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あれ、なんかこの資料濡れてません?
しおりを挟む……よし、これで午前の会議資料は完璧」
時計の針は11時30分を回ったところだった。オフィスの一角で、佐藤結衣(さとう ゆい)は小さく息を吐き、デスクの上の書類を整えた。 実は、1時間ほど前から下腹部に微かな違和感はあった。しかし、集中力が途切れるのを嫌ったことと、あと少しで仕事が片付くという達成感への欲求が、彼女の判断を狂わせた。
(少し冷えたのかな……。でも、お昼休みまであと30分だし、今行くとキリが悪いし)
それが致命的なミスだった。 結衣が席を立とうとしたその瞬間、内臓の奥底から、これまでに経験したことのないような、鋭く、そして重い「波」が押し寄せてきた。
「……っ!?」
思わず椅子に座り直す。太ももを固く閉じ、背筋をピンと伸ばす。 それは突発的なものではなかった。蓄積され、無視され続けた限界値が、一気に決壊の声を上げたのだ。
(うそ……急に、なんで……っ!)
一度意識してしまうと、もう制御は効かない。膀胱がパンパンに膨らみ、一歩動くたびに内側から鋭い針で突かれるような刺激が走る。 結衣はデスクを支えに、震える脚で立ち上がった。顔面は紅潮し、額にはじわりと冷や汗が浮かぶ。
廊下に出ると、ひんやりとした空気が肌を刺す。それが逆に、溜まりきった熱い水分をいっそう暴れさせた。
「はぁ、っ……く、……っ」
画像1の状態。彼女は廊下で立ち止まらざるを得なかった。 左手でお腹を強めに押さえ、右手は落ち着かないように自身の脚の間、溢れ出そうとする場所を必死にガードする。タイトなスカートが、その不自然な動きを強調していた。
(あ、これ……動いたら出る。一歩でも、振動させたら……っ!)
視線の先にある女子トイレのドア。普段なら10秒もかからないその距離が、今の彼女には果てしなく遠い砂漠の道のりのように感じられた。
(お願い、誰も来ないで……。早く、早く行かなきゃ……っ!!)
一歩。 「……ひぅっ!?」 靴音が廊下に響くたび、膀胱の出口に凄まじい圧力がかかる。 キュッ、と括約筋をこれ以上ないほど締め上げる。 (だめ、考えちゃだめ、水の音なんて……水道の蛇口とか、雨の音とか……絶対、絶対に……!)
結衣は、一歩踏み出すごとに、自身の内で「何か」が今にも零れ落ちそうになる感覚と戦いながら、地獄のような廊下を歩み始めた。
あと一歩……あと一歩で、女子トイレのドアなのに……っ!)
結衣が震える指先をドアノブにかけようとしたその瞬間、背後から鋭い声が響いた。
「佐藤さん! ちょうどいいところに。悪いけど、今すぐ第3資料室の整理を手伝ってくれ」
上司の課長だった。結衣が返事をする間もなく、彼は手にした大量のファイルを彼女の腕に押し付ける。
「あ、あの、課長、私……今、どうしても……っ!」 「急ぎなんだ。午後の役員会議で使う。頼んだぞ」
有無を言わさない口調。そのまま課長は、結衣を連れて人気のない資料室へと足を踏み入れた。 資料室は冷房が効きすぎており、重苦しい静寂が支配している。カチリ、とドアが閉まる音が、結衣には監獄の門が閉ざされた音のように聞こえた。
「……っ……ぅ、……っ!!」
画像2の状態。課長が棚の奥へ資料を探しに行った隙に、結衣はその場に膝をついた。 重たいファイルを抱えたことで、下腹部にかかる圧力は倍増している。
(うそ、なんで今……こんなところで……っ!) (はやく……終わらせて、早く……! 出して……っ!)
床に膝をつくと、太ももの付け根に強い圧迫が加わる。それが、暴発寸前の膀胱をさらに苛めた。 お腹をぎゅっと抱え込み、顔を真っ赤にして、彼女は喉の奥で掠れた悲鳴を飲み込む。
(あああ、波が、また大きな波が来ちゃう……っ!) (だめ、考えちゃだめ、……水の音なんて……っ!)
