DTガール!

Kasyta

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BACK TO THE ・・・・・・

三話「名前交換」

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「私は藤園縁(ふじそのゆかり)と申します。」
「ふじその、ゆかり・・・・・・。」

「私の名前がどうかいたしましたか、式神様?」
「い、いや、何でもないです。」

 日本人っぽい名前に感動してた、なんて言えるはずもない。
 特に性が先にきてるのがポイント高い。うむ。

「あぁ、そうだ。私の名前はアリューシャです。コンゴトモヨロシク。」
「よ、よろしくお願いします・・・・・・?」

 うーん、ジェネレーションギャップ。
 まぁ数百年後の時代なら当然と言えば当然か・・・・・・。
 むしろよく考えたら、数百年後の地球なんて異世界とそう変わらないのかも。なんか普通に河童いるし。

「わっ、何だ?」

 手のひらの契約の印がじんわりと温かくなり、ほのかに光りだした。

「名を教えて頂いたことで、契約の印の結びつきが更に強くなったようですな。」

 河童の解説になるほどと頷く。

「うああああ・・・・・・っ!」
「ど、どうしたの縁ちゃん!?」

 彼女がうずくまり押さえた手のひらからは、強い光が漏れ出している。
 どうやら俺と同じように契約の印に変化があったらしい。

「式神様とは妖力の差が大きく開いておりますからなぁ。」
「なるほど・・・・・・って放っておいて大丈夫なんですか!?」

「こればかりは儂らではどうにも出来かねませんのじゃ。」

 そうは言っても薄情過ぎやしないか?
 苦しむ巫女を見ても誰も慌てたりはしていないようだし・・・・・・。

「でも放っておくわけにはいかないよ! 大丈夫!?」
「っ・・・・・・大丈、夫・・・・・・ですっ。」

 どう見ても大丈夫じゃないだろ、しっかりしろ俺!
 とにかく診断だ。
 ・・・・・・・・・・・・どうやら、契約の印を通して逆流した俺の魔力が、彼女の体の中で暴れているらしい。
 多すぎる俺の魔力が原因のようだ。
 でもこれなら魔力暴走の時と似たやり方で治療できるかもしれない。
 魔力暴走の時とは逆に過剰な魔力を体の外へ逃がしてやり、魔力の流れを整えてやればいいのだ。

「よし、これで問題無い・・・・・・かな。」

 処置を終えると、体の痛みが引いたようで、縁の息がゆっくりと整っていく。

「ぁ、ありがとうございます、式神様。」
「まぁ、半分以上私の所為みたいなとこあるしね・・・・・・。」

「おぉ! 強大な妖力だけでなく、そのような繊細な扱い方まで出来るとは! さすがは式神様ですじゃ!」
「・・・・・・それはどうも。」

 賞賛する河童に生返事を返しながら縁を助け起こす。
 巫女服に隠れて分からなかったが、随分細くて軽い体だ。ちゃんと食べてるのか?

「も、もう平気です。」

 そう言いながら自らの足で立って見せるが、若干足元がおぼつかない。
 でもまぁそれを指摘するのも野暮か。倒れそうになったら触手を使って支えてやればいいだけの話だ。

「それで、私は今後どうすればいいんですか?」
「是非とも次の作戦に加わって頂きたくはあるのですが・・・・・・納得しない者も多いようで。その、式神様の御姿があまりにも御可愛らしく・・・・・・。」

