DTガール!

Kasyta

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BACK TO THE ・・・・・・

00012話「廃業」

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「アタシは今日ちょっと用事で出かけなきゃいけねえから、昼は適当に済ませてくれ。」

 俺が用意した朝食を頬張りながらカレンが銀貨を手渡してくる。
 銀貨は俺が知っているものより精巧な刻印が施されており、手持ちの過去のものは代替出来そうにない。
 冒険者ギルドで稼げればいいのだが・・・・・・最悪の場合は手持ちの銀貨を弄るしかないだろう。

「用事って何ですか?」
「あー・・・・・・シラインの部屋を片付けに行くんだよ。」

 寂しそうに笑いながらカレンが答えた。
 余計な事を聞いてしまったか。

「なら私も手伝います。」
「ははは、おチビが重いもんなんて運べねえだろ? 孤児院で元気が余ってるヤツらも手伝いに来ることになってるし、おチビは大人しく留守番してな。」

「・・・・・・分かりました。なら今日は街を見て回ることにします。」
「おう、それが良いな! 迷子になるなよ?」

「な、なりませんよ。」
「ホントかよ。あと、外で食べるつもりなら念のため昨日の食堂でな。」

 少し過保護な気もするが・・・・・・ギルドの仕事が出来るようになればもう少し信用してもらえるだろう。

「一つ行きたいところがあるんですけど。」
「ん、どこだ?」

「冒険者ギルドです。街のどの辺りにありますか?」
「冒険者・・・・・・ギルド? 何だそりゃ? それにしても冒険者って・・・・・・あはは! おチビも立派なガキだったんだな!」

「し、知らないんですか!?」
「お、おう・・・・・・聞いたこともねえな。」

 カレンだって曲がりなりにも警備隊の一員だ。
 冒険者ギルドなんて施設があれば、その存在を知っていて然るべきである。
 それを知らないってことは・・・・・・本当に”冒険者ギルドは存在しない”ってことか?

「お、おいおい。そんなに落ち込むなって。アタシが知らないだけかもしんねえしさ。ちなみにどんな店なんだ?」
「店というか・・・・・・魔物退治や護衛の依頼をこなして報酬を受け取る施設です。」

「んー・・・・・・それって民間の傭兵団か? でも”冒険者ギルド”なんて傭兵団は聞いたことねえなぁ。」
「民間の傭兵団? そんなのがあるんですか?」

「なんだ、知らなかったのか? まぁ、魔物退治というよりは護衛の仕事が殆どだろうけどな。さすがに警備隊じゃそこまで手が回らないしな。」

 なるほど・・・・・・街周辺の魔物退治は街の警備隊が行って、傭兵団が護衛の仕事を請け負ってるのか。
 俺の時代にも傭兵団が無かったわけじゃないが、彼らの大部分は戦争屋だった。
 戦争と言っても俺の時代じゃ大規模なものは起こせないから、国同士の小競り合いに参加して小銭を稼ぐというのが主である。
 稼ぎは冒険者と比べるべくもない。冒険者になれないような奴らが屯していたのだから当然ではあるが。まぁ、中には冒険者と兼任してるような奴も居たけど。
 今は傭兵団が冒険者ギルドに成り代わったという感じか・・・・・・それなら、冒険者ギルドは一体どうなってしまったんだ?

「ちょっと調べたいことが出来たので、今日は図書館に行ってきます。」

 冒険者ギルドが無くなったというのなら、それはそれで構わない。だが俺だって冒険者の端くれである。その原因くらいは知っておきたい。
 まぁ、当てが外れて暇になったのと・・・・・・あとは単に好奇心からだ。冒険者ギルドの無い未来を変えようなどとは思っていない。
 魔女たちなら、冒険者ギルドを存続させようと思えば出来たはずである。何か理由があって止めたのだろう。

「ちゃんと夕飯までには帰って来いよ。」
「分かってますよ。」

 でないとカレンが晩御飯食べられないからね・・・・・・。

*****

 こうして連日図書館へ足を運ぶこととなったのだが・・・・・・歴史書を読み漁っても冒険者ギルドの記述は見つけられずにいた。
 歴史書と言っても口伝をまとめたレベルのものばかりだから仕方ないのだろうが。

「・・・・・・・・・・・・あ、これは関係ありそうかも。」

 数百年前に起こった魔物の大発生。
 こんな危機が起きれば冒険者たちが活躍しそうなものだが・・・・・・全く描写が無い。
 その年代に集中して他の書も調べてみるが、やはり冒険者ギルドの記述は見つけられなかった。
 代わりに誰々の傭兵団が活躍した、などの記述を見つけることが出来た。つまりこの時点で冒険者ギルドは無くなってしまっていたのだろう。
 そしてこれらの事柄からある推測が浮かぶ。

「冒険者ギルドが無くなったから魔物の大発生が起きた・・・・・・?」

 魔物を駆除する者が減れば、魔物が増えるのは必然だ。
 傭兵団が冒険者ギルドに成り代わるといっても、個人経営の傭兵団と大陸全土に支店がある冒険者ギルドでは規模が違いすぎる。
 局所的に活躍は出来ても、冒険者ギルドの仕事を全て賄うなど土台無理な話だろう。
 しかし、そこから遡って冒険者ギルドの記述は一向に見つからない。

「随分熱心に勉強しとるの、お嬢ちゃん。」

 声を掛けられた方へ振り向くと、白い髭を蓄えたお爺さんが立っていた。
 本棚の前で本を取っかえ引っかえしていたところを見られていたらしい。
 人が居なかったので本棚の前を占有していたのだが、どうやらここまでのようだ。

「ご、ごめんなさい。すぐに退きます。」
「ふぉっふぉっふぉ、構わんよ。ところで何を調べておったのじゃ? 学校の授業範囲ではないようじゃが。」

 俺の開いていた本を覗き込みながら、お爺さんが問いかけてきた。

「冒険者ギルドについて、少し。」
「ほぉ、冒険者ギルドか。お嬢ちゃんの歳で知っとるとは、随分とスキモノじゃのぉ。」

「何か知ってるんですか、お爺さん?」
「こう見えて歴史大好きジジイじゃからの。しかし冒険者ギルドについて書かれた本なんか見つからんかったじゃろ?」

「は、はい! だからこうして本をひっくり返すようにして・・・・・・。それならどうしてお爺さんは知ってるんですか?」
「他の国へ行けば沢山あるからの。」

「つまりこの国には無い、と。」
「探せばあるじゃろうけどな。そんなことをするくらいなら他の国に行った方が早いわい。」

「何故わざわざそんな検閲みたいなことを・・・・・・?」

 俺の問いにお爺さんは答えた。
 彼の言葉には、分かっていたとしてもあまり聞きたくなかった言葉が含まれていた。

「うむ、それはの・・・・・・この国が冒険者ギルドを潰した責任の一端を負っておるからじゃ。」
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