「特等席の壁になるはずが、推しがグイグイくるので壁になりきれませんっ。」

塚銛イオ

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2話

特等席は僕の席 ①

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 レオナールはドラウゼン王国の第三王子だ。
 とはいえ、レオナールの母は側室だったため王位継承権は高くなく、ましてレオナール自身がそういった権力争いとは無縁な場所にいた。


 レオナールには三人の姉がいて、その内二人は他国の皇族に是非にと乞われて嫁いでいった。
 今王宮にいるのは次期国王と言われている長兄のエリオスと一番下の姉リオネッタだった。


 第二王子のレグナートは騎士団に配属されもう王宮には住んでいない。第一王子であるエリオスを軍事面から支えるつもりらしかった。兄弟間の仲は良く、権力争いは特に起こることはなかった。
 というのも、兄弟の中でこの国を守るのは一番下の弟、レオナールのためだという共通認識があったからだ。レオナールの幸せのために国を維持するつもりだった。


 小さな頃のレオナールはそれはもう天使のように可愛らしく、愛らしかった。
 側室から生まれた事など問題にならないぐらい兄姉みんながレオナールに夢中だった。


 悪意ある全ての物から守ってあげたいと思うのは親心ならぬ兄・姉心だ。それでも甘やかすばかりではいけないと注意すべき点は注意して育てたはずではあるが、いかんせんレオナールは可愛すぎた。


 その結果、天真爛漫な今のレオナールが出来上がった。成長しても以前と変わらぬ愛らしさは周囲を和ませたがやはり少々男らしさに欠ける部分があった。
 エリオスとレグナートはこのまま王宮にいればいい、ずっと自分たちの側にいればいいと考えていたようだが、それに否を唱えたのは姉リオネッタだった。


「このままではレオナールは厳しい世の中を生き抜いていけないわ。そうね、レオナールには誰か庇護者が必要よ。兄さまたちじゃない誰かが。」


 そう言ってレオナールの為にお婿さん探しを始める事にしたのだ。
 身分や容姿だけじゃなく、その性格まで全てお眼鏡に適う人物を見つけるのは困難に思えた。


 王族を降嫁させるほどの爵位ともなるとやはり身分は限られる事。
 あまり近い血の者では権力が集中する恐れもある事。
 レオナールと釣り合う年齢である事。
 そして、レオナールの天使のような愛らしさに匹敵する美貌である事、と全ての条件をクリアできる人物がこの国にいるとは思えなかった。


 しかしリオネッタには当てがあった。
 かつて王家と婚姻関係を結んだ名家の中にピッタリの人物がいると思い当たったのだ。
 それがロラン・ヴァルステッドだった。


 この国には珍しい黒髪に青い瞳。容姿は端麗でありながら浮名を流す事もない。
 レグナートが所属する騎士団に配属されてはいるが、それは近衛に取り上げて王宮勤めにしてしまえばいい。
 聞いた所によると頭も良いらしいので政務官や参事官に任命しても良い。


 善は急げとばかりにリオネッタはすぐにロラン本人へ手紙を書いた。
 しかし、それが悪かった。


 どこから漏れたのか。
 はたまたどう間違ったのか。
 リオネッタがロランへ求愛の手紙を送ったと誤情報が広まってしまったのだ。


 それにより、周囲は一気にロランをリオネッタの婚約者として祭り上げたのだった。
 本人たちの意図を確かめもせず。


 リオネッタは当初直ぐに撤回の令を出そうとしたが、よく考えるとこれはいい機会なのではないか、と思った。
 リオネッタは既に心に決めた人物がいて王や兄にはその人物との将来を伝えてあるのだ。
 なのでレオナール以外の家族がロランを婚約者として見ることはないと言えた。


 そこで、ロランがレオナールを任せるに値する人物かを見極めるとリオネッタが兄へ宣言する。


 レオナールを手放したくない兄2人ではあったが、血筋を残す責務を負う長男と、いつ命を落とすか分からない騎士団にいる次男には、自分たち以外でレオナールを庇護してくれる人物が確かに必要だと考えた。
 そこで、リオネッタの案に乗ることにした。リオネッタの厳しい目でロランを査定して欲しいと。



 かくしてロラン・ヴァルステッドはリオネッタの婚約者として周知される事になった。


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