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BACK TO THE ・・・・・・
00023話「産地直送」
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狭い教室の窓から覗く空が赤らみ始めたころ、放課後を告げる鐘が鳴り響いた。
「さて、今日はここまでにしましょうか。」
キャサドラ先生の言葉に、俺とコレットは頷く。
「それじゃあ帰ろうか、コレットちゃん。」
「ぅ、うん。」
「寄り道せずに帰るのですよ。」
先生に挨拶し、鞄を掴んで教室を出た。
玄関に向かって歩いて行くと、同じように帰り支度をした生徒たちが増えてくる。
すれ違う体操服姿の子たちは、これから着替えて帰るのだろう。
校門を出て、しばらく歩いたところでコレットが声を掛けてくる。
「ぁ、あの・・・・・・アリスちゃん。」
「どうしたの?」
「ゎ、わたしの魔法の・・・・・・こと。」
「あぁ、そうだったね。」
あの後、先生が戻ってきて結局話が有耶無耶になってしまっていたんだった。
椅子は無事、魔法道部の備品になったようだ。
「今日はもう疲れてるだろうし、明日からにしようか。ちょうど部活動が無い日だし、放課後にどこかで練習しよう。」
「ぅ、うん・・・・・・!」
約束を交わし、分かれ道に差し掛かった。
コレットはどうやら反対側らしい。
「それじゃあ、私はこっちだから。また明日ね。」
「ま、また明日・・・・・・ね。」
コレットと別れ、一人帰路を歩く。
「んー、このまま帰っても家に一人だしな・・・・・・少し商店街を散策して行くか。」
誰に話しかけるでもなく独り言を漏らし、家路に向いていた進路を少し修正する。
寄り道をしないようにと言われたばかりだが・・・・・・ま、頭脳はオトナだし良いだろう。
買い食いできるような資金も無いしな。
「・・・・・・稼げるような場所があれば良いんだけど。」
フラフラと人々で賑わう商店街の中を歩く。
美味しそうな匂いが漂ってくるせいでお腹の虫が鳴いた。やはり昼食が少なかったか。
追いかけてくる匂いを振り切りながら散策を続けていく。
「うーん、やっぱそう上手くはいかないか・・・・・・。」
従業員募集の貼り紙も見かけるが、どうしても年齢で引っ掛かってしまうのだ。
こういう点では実力で稼げる冒険者ギルドがあった時代の方が良かったなと改めて思う。
まぁでも、俺みたいな子供が働かなくてもいい時代になったってことか。
表通りを一通り見終わり、今度は裏通りへ。表通りとは違って少し落ち着いた雰囲気だ。
「お、魔道具が置いてる。でもなんか古めかしいな。こっちのは茶器か? こっちも随分・・・・・・。」
店の看板を見上げてみると「古物商」と書かれている。
なるほど。道理でボロそうな物ばかりが並べられているわけだ。
目つきの悪い老齢店主の視線を躱しながら品物を物色していく。
値段の割に対して面白そうなものは見つからなかったが、今にも剥がれ落ちそうな貼り紙が目に留まった。
「へぇー、買い取りもやってるんだ。ふむ、買い取りか・・・・・・。」
古い物なら沢山持っている。それらが売れるなら、お小遣い程度にはなるのではなかろうか。
でも売れそうな物なんてあったかな・・・・・・。さすがに装備品を売るわけにはいかないし。
そう考えながら改めて店内を物色する。
「あ、これなら・・・・・・。」
一つ売れそうな物を思いつき、店内のカウンターに足を向ける。
「あの、お爺さん。」
店主に声を掛けると、不機嫌そうに答えた。
「何じゃ。」
「買い取りしてほしいんですけど。」
「・・・・・・ワシが認めたものしか買わんぞ。」
「なるほど・・・・・・じゃあこんなのはどうですか?」
金貨を一枚取り出してカウンター越しに店主に差し出す。
古銭というわけだ。これなら両替みたいなものだろう。
店主はさっきまでの不機嫌はどこへやら、穴が空きそうなほどの視線を金貨に注ぐ。
「こ・・・・・・これはっ!! コラッ! 素手で触っちゃイカン!」
慌てて俺が持っていた金貨を柔らかい布で取り上げてカウンターにそっと置いたかと思うと、自分はドタドタと音を立てて店の奥に引っ込んでしまった。
店の奥から響いてくる物がひっくり返るような音を聞きながら待っていると、お爺さんが大きな本を抱えて戻ってきた。
