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弾けて、苦い
2.
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それから周は僕の部屋で読みかけだった漫画を読んだり、会えなかった間に何をしていたのか話したり…うん、特にコレといって特別な事はしないで過ごした。昼近くなって僕がチャーハンを作ってあげて一緒に食べた。僕の料理のレパートリーはそれ程多くない。
何か飲み物ないのか、と言われて冷蔵庫にあったジンジャエールを出した。今思えば単純に麦茶で良かったのかもしれない。チャーハンにジンジャエールは合わなかった。
周がじゃぁ、と腰を上げたのは午後1時をちょっと過ぎた位で、そのまま学校へ行くらしい。
「え、もう。」
思わず口から出る。だってまだ会って3時間位しか経ってない。まだたった3時間。
久しぶりに会えたのに3時間。それはいくらなんでも少なすぎる。僕は思わず周のジャージの裾を掴んだまま動きを止めた。
視線が下がって、周が僕の手を見る。ぎゅっと握られたジャージに周は苦笑いを零した。
「あ、そうだ。大礼来週の夏祭り行くだろ?」
気を取りなすように周がそう言って、やんわりと僕の手を服から外してくれた。強張った手も優しい周の手にかかればあっという間に言う事を聞く。
「え、周行けるの?」
近所の神社で毎年開催される夏祭りはここいらでは比較的規模の大きなものだった。
僕と周は毎年一緒に見て回る。特に約束してなくても夏祭りは一緒だ。
でも今年はきっと一緒には行けないと半ば諦めていた。連日の周のスケジュールを見れば夏祭りを一緒に行く余白がないのは分かる。だから周の言葉に驚いて、そして期待してしまう。
「その日、練習試合で朝早くから出かけるんだ。多分そこまで遅くならない内に解散になると思う。夏祭り、昼間は行けないけど夜なら一緒に行けるはず。」
だから、機嫌直して?
なんて優しく諭される。
同じ歳なのに、周は僕の機嫌の取り方を良く分かってる。周がニッコリ微笑んでくれれば僕は大抵の事を許してしまうし、我慢してしまうんだ。
「…………ん。分かった。楽しみにしてる。」
「良かった。」
そうして頭なんて撫でられたら僕はもうイチコロだ。
周から離れがたくて、大通りまで見送りに出る。外はやっぱり灼熱地獄で、僕はこの夏初購入した日傘を差して周と歩く。
周も日傘は初めてだと言って「あるとないとじゃ大違いだな」と日傘が作る日陰の威力に感心していた。
まぁ、それでも暑いものは暑いんだけど。
「これ、一応雨天兼用なんだって。雨の時も大丈夫だね。」
「便利なもんだな。じゃ、女が持ってる日傘も大抵は兼用なのか。」
「多分ね。」
ぎゅっと柄を持つ。
「女子は日焼けに敏感だもん。みんな持ってるでしょ。」
「あ~そうだな。マネージャーも持ってた。」
「そ…か。」
もう少し、あと少し、とここまで来たけれど、流石にもう戻らないと。友達の家に遊びに行った透子が帰ってきてしまう。
「サンキュ。ここまででいいって。」
「周、これ持っていく?僕はもう家に帰るだけだし、学校までまだ距離あるでしょ。」
そう言って日傘を差し出した。お願いだから、と押し付けたいぐらいなのに顔には決して出さない。
それぐらいのプライド、持たせてよ。
「僕は学校へ行かないし、もし夕立にあったら困るでしょ。」
「いや、俺、雨に降られないし。」
周は根拠のない自信を基に受け取ることをしない。
「あ、でも誰かが傘持ってたりするかも?日傘の雨天兼用タイプなら持ってる子も多そう。」
ああ、言っちゃった。言いたくなかったのに。
周がどうしようと僕が口を出すものじゃないのに。
「変な事いうなぁ。俺、大礼と一緒じゃないと傘には入らないって言っただろう?」
「そ、そう……。」
隣を歩く周は嘘をついてるようにも見えなくて、何とも言えない胸のモヤモヤが生まれる。
ちょっと昼食のチャーハンを食べすぎたのだろうか。
「大礼、本当にここまでで。早く戻らないと透子が帰ってくるんだろ?」
「あっ、そうだった。」
じゃ、行ってきます。
行ってらっしゃい。
新婚さんさながらの挨拶をする。僕は軽く手を振って去っていく周の姿を見ながら、顔から笑みを消した。そうして、小さく小さく呟く。誰にも聞こえないように―――。
