3 / 8
2話
特等席は僕の席 ①
しおりを挟むレオナールはドラウゼン王国の第三王子だ。
とはいえ、レオナールの母は側室だったため王位継承権は高くなく、ましてレオナール自身がそういった権力争いとは無縁な場所にいた。
レオナールには三人の姉がいて、その内二人は他国の皇族に是非にと乞われて嫁いでいった。
今王宮にいるのは次期国王と言われている長兄のエリオスと一番下の姉リオネッタだった。
第二王子のレグナートは騎士団に配属されもう王宮には住んでいない。第一王子であるエリオスを軍事面から支えるつもりらしかった。兄弟間の仲は良く、権力争いは特に起こることはなかった。
というのも、兄弟の中でこの国を守るのは一番下の弟、レオナールのためだという共通認識があったからだ。レオナールの幸せのために国を維持するつもりだった。
小さな頃のレオナールはそれはもう天使のように可愛らしく、愛らしかった。
側室から生まれた事など問題にならないぐらい兄姉みんながレオナールに夢中だった。
悪意ある全ての物から守ってあげたいと思うのは親心ならぬ兄・姉心だ。それでも甘やかすばかりではいけないと注意すべき点は注意して育てたはずではあるが、いかんせんレオナールは可愛すぎた。
その結果、天真爛漫な今のレオナールが出来上がった。成長しても以前と変わらぬ愛らしさは周囲を和ませたがやはり少々男らしさに欠ける部分があった。
エリオスとレグナートはこのまま王宮にいればいい、ずっと自分たちの側にいればいいと考えていたようだが、それに否を唱えたのは姉リオネッタだった。
「このままではレオナールは厳しい世の中を生き抜いていけないわ。そうね、レオナールには誰か庇護者が必要よ。兄さまたちじゃない誰かが。」
そう言ってレオナールの為にお婿さん探しを始める事にしたのだ。
身分や容姿だけじゃなく、その性格まで全てお眼鏡に適う人物を見つけるのは困難に思えた。
王族を降嫁させるほどの爵位ともなるとやはり身分は限られる事。
あまり近い血の者では権力が集中する恐れもある事。
レオナールと釣り合う年齢である事。
そして、レオナールの天使のような愛らしさに匹敵する美貌である事、と全ての条件をクリアできる人物がこの国にいるとは思えなかった。
しかしリオネッタには当てがあった。
かつて王家と婚姻関係を結んだ名家の中にピッタリの人物がいると思い当たったのだ。
それがロラン・ヴァルステッドだった。
この国には珍しい黒髪に青い瞳。容姿は端麗でありながら浮名を流す事もない。
レグナートが所属する騎士団に配属されてはいるが、それは近衛に取り上げて王宮勤めにしてしまえばいい。
聞いた所によると頭も良いらしいので政務官や参事官に任命しても良い。
善は急げとばかりにリオネッタはすぐにロラン本人へ手紙を書いた。
しかし、それが悪かった。
どこから漏れたのか。
はたまたどう間違ったのか。
リオネッタがロランへ求愛の手紙を送ったと誤情報が広まってしまったのだ。
それにより、周囲は一気にロランをリオネッタの婚約者として祭り上げたのだった。
本人たちの意図を確かめもせず。
リオネッタは当初直ぐに撤回の令を出そうとしたが、よく考えるとこれはいい機会なのではないか、と思った。
リオネッタは既に心に決めた人物がいて王や兄にはその人物との将来を伝えてあるのだ。
なのでレオナール以外の家族がロランを婚約者として見ることはないと言えた。
そこで、ロランがレオナールを任せるに値する人物かを見極めるとリオネッタが兄へ宣言する。
レオナールを手放したくない兄2人ではあったが、血筋を残す責務を負う長男と、いつ命を落とすか分からない騎士団にいる次男には、自分たち以外でレオナールを庇護してくれる人物が確かに必要だと考えた。
そこで、リオネッタの案に乗ることにした。リオネッタの厳しい目でロランを査定して欲しいと。
かくしてロラン・ヴァルステッドはリオネッタの婚約者として周知される事になった。
10
あなたにおすすめの小説
僕はただの妖精だから執着しないで
ふわりんしず。
BL
BLゲームの世界に迷い込んだ桜
役割は…ストーリーにもあまり出てこないただの妖精。主人公、攻略対象者の恋をこっそり応援するはずが…気付いたら皆に執着されてました。
お願いそっとしてて下さい。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
多分短編予定
僕に双子の義兄が出来まして
サク
BL
この度、この僕に双子の義兄が出来ました。もう、嬉し過ぎて自慢しちゃうよ。でも、自慢しちゃうと、僕の日常が壊れてしまう気がするほど、その二人は人気者なんだよ。だから黙って置くのが、吉と見た。
そんなある日、僕は二人の秘密を知ってしまった。ん?知っているのを知られてしまった?が正しいかも。
ごめんよ。あの時、僕は焦っていたんだ。でもね。僕の秘密もね、共有して、だんだん仲良くなったんだよ。
…仲良くなったと、そう信じている。それから、僕の日常は楽しく、幸せな日々へと変わったんだ。そんな僕の話だよ。
え?内容紹介が内容紹介になってないって?気にしない、気にしない。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
愛され少年と嫌われ少年
透
BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。
顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。
元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。
【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】
※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。
片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。
はぴねこ
BL
高校生の頃、片想いの親友に告白した。
彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。
もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。
彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。
そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。
同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。
あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。
そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。
「俺もそろそろ恋愛したい」
親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。
不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
分厚いメガネ令息の非日常
餅粉
BL
「こいつは俺の女だ。手を出したらどうなるかわかるよな」
「シノ様……素敵!」
おかしい。おかしすぎる!恥ずかしくないのか?高位貴族が平民の女学生に俺の女ってしかもお前は婚約者いるだろうが!!
その女学生の周りにはお慕いしているであろう貴族数名が立っていた。
「ジュリーが一番素敵だよ」
「そうだよ!ジュリーが一番可愛いし美人だし素敵だよ!!」
「……うん。ジュリーの方が…素敵」
ほんと何この状況、怖い!怖いすぎるぞ!あと妙にキモい
「先輩、私もおかしいと思います」
「だよな!」
これは真面目に学生生活を送ろうとする俺の日常のお話
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる