪忍してや。>
「気にしないで。私は私の目的を・・・・・・ちゃんと果たすから。」
<その言葉が聞けて良かったわ。短い間やったけど・・・・・・ありがとうな――。>
完全に砕けて砂のように細かくなった賢者の石が、指の間からサラサラと零れていく。
そして、彼女の声は聞こえなくなった。
賢者の石を失った光の剣もまた、その形を保つことが出来ず崩壊していく。
支えを失った俺の身体は、尻もちを着いて倒れた。
「くそっ、何で・・・・・・。」
俺がもっと上手く立ち回っていれば、彼女に無理をさせることは無かったかもしれない。
そうすれば、こんなことには・・・・・・。
沼に嵌まっていきそうな思考を頭を振って止める。
「メッセージ・・・・・・確認しなきゃ。」
今は彼女の遺した言葉通りに、未来へ帰るために行動しなければ。
未来から送られてきたメッセージを確認する。
「・・・・・・魔法陣が完全に復元されてる。」
作りかけの魔道具にこの魔法陣を刻めば、未来へ帰るための魔道具が完成するだろう。
その為にも、まずはこの山を下りないと。
倒れていた身体を再び立ち上がらせる。
その時――
「――この魔力、何だっ!?」
頭上から強大な魔力を感じ、慌てて見上げる。
雲の切れ間から差し込む金色の光。
その中心には黄金の鱗がびっしりと生えた長い体躯。すべてを貫くような黄金の角。
金色の瞳に射貫かれ、身動ぎ一つできない。
「黄金の・・・・・・龍。」
空から舞い降りてきた圧倒的な存在。邪竜とは全く比べ物にならない。
その美しさ故か、息を呑むことすらできずにいる。
聞いてないぞ・・・・・・こんな裏ボスが出てくるだなんて。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる