DTガール!

Kasyta

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BACK TO THE ・・・・・・

44話「黄金龍」

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 俺の前に降り立った黄金龍に圧倒されながらも、なんとか自分を奮い立たせて土の剣を作り出し、手に握る。
 だが、眼前にある絶望という二文字に目を逸らすこともできない。
 こんなの、どうやって戦えばいいんだよ・・・・・・。
 邪竜戦で頼みの綱だった光の剣も、賢者の石は失われて使い物にならなくなってしまった。
 急造した土の剣では、あの輝く鱗に傷一つ付けられるかも怪しい。
 ・・・・・・だからと言って逃げるわけにもいかないか。
 覚悟を決めたとき、黄金龍が落ち着いた声で言葉を発した。

「我は戦いに来たのではない。剣を納めよ、小さき者。」

 そう、言葉を発したのである。
 腹の底に響くような空気の振動に一歩後退る。

「しゃ、喋った・・・・・・!?」

 思わず驚きの声が漏れた。
 剣を納めろとは言われたが、はいそうですかと要求を呑めるはずもなく、剣を構えたまま言葉を続ける。

「それじゃあ、貴方は何をしにこちらへ参られたのでしょう?」
「我が同胞の封印が解かれ、その気配が消失したため確認しに来たのだ。」

「同胞って・・・・・・その邪竜のことですか?」
「ふむ、邪竜・・・・・・か。確かに其方らからそう呼ばれるのは無理もないか。」

 その言葉に特に黄金龍の感情を推し量ることは出来なかったが、どうやら邪竜とは関係があるかのような口振りだ。

「もしかして、封印は貴方がされたのですか?」
「違う。封印は同胞自らが完全に正気を失う前に魔力を結晶化して施したものだ。」

 つまり邪竜を覆っていた純魔晶が封印そのものだったということか。
 そしてそれを壊してしまったから邪竜が目覚めてしまったのだ。
 ・・・・・・あれ、もしかして余計なことをやってしまったのか?
 でも魔力が垂れ流され続けていたから放置しておくわけにもいかなかったし・・・・・・。

「あの、封印を解いてしまって申し訳ありません・・・・・・。」
「構わぬ。いずれ対処する必要があった。それが今になっただけのことだ。いや、創造主様が対処を行った結果か・・・・・・それは我にも計り知れぬ。」

 創造主様って・・・・・・神サマのことだよなぁ、やっぱり。
 戦闘をする必要はなさそうなので構えを解いて土の剣から魔力を抜き、ただの土に戻した。
 一応手を上げて戦う意思は無いアピールをしながら会話を続ける。

「貴方は対処出来なかったんですか?」

 この黄金龍は邪竜なんか相手にならないほどの力を持っている。
 封印される前の邪竜の強さは分からないが、俺なんかに戦わせるよりよっぽど勝算が高そうだ。

「そもそも我らは戦うように創られてはいない。我らは創造主様より賜った御役目を果たさねばならぬのだ。」

 戦うように創られてないって・・・・・・ほぼ死んでた邪竜でも命がいくつあっても足り無さそうだったのだが? いや、実際一つの命を失っている。
 あれだけの・・・・・・いや、それ以上の力があるのだから、この黄金龍が邪竜を止めてくれていればあんなことにはならなかったはずだ。

「正気を失い御役目に力を使わなくなった故、同胞はその力を破壊の力へと転化することができた。だが我らは常に大半の力を御役目に注ぎ込んでいるため、戦うことが出来ぬのだ。」

 俺の表情を読んだのか、黄金龍が答えた。
 狂ってしまった邪竜は御役目のために使っていたパワーを使って暴れていたってことのようだ。
 でも黄金龍は御役目を行いながらだと戦えなかった、と。

「もし相討つことが出来ても、別の同胞に御役目の負担がゆく。そうなればまた新たに正気を失う同胞が出てこないとも限らぬのだ。そのようなことが連鎖すれば、やがて世界は瓦解してしまうだろう。」

 なるほど、御役目が維持されていないと世界が崩壊すると。
 ・・・・・・なんかとんでもない話になってきたんだが。

「それで、その神サマから与えられた御役目というのは?」
「ふむ・・・・・・良いだろう。其方らも原因の一端ではあるようだしな。」

 俺が原因の一端・・・・・・? どういうことだ?
 俺の困惑を他所に、黄金龍が言葉を続ける。

「我らの御役目は因果律の乱れを調律することだ。しかし其方らが斃した同胞は調律中に因果律の乱れに呑まれ、その際に正気を失ってしまったのだ。」

 その同胞ってのが邪竜か。
 そして少々暴れはしたが、正気が残っているうちに自らを封印した、という流れなのだろう。
 だが、それのどこに俺の関係があるのかと思案し・・・・・・一つの答えに辿り着いた。

「それってもしかして、私が時間移動したから・・・・・・?」
「そうだ。」

 黄金龍の簡潔で短い答えに一瞬頭の中が真っ白になる。
 それじゃあ、俺がタイムマシンなんて使わなければ・・・・・・。

「案ずるな。言ったであろう、”原因の一端ではある”と。本来であれば、其方らのような小さき者が時間移動したところで我らの御役目に大した影響は無いのだ。」
「本来であれば・・・・・・?」

「この世界の在り方は異常だということだ。」

 異常・・・・・・か。
 不老にタイムトラベル・・・・・・心当たりがあり過ぎるんですけど。
 俺一人だけならそれこそ些細な影響なのかもしれないが、そこそこ大きなコミュニティを築けるほどには魔女の数は居る。

「それも私・・・・・・いや、魔女の所為で?」
「この世界の在り方を決めているのは創造主様だ。其方らなど些末な存在に過ぎん。」

 とりあえず世界がヤバイらしいのは、俺や魔女の所為ではないようだ。杞憂だったか・・・・・・? いや、でも魔女は未来の存在だし”過去(ここ)”でする話ではないな。
 帰ることが出来たら検証の必要があるかもしれない。頑張って、ドク。いや、その前にタイムトラベル禁止令が必要か?
 というかむしろ黄金龍の口振りからすると神サマの所為で世界がヤバイってことでは・・・・・・? あ、だから黄金龍たちを創って補佐をさせているのか。
 まぁ世界がヤバイらしいのはどちらにしろ変わらないのようだが。こんな金ぴかドラゴンや神サマでも手を焼いているなら、俺の手には余る問題だろう。

「だが、其方らがそれを気にするなら”過去(ここ)”から疾く去ぬがよい。」

 さっさと未来へ帰れ、ということか。
 そうすれば因果律とやらも正常な状態に近づくのだろう。”一端”の部分だけだろうが。
 そういえば、賢者の石にも早く帰れと言われていたな・・・・・・。
 けれど、それは因果律がどうこうという小難しい話ではない。

「・・・・・・わかりました。早く帰ることにします。」
「それが良い。同胞の亡骸は我が回収していく。ではさらばだ。」

 邪竜の亡骸は黄金龍と同じ色の光に包まれ、光の粒子となって空に溶けるように消えていった。
 そして光が収まったのを見届けると黄金龍も天へと上っていき、その姿は見えなくなった。

「あ~、怖かった・・・・・・。」

 黄金龍が姿を消すのを見届けた俺は、腰が抜けて座り込んでしまった。

「帰るにしても、皆には挨拶をしておかないとな・・・・・・。まぁ、今は少し休憩だ。」

 俺は抜けた腰が立ち上がれるようになるまでしばし休み、それから箒に跨って山の麓を目指した。
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