 河童が膝をついている修験者たちの方へ顔を向けた。
 彼らの懐疑的な視線は俺に向いている。

「力を証明しろ、ということですね。」
「端的に言えばそういうことになりますじゃ。」

 冒険者ギルドの時とやることは変わらない、か。
 こういう時ばかりはこの体が不便だな。

「分かりました。」
「幸い、次の作戦までには一ヶ月以上も時間がありますじゃ。それまでにゆっくりと――」

「いえ、明日にでもやっちゃいましょう。あー・・・・・・皆さん倒れてますし、明後日くらいの方がいいかな? 体調が万全の時にやってもらわないと意味が無いですし。」

 こういうのは早いとこ一気に終わらせてしまうのが一番だ。
 此処での自由がある程度利くように、少し張り切ろう。

「そのように手配させておきますじゃ。」
「お願いします。」

「では、急ぎ式神様の部屋を用意させますじゃ。それと、食事はいかがなされますかな?」
「いただきます。」

「承知しましたじゃ。ではこちらへおいでなせぇ。」

 河童に案内されるがまま部屋を出る。
 外に面した廊下からは、立派な庭が一望できる。どうやらここは結構なお屋敷らしい。
 河童についていくと、一人の女性が前から歩いてきた。ふくよかで気の良さそうな表情のおばさんだ。

「おぉ、豊子さん。ちょうど良いところに。」
「ありゃ、河神様。どうしたんだべ?」

「こちらの御方に部屋と食事の用意を頼みますじゃ。」
「あんれまぁまぁまぁ! めんこい女子でねぇか! どうしたんだべ?」

「あ、新しい式神様じゃ・・・・・・。失礼せんようにな。」

 おばちゃんパワーには流石の河童もたじたじのようだ。

「分かっただ! 美味いもん作ってやっからなー、式神様!」

 河童の言葉が届いているのかいないのか、俺の頭をわしゃわしゃと撫でる豊子。

「・・・・・・うむ、客間の方にお通ししとるでな。」

 俺から目を逸らし、見て見ぬふりをする河童。それでいいのか。
 豊子は、見た目は田舎の素朴なおばちゃんと言った感じで、派手な食事は期待できそうにない。
 だがそういうのが食べたかったんだ、俺は。

「ではこちらでお待ちくださいじゃ、式神様。」

 客間に一人取り残され、ようやく落ち着ける時間が出来た。
 そっと障子を開けて外に出て縁側に腰を下ろして庭を眺める。

「・・・・・・やっぱ日本に帰って来たんだな、俺。」

 数百年後の日本だと聞かされても、どこか懐かしさを感じてしまう。
 まぁ、サイバーパンクな感じになってたわけじゃないしな。河童はいるけど。
 しばらく庭を眺めていると、お仕着せを纏った若い女性がこちらへ歩いてくる。

「お部屋の準備が整いました、式神様。こちらへどうぞ。」

 通されたのは十畳ほどもある、広めの部屋だった。
 ただ、小さなちゃぶ台に布団、箪笥と姿見しかないので殺風景に見えてしまう。

「必要なものが御座いましたらこちらでご用意致しますので、何なりとお声がけください。」

 あのおばちゃんとは違って、随分ちゃんとした女中さんだな・・・・・・と、思った束の間。

「キャーッ! 新しい式神様、ホントに可愛かったべー!」

 と、他の女中と騒ぐ声が聞こえてきた。
 まぁ、好意的に騒がれる分には問題無いか・・・・・・。
 しばらく部屋で待っているとドスドスと廊下を歩いてくる音が聞こえたような気がした。

「食事持ってきただよ、式神様ー!」

 豊子の声が障子の向こうから聞こえてくる。
 どうやら食事の用意が出来たようだ。
 お茶碗一杯の白米に味噌汁、漬物は鉄板として・・・・・・やはりここは定番の焼き魚か!?
 そんな妄想をしながら豊子を部屋に迎え入れる。

「おらの力作だ! たんとお食べな!」

 豊子が机の上にでん、と一枚皿を乗せた。・・・・・・一枚皿?
 一枚皿には、ハンバーグ、エビフライ、からあげなど子供が好きそうなものが少しずつ盛られており、真ん中に丸く盛られた赤いチキンライスには何か家紋みたいなのが描かれた旗が立てられていた。
 豊子がいそいそと俺の首にナプキンを巻き付け、ナイフとフォークを目の前に並べる。
 ・・・・・・お子様ランチやんけ!!
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