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弾けて、苦い
1.
しおりを挟む今日も朝から暑い。周は体育館の空調整備で午後からの練習となり、その空いた時間に僕に会いに来ていた。
因みにバド部は今日の部活は休みだ。同じ体育館を使用しているとは思えないけれど。
久しぶりに見る周は真っ黒に日焼けしていて室内競技のはずなのにどうして?と疑問が口に吐く。
「ああ、毎日ランニングしてるからな。」
心なしか逞しくなった腕を僕に見せながらそう笑う。
夏休みはやっぱり僕と周の生活は全く混じり合わず、今日会ったのも10日ぶりだ。
前回会ったのだって体育館で同じ時間に部活があって、入口でたまたま会って「よう」なんて挨拶しただけだった。
雨は時折降っていたけれど、それは夏の空にありがちな急な天気の崩ればかりで一時降るとすぐにカラリと晴れる。部活終わりの時間も合わず、僕たち2人で傘を差す事はなかった。
「わざわざありがとう。」
周は田舎のおばあちゃんが送ってくれたというスイカを丸々一個持ってきてくれた。その大きさに驚いたけれど、周の家にはまだこのサイズが3つあるらしい。どうやって消費するか悩み中だって。
「今年はスイカなんだ。去年はきゅうりとかナスとか夏野菜だったよね、おばあちゃんが送ってくれたの。」
「いや、今年も野菜は送ってきてる。そっちはそんな量なかったんだけどスイカだけは無理。これ4つとか、家でも困っててさ。大礼の家におすそ分け。悪いな。」
「え~全然。透子も僕もスイカ好きだし。」
「助かる。」
スイカを受け取りながら、周の微笑みにドキドキする。
見ない間に周はまた背が伸びたみたいだ。
「ねぇ、周ってまた身長伸びた?夏休み前より目線が合わない。」
「ん?測ってないしなぁ、分かんない。あ、そうだ。大礼、こっち、こっち来い。」
そう言って、周は僕の手を引いて横に立たせる。普段よりも近い距離に腕が触れた。流石バレー部のアタッカーなだけあって腕周りが僕の倍ぐらいありそうだ。
「あ、やっぱり伸びたかも。」
頭上から周の嬉しそうな声がする。上目遣いに見上げると
「ほら、この前と違うだろ。大礼と距離が違う。」
「距離?」
「そ、距離。」
僕から見る周と周からみる僕。お互いが知っている角度。
「あ、ほんとだ。違うね。」
それは僕にも気付く違和感。いつもはピタリと嵌る視線が今日は何故か数ミリ違う。
いや、数ミリって言うのは当てずっぽうだけれど。
普段、僕が最初に見るのは周の鼻のライン。唇は何だか恥ずかしくて、目が合うのもドキドキする事が多いから。だからいつもスラリと伸びる鼻筋を見つめる。
今日は上唇がチラリと視界に入って形の良い周の唇にドキドキした。
「どうした?」
そんな数ミリの違いが可笑しいぐらい僕に周を意識させる。あれ、周ってこんな格好良かったっけ。
「な、何でもないよ。そ、それよりこれから部活だよね。毎日大変だね。」
「本当それ。練習ばっかりで全然大礼と遊べないもんなぁ。」
「ここまでって思ってなかった僕も甘かったんだけどね。」
「それでもバド部は休み適度に入ってるじゃんか。こっちは部内で試合もバンバンやるし、練習試合も隙間なく組まれててさ。弱肉強食って感じだよ。」
「ふぇ~、やっぱり強豪校だね。練習もハードだし。」
僕とは根本的な体力が違う周だから出来るんだろうけど。
数ミリ高くなった周を見ながらそう思う。
3
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