本をドン! とカウンターに広げ、金貨を見ながらページをパラパラとめくっていく。
「あ、あった・・・・・・コレじゃ・・・・・・。やはりそうか・・・・・・。」
お爺さんが開いたページを覗き込むと、俺が渡した金貨に彫られている紋様が描かれていた。
「でもこいつはまるで・・・・・・千年前から持って来たみたいな保存状態じゃ。」
千年前から産地直送である。とは口が裂けても言えないが。
「おい小僧! 一体どこからコイツを手に入れた!?」
こ、小僧って・・・・・・。一応体は女の子なんだが・・・・・・。
溜め息を吐きながらもお爺さんの問いに、用意していた設定を答える。
「父から譲り受けました。」
「その父親は今何処に居るんじゃ!?」
「父はもう居ませんよ。」
「そ、それは悪いことを聞いたな・・・・・・。」
「それで、これは買い取ってもらえるんですか?」
「いや・・・・・・買い取りは無理じゃな。」
なんだ、あんな反応だったから期待したのに。
「じゃあ持って帰ります。」
カウンターから金貨を取り上げようとすると、慌ててお爺さんが止めてくる。
「じゃから素手で触るなと言うとるじゃろ! 価値が下がってしまう!」
「でも買い取ってくれないんですよね?」
「じゃからワシの資金じゃ買い取れんのじゃ!」
な、なるほど・・・・・・。でも結局買い取りしてもらえないのは変わらないわけだが。
「と、とにかく小僧。次の休みにまたウチに顔を出すんじゃ。ワシよりちゃんとした人を紹介してやる。その人なら買い取ってくれるじゃろう。」
「どんな方なんですか?」
「テルナ博物館の館長じゃ。」
博物館の館長か・・・・・・確かにさびれた古道具屋を営んでる爺さんより余程ちゃんとしてるな。
「おい、何か失礼なことを考えとるな・・・・・・とにかく! 次はその・・・・・・母親もちゃんと連れてくるんじゃぞ。」
「・・・・・・母も居ませんけど。あ、保護者ならちゃんと居ますよ?」
「その保護者を連れてくるんじゃ! いいな!」
叱責とともに店を追い出される。空を見るともういい時間だ。カレンも帰ってくる頃合いだろう。
柔らかい布に包まれたままの金貨をしまい込む。
「ちょっと金策しようと思っただけなのに、面倒なことになったなぁ・・・・・・。」
俺の吐いた溜め息は夕闇の中に溶けていった。
「さて、今日はここまでにしましょうか。」
キャサドラ先生の言葉に、俺とコレットは頷く。
「それじゃあ帰ろうか、コレットちゃん。」
「ぅ、うん。」
「寄り道せずに帰るのですよ。」
先生に挨拶し、鞄を掴んで教室を出た。
玄関に向かって歩いて行くと、同じように帰り支度をした生徒たちが増えてくる。
すれ違う体操服姿の子たちは、これから着替えて帰るのだろう。
校門を出て、しばらく歩いたところでコレットが声を掛けてくる。
「ぁ、あの・・・・・・アリスちゃん。」
「どうしたの?」
「ゎ、わたしの魔法の・・・・・・こと。」
「あぁ、そうだったね。」
あの後、先生が戻ってきて結局話が有耶無耶になってしまっていたんだった。
椅子は無事、魔法道部の備品になったようだ。
「今日はもう疲れてるだろうし、明日からにしようか。ちょうど部活動が無い日だし、放課後にどこかで練習しよう。」
「ぅ、うん・・・・・・!」
約束を交わし、分かれ道に差し掛かった。
コレットはどうやら反対側らしい。
「それじゃあ、私はこっちだから。また明日ね。」
「ま、また明日・・・・・・ね。」
コレットと別れ、一人帰路を歩く。
「んー、このまま帰っても家に一人だしな・・・・・・少し商店街を散策して行くか。」
誰に話しかけるでもなく独り言を漏らし、家路に向いていた進路を少し修正する。
寄り道をしないようにと言われたばかりだが・・・・・・ま、頭脳はオトナだし良いだろう。
買い食いできるような資金も無いしな。
「・・・・・・稼げるような場所があれば良いんだけど。」
フラフラと人々で賑わう商店街の中を歩く。
美味しそうな匂いが漂ってくるせいでお腹の虫が鳴いた。やはり昼食が少なかったか。
追いかけてくる匂いを振り切りながら散策を続けていく。
「うーん、やっぱそう上手くはいかないか・・・・・・。」
従業員募集の貼り紙も見かけるが、どうしても年齢で引っ掛かってしまうのだ。
こういう点では実力で稼げる冒険者ギルドがあった時代の方が良かったなと改めて思う。