「佐藤さん、その棚の上の箱も下ろしてくれるか?」 奥から課長の声がする。
「……は、い……っ。すぐ、に……っ!」
返事をするだけで、括約筋の力が緩みそうになる。 結衣は、一歩も動けないほどの激痛に近い尿意を抱えたまま、この広すぎる資料室という「密室」で、孤独な戦いを強いられることになった。
「……じゃあ、整理が終わったら戻ってきてくれ。私は先に会議室へ行く。あ、ここはセキュリティの関係で外からしか開かないようになってるから、終わる頃に誰かに行かせよう」
課長はそう言い残し、結衣の返事も待たずに足早に去っていった。 重い金属音が響き、ドアが完全に閉まる。その瞬間、結衣の全身を、先ほどまでとは比較にならないほどの**「巨大な波」**が襲った。
「……っ!? あ、……ぁああ、……っ!!」
画像3の状態。結衣はついに、膝をついたまま両手で頭を抱え込んだ。 髪を乱し、顔を極限まで赤く染め、溢れ出そうとする熱い塊を必死に押し留めようとする。
(うそ……閉じ込められた? 今、この状態で……!?) (はやく……誰か、誰か開けて!! お願い、死んじゃう……ッ!!)
膀胱はもはや、限界を超えてパンパンに膨れ上がり、一秒ごとに激しい脈動を繰り返している。 資料室の静寂が、彼女の荒い呼吸音と、衣類が擦れる音を増幅させる。
(……しゅ……しゅぅぅ……っ……!!)
自身の内側から、括約筋の隙間を縫って「シュイー」という微かな漏出の予感が這い上がってくる。 結衣は必死に太ももを密着させ、ガーターベルトの締め付けさえもが刺激にならないよう、身体を丸めた。
(はやく、はやく、はやく!!) (うそ、もう、でちゃう……ッ!)
立ち上がろうとするが、お腹に力が入った瞬間に、今にも「シャー」と熱い噴水が放たれそうな感覚に襲われ、再び床に崩れ落ちる。
「……だめ……、だめっ……! 動けない、動いたら、絶対に出る……!」
結衣は這うようにしてドアの前まで辿り着き、冷たいドアノブに手を伸ばした。しかし、課長の言葉通り、内側からはびくともしない。
(……っ! まだ!? まだ開かないの!?) (誰か……誰でもいいから助けて、早く……っ!!)
ガチャガチャと虚しく響くドアノブの音。 その振動が、彼女の限界を、決定的に打ち砕こうとしていた。
資料室の中には、彼女の荒い吐息と、冷房の微かな稼働音しか聞こえない。 ドアは冷たく閉ざされたまま、一筋の光も、助けの手も差し込まない。
「……う、……ぅぅぅ……ッ!!」
結衣は床に膝をついたまま、上体を激しくのけぞらせた。 画像3の状態から、さらに極限の悶絶が続く。膀胱の膨らみはもはや、彼女自身の意思とは無関係に、独自の脈動を刻み始めている。
(……っ! 波が……また、さっきより大きいのが……っ!) (だめ、考えちゃだめ……っ! 落ち着いて、深呼吸して……っ!!)
しかし、呼吸をするためにお腹が動くだけで、膀胱の出口に「シュイー」という鋭い熱が走る。 それは、今にも決壊を知らせる水音が資料室に響き渡りそうな、極薄の均衡。
(はやく……誰か来て……。あと一秒、あと一秒も持たない……ッ!) (漏れる、漏れちゃう、……もう、本当に、やばい……!!)
「……っは、ぁ……っく……」
結衣は、自身の股間を強く、壊れそうなほど両手で押さえつけた。 指先から伝わる自分の熱量が、かえって排泄への衝動を煽る。 ストッキングと太ももの間には、じわりと冷や汗が流れ落ち、それが「漏れ出した」という錯覚を何度も与えて彼女を絶望させる。
(お願い、神様……。何でもするから。今、ここを開けて……!) (一滴も出したくないの……汚したくないの……っ!)
「ギュゥゥゥ……」
内臓が鳴るような、あるいは出口が悲鳴を上げているような音が、彼女の脳内に直接響く。 結衣の顔は、苦痛と羞恥でもはや熱に浮かされたように赤く、意識が朦朧としてくる。
(あと10秒……。10秒だけ数えたら、誰か来る……?) (10、9、8……なな、……っ……!!)
カウントダウンを完遂することすら許されない。 容赦なく押し寄せる第2、第3の波。 彼女は資料室の床を、その指先が白くなるほど強く、強く掻きむしり、獣のような掠れた声を漏らしながら、ひたすら耐え続けた。
「……あ、……ぁ、あぁ……っ!!」
結衣は、耳を劈くような自身の鼓動の合間に、その音を聞き逃さなかった。
コツ……コツ……コツ……。
廊下を歩く、確かな足音。 それはこちらへ近づき、資料室のドアのすぐ前で一度、速度を落としたように聞こえた。
(……っ! 助けて、ここよ! ここにいるの……ッ!) (はやく、はやく開けて!! もう出ちゃう、出ちゃうからぁ!!)
