【完結】傘に隠れて秘密の話を

塚銛イオ

文字の大きさ
16 / 20
傘があるのに

1.

しおりを挟む


 土砂降りの荒天に早々に部活を辞めて帰宅するように、と校内放送が流れた。
 バド部の面々はいそいそと帰り支度を始めて、我先にと昇降口へ急ぐ。

 僕はそんな仲間から1人外れてゆっくりと歩を進めた。僕は周と一緒に帰っていたこともあって、一人遅れている事に注意を払われる事はなかった。


 土砂降りの雨の中、学校の置き傘を利用する生徒や、準備良く折り畳み傘を取り出す者でごった返す。ワイワイ賑わっていた昇降口はそれでもしばらくすると徐々に人が減っていった。

 僕は迷っていた。
 鞄の中にはいつものように入れてある折り畳み傘。
 このまま僕一人で帰るのが当然の事なのに、そうしてしまったらもう、僕と周の関係も本当に終わってしまうような気がしたから。
 それでもどうすればいいのか、決定的な判断が出来なくて僕は下駄箱の前をウロウロと歩き回った。


 その内、遠くの方からバタバタと大人数の足音が聞こえて、聞こえてくる話し声からバレー部の面々だと分かった。
 僕は咄嗟に物陰に隠れてしまった。僕の姿を誰にも見られたくなかったからだ。


「うわっ、すっげー雨。」
「あ、俺傘持ってる。」
「置き傘ゲット!まだあと2本あるぜ。」
「俺にも貸して。」

 どうやらみんな傘を持ってないらしい。普段なら雨の中飛び出していく人間が何人かいるのに、流石の大雨で無謀に出ていくやつはいなかった。
 そんな中、周の名前を呼ぶ声がする。

「周はどうする?傘はもうないから、俺のに入っていくか?」
「ばっか、周はいいんだよ聞かなくて。」
「え、何で?あ、ああ~そっか。周にはあの子がいるんだった。」
「そうそう。じゃ、またな。」
「いいなぁ、周。」
「仲良くなぁ。」


 あっという間に去っていったバレー部員の言葉に僕は動きが止まる。
 きっと彼女がここにやって来るんだ。
 待ち合わせをして、2人で並んで一緒に帰るんだ。

 分かっていたじゃないか。周はもう僕と一緒の傘には入らないって事を。

 グッと唇を噛みしめた。
 そうしないと泣いてしまいそうだった。

 パタパタと軽い足音がして、彼女が来たのが分かった。
 あ、本当に待ち合わせしてたんだ、と思ったら胸が苦しくなった。
 僕は一刻も早くこの場を去りたくてしょうがなかったけれど僕が帰るには周の目の前を通らなければならない。
 そんな勇気が持てなくて2人が出て行くまで息を潜めて隠れているしかない。


「あ、いたいた。周、今日こそ一緒に帰ろうよ。雨も酷いし、ね、入っていくでしょ?」

 彼女の声は静かになった昇降口では割と響いて、僕の下にも届いた。
 その反面、答えた周の声は低すぎて聞き取れなかった。

「え、だって凄い雨だよ。もう校舎に残っているのウチらぐらいだし。一緒に帰ろうよ。傘、私持ってるし。」


 何だかもうダメだった。
 これ以上聞いていられない。

 僕は今まで必死に見つからないように隠れていた事も忘れてわざと大きな音を立てて周たちの前を横切った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

学校一のイケメンとひとつ屋根の下

おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった! 学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……? キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子 立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。 全年齢

【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ
BL
【あらすじ】 高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。 二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。 そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。 青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。 けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――? ※本編完結済み。後日談連載中。

可愛いがすぎる

たかさき
BL
会長×会計(平凡)。

【完結】口遊むのはいつもブルージー 〜双子の兄に惚れている後輩から、弟の俺が迫られています〜

星寝むぎ
BL
お気に入りやハートを押してくださって本当にありがとうございます! 心から嬉しいです( ; ; ) ――ただ幸せを願うことが美しい愛なら、これはみっともない恋だ―― “隠しごとありの年下イケメン攻め×双子の兄に劣等感を持つ年上受け” 音楽が好きで、SNSにひっそりと歌ってみた動画を投稿している桃輔。ある日、新入生から唐突な告白を受ける。学校説明会の時に一目惚れされたらしいが、出席した覚えはない。なるほど双子の兄のことか。人違いだと一蹴したが、その新入生・瀬名はめげずに毎日桃輔の元へやってくる。 イタズラ心で兄のことを隠した桃輔は、次第に瀬名と過ごす時間が楽しくなっていく――

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

隣に住む先輩の愛が重いです。

陽七 葵
BL
 主人公である桐原 智(きりはら さとし)十八歳は、平凡でありながらも大学生活を謳歌しようと意気込んでいた。  しかし、入学して間もなく、智が住んでいるアパートの部屋が雨漏りで水浸しに……。修繕工事に約一ヶ月。その間は、部屋を使えないときた。  途方に暮れていた智に声をかけてきたのは、隣に住む大学の先輩。三笠 琥太郎(みかさ こたろう)二十歳だ。容姿端麗な琥太郎は、大学ではアイドル的存在。特技は料理。それはもう抜群に美味い。しかし、そんな琥太郎には欠点が!  まさかの片付け苦手男子だった。誘われた部屋の中はゴミ屋敷。部屋を提供する代わりに片付けを頼まれる。智は嫌々ながらも、貧乏大学生には他に選択肢はない。致し方なく了承することになった。  しかし、琥太郎の真の目的は“片付け”ではなかった。  そんなことも知らない智は、琥太郎の言動や行動に翻弄される日々を過ごすことに——。  隣人から始まる恋物語。どうぞ宜しくお願いします!!

路地裏の王子様と秘密のカフェ ―10年ぶりに再会した親友はトップアイドルでした―

たら昆布
BL
大学生の千秋がバイト帰りの路地裏で助けたのは、今をときめくアイドル『GALAXY』のセンター、レオだった。 以来、レオは変装して千秋の働くカフェへ毎日通い詰めるようになる。 ​「千秋に会うと疲れなんて全部消えちゃうんだ」 トップアイドルとは思えないほど素直に懐いてくるレオに、千秋は戸惑いながらも多忙な彼を支えたいと願うようになる。 ​しかし、千秋はまだ知らない。 レオが10年前に「また絶対会おう」と約束して別れた泣き虫な親友の玲央本人だということに。

君はアルファじゃなくて《高校生、バスケ部の二人》

市川
BL
高校の入学式。いつも要領のいいα性のナオキは、整った容姿の男子生徒に意識を奪われた。恐らく彼もα性なのだろう。 男子も女子も熱い眼差しを彼に注いだり、自分たちにファンクラブができたりするけれど、彼の一番になりたい。 (旧タイトル『アルファのはずの彼は、オメガみたいな匂いがする』です。)全4話です。

処理中です...