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4話
そうは言っても人の気持ちって ①
しおりを挟むロランの悩みを聞き出したレオナールは自分の部屋に戻ると具体的にどんな方法があるのか考えていた。
そしてああでもない、こうでもない、と考えてこれは中々難しい問題だと気付いた。
なぜなら、ロランの普段の行動が傍目にはパーフェクトに見えていたからだ。
紳士的で理知的で、相手の立場も理解している行動をとっているように見えた。
レオナール自身、これまでほぼ毎日2人の姿を追っかけていたのだ。
相手に失礼を働く残念な姿を見ていたら、レオナールの中のロラン像は幻想みたいに割れて砕けていたとも思える。
「うーん、今さらマナーは必要ないし、かといってこのままじゃ相手の女性の気持ちが分からないままになっちゃうし……。どうしたらいいかなぁ。」
解答が出ない問題をうんうん唸りながら考える。
ロランの立ち居振る舞いの隙のなさはきっと小さな頃から学んだ教養の一つなんだろう。こうしたらこう、というパターン化したマニュアルにでも載っていそうな。
それはあまりに穿った見方ではあるかもしれないけれど、頭の良いロランならそういう法則らしきものを見つけ出して使っていく事が出来そうでもある。
でも、何だかそれじゃ味気ない。
レオナールはロランがもっと幸せな気持ちになれるといいのに、と思う。
自分がリオネッタとロランを見ると幸せな気持ちになるように、ロランもまた大切な人を見ると心が温かくなる、そんな気持ちを感じて欲しいと思うのだ。
「うーん、これが、って解決法が分からないけど、やっぱり直接会って話した方がいいよね。」
レオナールはロランと会う口実が出来た事を喜んだ。
自分がロランの力になれるかもしれないと思うだけで嬉しかったし、遠巻きに見るしかないロランを間近で見る機会に興奮もしていた。
一刻も早くロランに会いたいとは思ったけれど、ロランも忙しい身の上。会いたい旨だけ伝えてあとはロランに日時を指定してもらおうと思っていたら、早速明日と指定されてしまった。
明日はちょうどお休みだったらしい。
自分と会う事でリオネッタと会う時間が減ってしまってはいけない。
推しの2人がもっともっと仲睦まじくなるためにも自分の責任は重大だ、と気を引き締めるのだった。
*
「レオナール、これは?こんな風にしたらどう思う?」
「えっ、えっとっ、そ、それはっ。」
「ほら、早く。私にレオナールの気持ちを教えてくれ。」
「は、はぃぃ。」
どうしてこうなった、と顔を赤らめて口をパクパクさせるレオナールの姿がそこにあった。
ロランの手は優しくレオナールの手を包み込むように握られていて、いつもなら考えられない程近くに用意された椅子に座っていた。
隣に座っただけなのに、膝がくっつきそうだ。
「あ、あのっ、ロ、ロラン様、これは、その、ちょっと、近くないですか、ね。」
顔のほてりが治まらない。
触れられた手が伝えてくるロランの温かな体温にドキドキする。
それに、ほんの少し顔を上げただけでロランのブルーの瞳が優しくレオナールの事を見つめている。
(だから近いって!!)
もともとロランの顔立ちは整っているがこれほど間近で見る機会はそうはない。
ロランの青い瞳を縁取る睫毛の一本一本が目に入る。知性を感じるその眼差しに華を添えるような艶めかしさだ。
それにこの距離は恋人同士ぐらい親しくないと取らない距離で、レオナールは今までこれほど自分と密着して他人に触れられた経験などない。
テンパっても当然なのだ。
「レオナール?今どんな気持ちだい?」
そして、目をキラキラさせてレオナールからの返事を待つロランの姿に、レオナールはアルコールに酔った時のように頭をクラクラとさせた。
(確かに、確かに僕が提案しましたけどっ。でも、これじゃ何にも考えられませんっ!)
レオナールは数時間前の自分の口に蓋をして、何も話さないように注意したい気持ちにさせられた。
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