「…‥‥うそつき…‥。」
昼間飲んだジンジャエールの苦さがずっと胸の中で弾けているようで。
僕の心が苦さで痛んだ。
何か飲み物ないのか、と言われて冷蔵庫にあったジンジャエールを出した。今思えば単純に麦茶で良かったのかもしれない。チャーハンにジンジャエールは合わなかった。
周がじゃぁ、と腰を上げたのは午後1時をちょっと過ぎた位で、そのまま学校へ行くらしい。
「え、もう。」
思わず口から出る。だってまだ会って3時間位しか経ってない。まだたった3時間。
久しぶりに会えたのに3時間。それはいくらなんでも少なすぎる。僕は思わず周のジャージの裾を掴んだまま動きを止めた。
視線が下がって、周が僕の手を見る。ぎゅっと握られたジャージに周は苦笑いを零した。
「あ、そうだ。大礼来週の夏祭り行くだろ?」
気を取りなすように周がそう言って、やんわりと僕の手を服から外してくれた。強張った手も優しい周の手にかかればあっという間に言う事を聞く。
「え、周行けるの?」
近所の神社で毎年開催される夏祭りはここいらでは比較的規模の大きなものだった。
僕と周は毎年一緒に見て回る。特に約束してなくても夏祭りは一緒だ。
でも今年はきっと一緒には行けないと半ば諦めていた。連日の周のスケジュールを見れば夏祭りを一緒に行く余白がないのは分かる。だから周の言葉に驚いて、そして期待してしまう。
「その日、練習試合で朝早くから出かけるんだ。多分そこまで遅くならない内に解散になると思う。夏祭り、昼間は行けないけど夜なら一緒に行けるはず。」
だから、機嫌直して?
なんて優しく諭される。
同じ歳なのに、周は僕の機嫌の取り方を良く分かってる。周がニッコリ微笑んでくれれば僕は大抵の事を許してしまうし、我慢してしまうんだ。
「…………ん。分かった。楽しみにしてる。」
「良かった。」
そうして頭なんて撫でられたら僕はもうイチコロだ。
周から離れがたくて、大通りまで見送りに出る。外はやっぱり灼熱地獄で、僕はこの夏初購入した日傘を差して周と歩く。
周も日傘は初めてだと言って「あるとないとじゃ大違いだな」と日傘が作る日陰の威力に感心していた。
まぁ、それでも暑いものは暑いんだけど。
「これ、一応雨天兼用なんだって。雨の時も大丈夫だね。」
「便利なもんだな。じゃ、女が持ってる日傘も大抵は兼用なのか。」
「多分ね。」
ぎゅっと柄を持つ。
「女子は日焼けに敏感だもん。みんな持ってるでしょ。」
「あ~そうだな。マネージャーも持ってた。」
「そ…か。」
もう少し、あと少し、とここまで来たけれど、流石にもう戻らないと。友達の家に遊びに行った透子が帰ってきてしまう。
「サンキュ。ここまででいいって。」
「周、これ持っていく?僕はもう家に帰るだけだし、学校までまだ距離あるでしょ。」
そう言って日傘を差し出した。お願いだから、と押し付けたいぐらいなのに顔には決して出さない。
それぐらいのプライド、持たせてよ。
「僕は学校へ行かないし、もし夕立にあったら困るでしょ。」
「いや、俺、雨に降られないし。」
周は根拠のない自信を基に受け取ることをしない。
「あ、でも誰かが傘持ってたりするかも?日傘の雨天兼用タイプなら持ってる子も多そう。」
ああ、言っちゃった。言いたくなかったのに。
周がどうしようと僕が口を出すものじゃないのに。
「変な事いうなぁ。俺、大礼と一緒じゃないと傘には入らないって言っただろう?」
「そ、そう……。」
隣を歩く周は嘘をついてるようにも見えなくて、何とも言えない胸のモヤモヤが生まれる。
ちょっと昼食のチャーハンを食べすぎたのだろうか。
「大礼、本当にここまでで。早く戻らないと透子が帰ってくるんだろ?」
「あっ、そうだった。」
じゃ、行ってきます。
行ってらっしゃい。
新婚さんさながらの挨拶をする。僕は軽く手を振って去っていく周の姿を見ながら、顔から笑みを消した。そうして、小さく小さく呟く。誰にも聞こえないように―――。
「…‥‥うそつき…‥。」
昼間飲んだジンジャエールの苦さがずっと胸の中で弾けているようで。
僕の心が苦さで痛んだ。
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