【完結】傘に隠れて秘密の話を

塚銛イオ

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傘に隠れて小さなことを。

1.

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 あれから、僕たちの関係は元に戻った。
 少なくとも表面上は。

 以前のようにクラスで僕と周が一緒にいる姿が復活して、駒瀬くんがニヤニヤしつつ僕たちの輪に加わる。
 クラスメイトは何故か「わかっていた」と訳知り顔で頷いて、僕たちの姿を受け入れた。

 駒瀬くんが言うには、「みんな安心したんだろう。」とのことだった。
 何が安心なのかよく分からないけれど、周の隣に僕がいる事を当然と思ってくれるなら良かったな、と思う。


 僕とヨリ?を戻した事で、周がマネージャーと付き合っているという噂はなくなった。部活でも2人きりになる事はなく、以前のような距離感で話すことは無くなったという。

 やっぱりそうだよね、あの距離っておかしいと思ったんだ。

 なんて心の中では思ったけれど、あの日の目を赤くしたまま去っていった彼女の顔を覚えているから僕がこれ以上何かを言うつもりはなかった。


「大礼、お待たせ。」

 今日は久しぶりにシトシトと降る霧雨のような淡い雨が降っている。
 先に部活が終わったので、僕は昇降口で周を待っていた。
 周を待っている姿は以前と違って何故かバレー部の人達には認知されていて、僕は待っている間に何度も

「大礼くんお疲れさま~。周ならもう少しだから。」
 とか、
「大礼くん、ちょっと周にアタックで俺ばっかり狙わないでって言っておいてよ。」
 とか、
「大礼くん、お腹空いちゃった、何か持ってない?」
 とか色々声を掛けられるようになった。

 周はそれに対して無視していい、とか言うけど、流石にそんな事出来ない。
 周の事を伝えてくれた人には「ありがとうございます」と挨拶するし、周に対するお願いもちゃんと伝えるようにしている。
 お腹が空いた人はたくさんいたけど僕のお小遣い事情も正直厳しいので、たまにアメを一袋持ち込んであげるようにしている。もちろん、周には他に用意している物があるけれど。


 何時ものように僕を呼ぶ声がして、周の姿が見えた。
 僕は周に駆け寄って微笑む。

「お疲れさま。走って来なくてもいいのに。」

 そう言うと、周はちょっとだけ眉を下げて見るからに凹む。

「心配だから。大礼は迷惑か?」

 耳がしゅん、と下がった大型犬みたいだ。僕はと言えば、やっぱりそんな周には弱くて慌ててブンブンと首を横に振る。

「迷惑なことなんてないよ。ただ部活終わりなのに元気だな、って思っただけ。僕なんて結構へとへとなのに。」
「大礼は体力あんまりないよな。瞬発力はある方だけど。」

 僕の返事に直ぐ復活した周はそんな風に言って僕の頭を撫でる。僕のひと言で機嫌が良くなる周が何だか可愛い。


「帰ろうか。周入る?」
「もちろん、決まってる。」

 当然とばかりに傘に入ってくる周。以前と変わらない姿が嬉しい。変わった事と言えば、僕は置き傘を一本用意するようになった。絶対に一緒の傘に入るのが決まっているならばお互いあまり濡れずに済む傘の方がいいな、と思ったからだ。

 周には不評で、「もっとピッタリくっつけばいいだろ。」と無茶な事を言っていた。流石に外でべったりくっつくのは勘弁してもらいたいし、恥ずかしい。公序良俗に反することは止めましょう。

 不満はあれど相合傘が復活したのは周にとっても嬉しい事で、最終的にはOKと言われた。俺サマである。


 こんな僕たちだったけど、まだお互いに肝心なひと言を伝えてはいなかった。
 恥ずかしい気持ちもあったし、言わなくても分かるよね、というズルい考えもあったからだ。でもそれは、初心な恋愛初心者が陥りがちな誤りだと最近になって気付いた。

 だって、やっぱり言葉にしないと今の関係はあやふやだ。
 きっと周も僕のことを好きでいてくれると思うけれど、言われてないから付き合ってないし恋人じゃないって方程式が成り立ちそうで怖い。
 また周の近くの女子に隣を取られてしまうかも知れないと思ったら僕の不安感は増した。

 ちゃんと伝えなきゃ、と思ったのは要さんとの会話を思い出したから。僕たちがギクシャクしていると親に聞いて電話をかけてきてくれたんだ。

 要さんにとって僕と周は二人で一つって認識だったんだって。傍にいるのが当然みたいな。兄弟の自分よりも結びつきが強くてちょっと嫉妬もしたけど、俺とは違う愛情で結びついているって気づいてからはスンナリその関係性を認められたって言ってた。
 それにね、取って置きを教えてくれたから、僕も勇気を出そうって思ったんだ。

『周、俺に言ったんだ。俺が家を出て行くときに。これで大礼は俺一人のものだって。俺、大礼にちょっかい出したことないのにな。』

 困った弟だよ、なんて笑って言う要の言葉に、周はずっと僕を思っていてくれたんだって気付いた。

 僕も、僕もだよ。
 自分じゃ分かって無かったけど、周がずっと好きだったんだって、今なら分かるよ。
 隣にいるのが当たり前で、気付くのが遅くなっただけなんだ。

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