DTガール!

Kasyta

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BACK TO THE ・・・・・・

00057話「空席」

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「行ってきます、カレンさん。」
「あぁ、気を付けてな。まだ崩れそうなとこもあるんだし、変なとこに近づくんじゃねーぞ。」

「分かってますよ。危ないところには近づいたりしません。」
「いや、前科のあるやつに言われてもな・・・・・・。」

「と、とにかく遅刻するんでもう行きますね!」

 カレンに見送られながら学生鞄を引っ掴んで、玄関の扉を開ける。
 朝の日差しを浴びつつ、俺は通いなれた通学路に足を踏み出した。

 魔物の襲撃があった日から一週間。学校も今日から再開だ。
 戦いの爪痕が残る街並みは、徐々に活気を取り戻し始めている。
 結果的に被害は小さくなかったが、襲撃の規模を考えれば損害はかなり抑え込めたはずだ・・・・・・と思いたい。
 街のあちこちで使い物にならなくなった建物の解体や修復作業に追われている住民たちを横目に、学校への道を進んで行く。

 あれだけの事件があったというのに、もう人々の顔には笑顔が灯っている。
 それも国から受け取った復興費の多さ故だろう。何せその半分でも多いと言える金額だ。
 この街の長は、王様の弱みでも握っているんだろうかと思えるほどに。
 まぁ、国が街に常駐させている防衛隊のゴタゴタは弱みと言えなくもないか。

 結局、この街の防衛隊の幹部はごっそり挿げ替えられることになったが、戦力は縮小したままという形に落ち着いた。
 そして縮小させた分は、今回活躍を見せたテルナ商会の私兵を増員させ、街に常駐させることで補われることとなった。
 どうしてそういう話になったのかは想像もしたくない。きっとドロドロとした思惑ややり取りがあったのだろう。
 すわ独立かという噂も立ったが、街の長を兼任するテルナ商会長が真っ先に否定する声明を出して沈静化させていたのは記憶に新しい。

「やば、時間ギリギリだ。」

 始業の鐘が鳴る前に教室へ滑り込む。

「お、おはよう、アリスちゃん。」
「おはよう、コレットちゃん。」

 先に来ていたコレットと挨拶を交わし席に着いた。
 いつもならこの時間でも騒がしい教室内だが、今はシンと静まり返っている。
 コレットもどことなくふさぎ込んでいるようだ。
 あんな事件があったし、仕方ないだろう。
 それに・・・・・・空席も目立つ。
 ほどなくしてキャサドラ先生が教室に入ってきて点呼を取りはじめた。

「ローレッド・ブラハリーさん。」
「・・・・・・。」

 俺の目の前にある彼女の席もまた空席だ。
 当然、返事は無い。
 あんな事件の後だ、たかだか一週間で立ち直れずに学校に来れないのも無理はないだろう。
 あるいは――

 今回の魔物の襲撃による死者数はかなり少ない。
 代わりに・・・・・・行方不明者数はまだ数え切れていない。
 遺体が見つからないのだ。
 損傷が激しく、身元不明となっているものも多いそうだ。

「アリューシャ・シュトーラさん。」
「はい。」

 短く、はっきりと返事を返した。
 その後も、何度も止まりながら点呼を終えるのだった。

*****

 終業の鐘が鳴り、普段通りの授業が終わった。
 普段通りの授業を行ったのは、早く生徒たちに日常に戻ってほしいという願いの表れなのだろう。
 とはいえ、いつもこれくらい静かに授業を受けてほしいものだ。この重苦しい空気はゴメンだが。

「コレットちゃん、今日は部活の日だよ。部室に行こう。」
「ぅ・・・・・・うん。」

 沈んだ表情のままのコレットの手を引いて、俺たちは部室へと向かう。
 やはりすれ違う生徒数は少なく、校内全体の空気も重苦しく感じる。
 それでも部室の中に入ってしまえばいつもと同じ人口密度だ。どこかホッとしてしまう。俺自身も少しまいってしまっていたようだ。
 いつも通り、棚から魔力測定器を取り出して机の上に置き、いつものように話しかける。

「それじゃあ、練習はじめようか。大会も近いしね。」
「た、大会・・・・・・?」

「忘れちゃったの? 王国大会。」
「・・・・・・ぁ。」

 そう、魔法道の大会まで一ヶ月を切ってしまっている。しかも魔物の襲撃のおかげで一週間も休校していたのだ。
 だがそれは結局一地方の出来事。王国大会を中止する理由にはならない。都市大会なら最悪中止もあっただろうけど・・・・・・終わった後で良かった。
 俺は問題無いが万全を期すためにもコレットにはもう少し練習してもらいたいところである。
 コレットの様子を見るに、休校中にも魔法道の練習をしていたということは無さそうだ。
 まぁ、あんなことがあった後だ。失念してしまっていても仕方ないだろう。
 それにこれまでだって頑張っていたんだし、少し長めの休養を取ったと思えば良い。

「私は大陸大会まで行くつもりだけど、コレットちゃんはどうしたい?」
「ゎ、わたしも・・・・・・行きたい。」

 決意を新たに、練習を始めたコレット。
 しかしその様子には鬼気迫るものがあった。

「”風”っ・・・・・・はぁ、はぁ・・・・・・。」
「そこまで、無理しすぎだよ、コレットちゃん。」

「ま、まだ・・・・・・だいじょうぶ。」
「じゃないよ。もう魔力すっからかんでしょ。ほら、これ飲んで。」

 これ以上はまた魔力暴走を引き起こしてしまうだろう。
 魔力回復薬を手渡し、強引に休ませる。

「そんなに無理して、どうしたの?」
「ゎ、わたしも、アリスちゃんと戦えるように・・・・・・一緒に。」

「いやー、私はほら、慣れてるから大丈夫っていうか――」

 言葉を言い終わらないうちにコレットが俺の袖をぎゅっと掴み、訴えかけるような目で見つめてくる。

「わ、分かったよ・・・・・・。じゃあ、今までよりも少し厳しくする、けど私の言うことはちゃんと聞いて。それで構わない?」
「ぅ・・・・・・うん!」

 この日からコレットの特訓はさらにハードなものとなった。
 どうせならこの大陸で・・・・・・はハードルが高すぎか。この国で一番の魔法使いくらいにはなってもらおうか。

 そして次の日も、そのまた次の日も、俺の前の席が埋まることは無かった。
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