まぁでも、俺みたいな子供が働かなくてもいい時代になったってことか。
表通りを一通り見終わり、今度は裏通りへ。表通りとは違って少し落ち着いた雰囲気だ。
「お、魔道具が置いてる。でもなんか古めかしいな。こっちのは茶器か? こっちも随分・・・・・・。」
店の看板を見上げてみると「古物商」と書かれている。
なるほど。道理でボロそうな物ばかりが並べられているわけだ。
目つきの悪い老齢店主の視線を躱しながら品物を物色していく。
値段の割に対して面白そうなものは見つからなかったが、今にも剥がれ落ちそうな貼り紙が目に留まった。
「へぇー、買い取りもやってるんだ。ふむ、買い取りか・・・・・・。」
古い物なら沢山持っている。それらが売れるなら、お小遣い程度にはなるのではなかろうか。
でも売れそうな物なんてあったかな・・・・・・。さすがに装備品を売るわけにはいかないし。
そう考えながら改めて店内を物色する。
「あ、これなら・・・・・・。」
一つ売れそうな物を思いつき、店内のカウンターに足を向ける。
「あの、お爺さん。」
店主に声を掛けると、不機嫌そうに答えた。
「何じゃ。」
「買い取りしてほしいんですけど。」
「・・・・・・ワシが認めたものしか買わんぞ。」
「なるほど・・・・・・じゃあこんなのはどうですか?」
金貨を一枚取り出してカウンター越しに店主に差し出す。
古銭というわけだ。これなら両替みたいなものだろう。
店主はさっきまでの不機嫌はどこへやら、穴が空きそうなほどの視線を金貨に注ぐ。
「こ・・・・・・これはっ!! コラッ! 素手で触っちゃイカン!」
慌てて俺が持っていた金貨を柔らかい布で取り上げてカウンターにそっと置いたかと思うと、自分はドタドタと音を立てて店の奥に引っ込んでしまった。
店の奥から響いてくる物がひっくり返るような音を聞きながら待っていると、お爺さんが大きな本を抱えて戻ってきた。
本をドン! とカウンターに広げ、金貨を見ながらページをパラパラとめくっていく。
「あ、あった・・・・・・コレじゃ・・・・・・。やはりそうか・・・・・・。」
お爺さんが開いたページを覗き込むと、俺が渡した金貨に彫られている紋様が描かれていた。
「でもこいつはまるで・・・・・・千年前から持って来たみたいな保存状態じゃ。」
千年前から産地直送である。とは口が裂けても言えないが。
「おい小僧! 一体どこからコイツを手に入れた!?」
こ、小僧って・・・・・・。一応体は女の子なんだが・・・・・・。
溜め息を吐きながらもお爺さんの問いに、用意していた設定を答える。
「父から譲り受けました。」
「その父親は今何処に居るんじゃ!?」
「父はもう居ませんよ。」
「そ、それは悪いことを聞いたな・・・・・・。」
「それで、これは買い取ってもらえるんですか?」
「いや・・・・・・買い取りは無理じゃな。」
なんだ、あんな反応だったから期待したのに。
「じゃあ持って帰ります。」
カウンターから金貨を取り上げようとすると、慌ててお爺さんが止めてくる。
「じゃから素手で触るなと言うとるじゃろ! 価値が下がってしまう!」
「でも買い取ってくれないんですよね?」
「じゃからワシの資金じゃ買い取れんのじゃ!」
な、なるほど・・・・・・。でも結局買い取りしてもらえないのは変わらないわけだが。
「と、とにかく小僧。次の休みにまたウチに顔を出すんじゃ。ワシよりちゃんとした人を紹介してやる。その人なら買い取ってくれるじゃろう。」
「どんな方なんですか?」
「テルナ博物館の館長じゃ。」
博物館の館長か・・・・・・確かにさびれた古道具屋を営んでる爺さんより余程ちゃんとしてるな。
「おい、何か失礼なことを考えとるな・・・・・・とにかく! 次はその・・・・・・母親もちゃんと連れてくるんじゃぞ。」
「・・・・・・母も居ませんけど。あ、保護者ならちゃんと居ますよ?」
「その保護者を連れてくるんじゃ! いいな!」
叱責とともに店を追い出される。空を見るともういい時間だ。カレンも帰ってくる頃合いだろう。
柔らかい布に包まれたままの金貨をしまい込む。
「ちょっと金策しようと思っただけなのに、面倒なことになったなぁ・・・・・・。」
俺の吐いた溜め息は夕闇の中に溶けていった。
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