DTガール!

Kasyta

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BACK TO THE ・・・・・・

00037話「”元”」

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 コレットのリハビリを終えて数日。
 彼女の運動音痴までは治せなかったが・・・・・・以前と同じように生活できるようになったし、合格点と言っていいだろう。
 俺はようやく平穏な学校生活を取り戻していた。
 だが、その平穏は長くは続かなかったのである。

 学校を終え、帰宅した俺の目にとんでもない光景が飛び込んできた。
 荒らされた室内。二人の男に組み敷かれ、怒号を飛ばすカレン。

「離せよ、クソッ!!」
「だったら大人しくしろ、カレン!」

 もう一人の男が扉を開けた俺の存在に気づき、情けない声を上げる。

「あぁ~っ、やっとアリスちゃんが帰ってきたッスよ、隊長ぉ~。」
「おぉ、元気そうじゃないか。ほらカレン、いつまでそんな醜態を晒してるつもりだ!」

 カレンを取り押さえていた二人は、俺も見知った顔であった。

「えっと・・・・・・ガムアさんとゼスタさん、でしたっけ。」

 カレンの上司と同僚であり、共にゴブリンの襲撃を生き残った二人である。

「覚えててくれたッスね! そうッスよ、ジブンがゼスタでこっちがガムア隊長ッス! あ、”元”隊長ッスね・・・・・・アハハ。」
「”元”? それってどういう・・・・・・?」

「あー・・・・・・実はオレたち、クビになっちまったんッス。」
「え、クビ!?」

 いわゆる無職というやつである。
 そしてクビを宣告されたその足で、ヤケ酒していたらしい。
 その結果がこの惨状である。

「ふぅ・・・・・・儂はもうカレンとは飲まんぞ。」

 ガムア隊長は俺から手渡されたコップの水をグイっとあおり、ため息を吐いた。
 解放されたカレンもすっかり大人しくなり、席に着いている。

「それで、どうしてクビなんてことに?」

 俺の問いにガムア隊長が苦虫を噛み潰したような表情で答える。

「意見の相違ってやつだ。」
「ま、そう言うことッス・・・・・・。」

「意見の相違?」
「お、聞いちゃうッスか、アリスちゃん?」

「おい、こんな子供に・・・・・・。」
「アリスちゃんもある意味当事者なんッスから、聞く権利はあるッスよ。」

「えっと、差し支えなければ・・・・・・。」

 簡単に言えば、上層部は軍縮の方向で話を進めているらしい。
 理由は襲撃の回数が減っていることと、ゴブリンたちの使っている武器にあるという。
 襲撃回数についてはわからないが、武器については俺も目撃している。
 ただ、彼らは俺とは違うところに目を付けているようだ。
 俺としてはゴブリンたちが魔導銃を使っていることに驚いたが、彼らにとってそれは当たり前で、逆に原始的な武器を使っていたことに着目したそうだ。
 襲撃が減り、武器も原始的なものが使われるようになったことで、魔物の勢力が衰えたと判断したのである。
 そして軍縮のとっかかりとして真っ先に白羽の矢が立てられたのが、隊が崩れたこの三人なのだ。

「でも当然、現場としてはそんなの反対ッス。ただ三人まとめて僻地に飛ばすぞなんて脅されちゃ何も言えないんッスよね・・・・・・。」
「それ、私のせいですよね・・・・・・ごめんなさい。」

 カレンが左遷されるとなれば、俺は付いていくか、一人残されることになる。
 普通の子供にとっては、どちらも良い環境とは言えないだろう。
 要するに体の良い人質にされたわけだ。

「気にする必要ないッスよ。たとえアリスちゃんが居なくても、きっと別の方法で追い込まれてたッスから。」
「敗走の責任を問われたり・・・・・・な。」

「それは言わない約束ッスよ、隊長。ま、逆に言えばアリスちゃんのお陰で円満退職できたってことッスから。むしろカレンさんを説得する方が大変だったッスよ・・・・・・。」
「アタシは・・・・・・クソッ!」

 それでカレンは管を巻いて暴れていたのか。

「それにしても、それだけの理由で軍縮なんて・・・・・・。」

 俺が知っている被害だけでも二部隊がほぼ壊滅しているのだ。
 理由があるとはいえ判断が早すぎるとしか言えない。おそらくはずっと機を窺っていたのだろう。

「まぁ、結局はその辺を口実に軍費を減らして、それを手柄にしたいんッスよ。中央から来た上のヤツらは。」

 世界が変わろうが時代が変わろうが、組織ってのはどこも大変なんだな・・・・・・。
 彼らの愚痴大会は長々と続き、完全に陽が落ちたころにようやくお開きとなった。

「ってワケで、ジブンたちはそろそろ帰るッス。アリスちゃんに迷惑かけたらダメッスよ、カレンさん。」
「わーってるよ、さっさと行っちまえ。」

「それじゃあ二人とも達者でな。お嬢ちゃんもしっかり勉強して、カレンみたいにならんようにな、ワハハ!」
「は、はい・・・・・・。」

 二人の姿を見送って家の中に戻ると、さっきまで賑やかだったのが嘘だったように静まり返っていた。

「その・・・・・・すまなかったな、アリス。」
「そう思うんなら、ちゃんと片付け手伝ってくださいね。」

「いや・・・・・・アタシはさ、お前のことなんか考えずに僻地にでもどこにでも飛ばしやがれって啖呵切っちまったんだよ。」

 ばつが悪そうに答えるカレンの顔を見て、思わず吹き出してしまった。

「な、なんだよ・・・・・・。」
「いえ、その方がカレンさんらしいと思って。私は気にしてませんから、カレンさんも気にしないでください。」

 彼女にとっても大切な場所だったはずだ。無理もない。
 経緯はどうあれ、最終的には隊長たちの説得を聞き入れて選んでくれたのだ。それでいいじゃないか。
 俺としても、保護者不在で放り出されるなんて避けたいしな。
 あの二人にはカレンを止めてくれて感謝しかない。

「それじゃあ、ちゃんと片付けてくださいね。」
「分かってるよ。」

 まぁ、幸いお金は困らない程度にあるし、カレンには少し休養してもらうことにしよう。
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