8 / 20
しゅわしゅわ、弾ける
1.
しおりを挟むギラギラとした日差しが照り付ける夏があっという間にやってきた。
この頃になると雨が降る日は格段に減り、僕たちが一緒の傘で下校する機会も格段に減った。
僕はそれがちょっと寂しく思えたけれど、周がどう思っているのかは分からなかった。
学校はのらりくらりと日程だけ長い定期テストを終えて、あと数日で夏休みに突入してしまう。
嬉しくない訳ではないけれど、今年の夏は周も僕もそれぞれの予定でいっぱいいっぱいになりそうだった。
特に周は部活、部活、また部活、と朝から晩まで部活三昧の夏を迎えそうだった。
バド部もそこそこ活動日はあったけれど強豪バレー部とは雲泥の差。時折の休養日を挟んであった。
「周はいつ休みがあるの?」
手元に配られた日程表を見ながら聞くと、周はスマホに送られてきた夏休みのスケジュールを見せてくれた。
わぉ、見事に休みがない。
連日、練習、練習の文字。夏は合宿もあるらしく8月頭には1週間ほどの遠征が組まれていた。
平日でも練習試合があるのは相手校もまた休みに入り対戦相手を求めているからだ。
「……ごめんな。」
周が小さな声で謝る。夏休みに入ったらあそこに行こう。プールや海にも行きたいな、なんて話していたからだろう。
折角の夏休み。きっと周だって楽しみにしていたのだ。
それが2人の休みが重なる事は全然なくて、全滅状態。
気持ちが凹んでもしょうがない。
「しょ、しょうがないよ。部活だもんね。バレー部はそれでなくても練習多いって話だったし、周が入部したことで先輩たちのやる気に火が付いたのかもよ。」
そう言って慰める。
今までの僕たちは、特に予定がなくてもお互いの家に遊びに行っては顔を合わせていたし、去年はそれに塾も重なってほとんど一緒にいる状態だった。
特別何かするわけでもなく、うだるような暑さの中、涼しい室内でダラダラと漫画を読んだり、話題になった映画をサブスクで見たり、塾からの課題をやっつけたりしていた。
それが今年は顔を合わせる時間も殆ど取れなそうだ。目の前で眉を下げて肩を落とす周の姿にそれ以上僕が何を言えるだろうか。
「あ、周と大礼、今日暇?テスト終わりだしみんなでカラオケにでも行こうと思ってるんだけど。」
駒瀬くんがそう言って僕たちを誘った。確かにテストが終わった解放感からクラスの雰囲気はどこか浮足だっていて、いつも以上のざわめきが広がっていた。
「なぁ行こうぜ。周も大礼もあんまりこういう誘いに乗らないだろう?」
「そうそう。周が行くなら女子も行くってやつ多そうだし。」
後ろから他のクラスメートが顔を出す。確かに僕はそう言った集まりが苦手だし、周は部活で忙しくて今まで参加できる時間がなかった。それが今日はお互い部活もないし、学校は早々に下校時間だ。
たまたま休みでたまたま予定もないなんて中々あるものではない。
そんなちょっとした奇跡の時間を僕は楽しみにしていて、本当はいつものように2人で過したいと思っていた。
それでも期待を込めた数人の視線を無碍には出来なくて内心の落ち込みを隠して頷こうとした時、
「悪いけど、俺たちパスな。今日は大礼の家に行くことになってんだ。」
被せ気味に周が言った。
勝手に予定が入っていたらしい。内心の驚きを隠しつつぎこちなく頷く。
「う、うん。ごめん。今日はウチで親と妹が待ってるんだ。」
「あ~、2人って幼馴染みだっけ。親同士も仲良いの?」
「まぁまぁかな。昔はどっちが自分の家か分からないぐらい入り浸ってたけど。」
咄嗟に周の話に合わせた。僕の話にみんなは何故か羨ましそうな眼をした。きっと脳内では可愛らしい女の子が幼馴染みの妄想でも繰り広げられてるんだろう。
「ちぇっ、折角女子もいっぱい来るかと思ったのに。」
「お前ね、他力本願すぎ。」
「それはしゃーなし。周さまさまだって。」
わははは、と楽しそうに笑うみんなに気を悪くした様子はない。
「仕方ない、今度絶対参加しろよ。」
「そうそう、俺たちに幸せのおこぼれくれよ。」
じゃあな、と残念そうではあっても強引にはされない。駒瀬くんが、早く行けという仕草で手を振っていた。何かあっても彼ならフォローしてくれるだろう。
「うん、ごめん。また誘って。」
僕に向けられた期待値ではなかったけれど、他の誰かに捕まらない内に、と僕たちはそそくさと学校を出た。
3
あなたにおすすめの小説
学校一のイケメンとひとつ屋根の下
おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった!
学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……?
キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子
立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。
全年齢
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。
【完結】口遊むのはいつもブルージー 〜双子の兄に惚れている後輩から、弟の俺が迫られています〜
星寝むぎ
BL
お気に入りやハートを押してくださって本当にありがとうございます! 心から嬉しいです( ; ; )
――ただ幸せを願うことが美しい愛なら、これはみっともない恋だ――
“隠しごとありの年下イケメン攻め×双子の兄に劣等感を持つ年上受け”
音楽が好きで、SNSにひっそりと歌ってみた動画を投稿している桃輔。ある日、新入生から唐突な告白を受ける。学校説明会の時に一目惚れされたらしいが、出席した覚えはない。なるほど双子の兄のことか。人違いだと一蹴したが、その新入生・瀬名はめげずに毎日桃輔の元へやってくる。
イタズラ心で兄のことを隠した桃輔は、次第に瀬名と過ごす時間が楽しくなっていく――
隣に住む先輩の愛が重いです。
陽七 葵
BL
主人公である桐原 智(きりはら さとし)十八歳は、平凡でありながらも大学生活を謳歌しようと意気込んでいた。
しかし、入学して間もなく、智が住んでいるアパートの部屋が雨漏りで水浸しに……。修繕工事に約一ヶ月。その間は、部屋を使えないときた。
途方に暮れていた智に声をかけてきたのは、隣に住む大学の先輩。三笠 琥太郎(みかさ こたろう)二十歳だ。容姿端麗な琥太郎は、大学ではアイドル的存在。特技は料理。それはもう抜群に美味い。しかし、そんな琥太郎には欠点が!
まさかの片付け苦手男子だった。誘われた部屋の中はゴミ屋敷。部屋を提供する代わりに片付けを頼まれる。智は嫌々ながらも、貧乏大学生には他に選択肢はない。致し方なく了承することになった。
しかし、琥太郎の真の目的は“片付け”ではなかった。
そんなことも知らない智は、琥太郎の言動や行動に翻弄される日々を過ごすことに——。
隣人から始まる恋物語。どうぞ宜しくお願いします!!
路地裏の王子様と秘密のカフェ ―10年ぶりに再会した親友はトップアイドルでした―
たら昆布
BL
大学生の千秋がバイト帰りの路地裏で助けたのは、今をときめくアイドル『GALAXY』のセンター、レオだった。
以来、レオは変装して千秋の働くカフェへ毎日通い詰めるようになる。
「千秋に会うと疲れなんて全部消えちゃうんだ」
トップアイドルとは思えないほど素直に懐いてくるレオに、千秋は戸惑いながらも多忙な彼を支えたいと願うようになる。
しかし、千秋はまだ知らない。
レオが10年前に「また絶対会おう」と約束して別れた泣き虫な親友の玲央本人だということに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる