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しゅわしゅわ、弾ける
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しおりを挟む「で、大礼の家、行ってもいいか?」
「今それ言うの。」
校門を出て周から聞かれる。ははっ、と思わず笑ってしまった。まずは先に確認じゃん、と思ったけれどどうせ「いいよ」という答えしかないのはお互い分かっていた。
「もちろん、いいよ。それに母さんと妹が周に会いたがってたのは本当なんだ。」
「お、俺も透子ちゃんに会いたいと思ってたんだ。でもまだ小学校は休みじゃないよな。」
「早帰り?ってらしいよ。給食も昨日で終わりだったんだって。だから母さんが今日は家にいる。」
僕の家は妹がまだ小さいので母は夏休みの間は家で仕事をする日を設けているようだった。夏休み前の微妙な時期も調整は必要みたいで、社会人ともなると大変だと他人事のように思っていた。
去年まで僕も妹の面倒を見るため留守番を頼まれることもあってそういう時は周が僕の家に来て一緒に妹の相手をしてくれる事も多かった。
「それにしても暑いな。もう夏日通り越して灼熱日じゃん。」
「初めて聞いたけど、灼熱日。でも同感。」
じりじりと肌を刺す日差しに思わず手で日陰を作る。その広さは猫の額にも届かない。細く長い道の向こうでは陽炎が立ち、ゆらゆらと地面を揺らした。
「あちー。」
額に滲む汗が頬を伝う。
僕よりも何倍も汗っかきな周はフェイスタオルを鞄から出して汗を拭う。部活で使うから、と周の鞄にはいつもタオルが入っていた。
「ほら、大礼も汗かいてる。」
不意に触れた柔らかい質感が僕の額から汗を吸い取っていった。自分ではゴシゴシと無造作に拭くせに押し当てるように優しく俺の顔に触れていた。
タオルからは優しい花のような匂いがした。うちの柔軟剤と違うな、なんてぼんやりと思った。
「気持ちい?」
「うん。」
目を細めた周が見えて、何だか気恥ずかしい。
「あっ、ねぇ暑いしアイス食べようよ。」
「じゃぁコンビニ寄っていくか。」
すぐ近くにあったコンビニに飛び込むと、空調の効いた店内に汗がスゥーっと引いて行った。
僕の赤くなった頬も同じように引いてくれたらいいんだけど。
「俺、これにするわ。大礼は?」
「あ、僕も同じのが良い。美味しいよね。」
夏の暑い日は濃厚なソフトクリームよりもガリガリと噛み砕いて食べるようなアイスが好きだ。キーンと頭のてっぺんが冷えて痛くなるぐらいキンキンに固い氷菓が好ましい。
僕たちは同じサイダー味の棒アイスを手に取ってコンビニを出ると、歩きながら急いでかぶりつく。
外気はさっきまでの居心地の良い空気とは違って熱風が身体に纏わりつくようだった。
食べてる端からぽたぽたとアイスは溶けだしてきて、棒を伝って手元を濡らす。
「早くっ、早く食べろって。」
「え~無理っ。頑張って食べてるって。」
僕よりも一口の大きな周はあと少しで食べ終わりそうで、溶けたアイスの影響もそれほど無さそう。
対して僕はシャクシャク、ガリガリに中々手こずって思ったよりも減っていかない。どんどん溶けていくアイスは少なくなっていくに従って棒から離れたがってしょうがない。
「あっ、あっ、落ちるって。」
僕より焦った周が徐に僕の手を取ってガブリと残りのアイスを口に入れた。
「わっ。」
掴まれた手首が思ったよりも熱くて驚く。伝っていった液体でベタベタになった僕の手と周の手が重なって思わずその手を凝視する。
「うわっ、べっとべと。」
そのまま周が自分の手を舐めて、ほんの少し舌先が僕の手も掠めた。
意図せずビクンッと身体が震えて周は慌てて手を離した。
「これ、何処かで手を洗わないとダメだな。このままじゃ気持ち悪くて。」
周は焦ったようにそう言って周囲を見回す。僕は口に残ったしゅわしゅわとした食感が胸の中でも同じように弾けてしまったかのようで落ち着かなかった。
家に向かう道には、雨は降っていなくとも日傘という花が所かしこに咲いていた――――。
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