言葉にならない悲鳴を心の中で叫び、結衣は最後の力を振り絞って、ドアノブへ手を伸ばそうとした。希望という名の劇薬が、彼女の脳内に溢れ、限界だった括約筋の緊張をふっと緩めてしまう。
だが。
コツ……コツ……コツ……。
足音は、ドアの前を素通りしていった。 遠ざかっていく靴音。それは、彼女をこの地獄に置き去りにすることを告げる、無慈悲な死刑宣告だった。
「……うそ……、なんで……待って……お願い、行かないで……っ!!」
絶望。 精神的な支えが消失したその瞬間、肉体のダムが音を立てて崩れた。
「……ぁ、……しゅ、……っ……!!」
シュイー……。
結衣の悲鳴をかき消すように、熱い熱い「一筋」が、堰を切って溢れ出した。
(いや!! 動かないで!! 止まって……お願い、止まってぇ……っ!!)
必死に太ももを締め上げるが、一度通り道を見つけた熱い圧力は、もはや彼女の制御を嘲笑うかのように流れ続ける。 タイトなスカートの内側で、熱を帯びた液体がストッキングの繊維を容赦なく汚し、太ももを伝い落ちていく。
「ひ……ぅ、あ、……ぁぁ……っ……」
結衣は顔を床に押し付け、激しく身体を震わせた。 一滴、また一滴。 彼女が守ろうとしていた最後の境界線が、静かな資料室に響く「シュ……シュゥ……」という微かな湿った音と共に、無残に崩壊していく。
太ももを伝う液体の感触は、狂おしいほどに熱く、そしてあまりにも絶望的に鮮明だった。
「……ぁ……っ、……あ、あああああぁぁぁ……ッ!!」
もう、無理だった。 精神の糸がぷつりと切れると同時に、肉体を縛っていた最後の枷が、粉々に砕け散った。
一筋の漏出を必死に止めようとしていた括約筋が、溜まりきった凄まじい圧力に屈し、一気に跳ね飛ばされる。
「……っ……し、シャー…………ッ!!」
結衣の股間から、堰を切ったように熱い奔流が放たれた。 それはもはや「滴り」などという生温いものではない。パンパンに膨れ上がっていた膀胱が、その容積を無理やり減らそうと、暴力的なまでの勢いで中身を噴出させていく。
(……あ、……ぁ、……っ…………!!)
ストッキングの繊維が瞬時に熱い水分を吸い込み、限界を超えて溢れ出す。 タイトなスカートの裾から、白く細い太ももを伝い、勢いよく床へと滴り落ちていく。
シュイー、シャー……。
静寂に包まれた資料室に、彼女がもっとも恐れていた、けれど抗いようもなく甘美な「解放」の音が響き渡る。 床に膝をついた姿勢のまま、結衣は上体をのけぞらせ、視線を定まらぬまま虚空へと向けた。
「は……ぁ、……っく、……ふ、……ぅ……っ……」
熱い。あまりにも熱い。 自身の内側から溢れ出す液体の熱量が、冷え切った資料室の空気の中で、彼女の正気をじりじりと焼いていく。 放流の勢いは一向に衰えることを知らず、むしろこれまで耐えてきた反動のように、さらに力強く「ジュー……」という湿った音を立てて広がり続けた。
(……全部、出ちゃう……。私の、全部が……っ)
膝をついた床には、瞬く間に透明な水溜りが広がっていく。 高級なストッキングは無惨に濡れ透け、肌に張り付いて、彼女の失態を無慈悲に強調していた。
「……ぅ、……ああ……ぁ……っ……」
長い、あまりにも長い放流の時間。 膀胱を締め付けていた激痛が、ゆっくりと、けれど確実に、空虚なまでの解放感へと変わっていく。 その快楽に近い感覚が、彼女のプライドを完膚なきまでに叩き潰した。
やがて。 勢いよく響いていた音は「シュル、シュル……」と細いものに変わり、最後には「ポタ、ポタ」という弱々しい雫の音だけが残された。
資料室には、ただ彼女の荒い吐息と、床に広がった大きな染みだけが残っている。 結衣は力なく床に両手をつき、自身の失態を見つめながら、ただ呆然と涙をこぼした。
扉の向こうで、再び誰かの足音が近づいてくる。 だが、今の彼女には、その音を恐れる力さえ残っていなかった。
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