5 / 20
5.我ついに、キノコの山になる。
しおりを挟む
ガタッと音を立てて、私は思わず立ち上がってしまった。
口をパクパクさせている私を真剣に見つめるハンサムマッチョさん。いや、人事部の竹中さん。
よく聞き取れなかった……気がする。ネット将棋で日本一になれ?
そんなの無理に決まってるじゃん、私より断然強い『プロ棋士』っていう存在がゴロゴロいるんだよ?
「……? どうした、紀国」
「……うぇっ、は、はひ」
あまりの驚きに良く分からない言葉が出た。そんな様子を見たのか、なんと栗山部長が私に近づいてくるではないか。何この展開。
「いやぁ、私がキミをここへ推薦したんだよ。キミには将棋の才があると耳にしてね。特別に私が企画内容を考えてあげたんだが、不服かね?」
「ふっ、ふふふらんて……」
言葉にならなかった。
隣の机で、口元を抑えて必死に笑いを堪えている千春がいる。あぁもう最悪!
「いいか紀国! ユーザーネームを『キノコの山』にして、ネット将棋で日本一を取れ!」
「キッ!? そ、そんな……」
必死に抵抗するような、今にも泣き出しそうな顔をする私を見て、竹中さんがすかさずフォローする。
「栗山部長、『タケノコの里』の方が彼女の好みなのでは?」
なんだそのフォローは!?
「ふむ……まぁ好きな方の名前にすれば良い。ただ、個人的にはタケノコ派だからこそ、キミにはキノコ派を盛り上げてもらいたいのだよ。なぁに、ネット将棋は私も彼も心得ている。通常業務の量はキミだけ特別に少なくするから、毎日2時間は宣伝として将棋を指しなさい。不安があれば、いつでも私か彼に相談しなさい」
今この瞬間が一番不安なんですけど!!
そして、それだけを述べた栗山部長は満足そうに自身の席へと戻っていった。
「さて、俺もそろそろ行かなくてはならない。紀国、なるべく勝ち上がって、話題の広告塔になってくれよな」
あぁ、ハンサムマッチョ竹中さん。見事な香車の雀刺しを決めてくれたわね。
「あっはっはー! 頑張ってね、キノコの山ちゃん!」
「……もうそれでいいよ、私の名前……」
バシバシと叩かれた背中は、思った以上に痛かった。
口をパクパクさせている私を真剣に見つめるハンサムマッチョさん。いや、人事部の竹中さん。
よく聞き取れなかった……気がする。ネット将棋で日本一になれ?
そんなの無理に決まってるじゃん、私より断然強い『プロ棋士』っていう存在がゴロゴロいるんだよ?
「……? どうした、紀国」
「……うぇっ、は、はひ」
あまりの驚きに良く分からない言葉が出た。そんな様子を見たのか、なんと栗山部長が私に近づいてくるではないか。何この展開。
「いやぁ、私がキミをここへ推薦したんだよ。キミには将棋の才があると耳にしてね。特別に私が企画内容を考えてあげたんだが、不服かね?」
「ふっ、ふふふらんて……」
言葉にならなかった。
隣の机で、口元を抑えて必死に笑いを堪えている千春がいる。あぁもう最悪!
「いいか紀国! ユーザーネームを『キノコの山』にして、ネット将棋で日本一を取れ!」
「キッ!? そ、そんな……」
必死に抵抗するような、今にも泣き出しそうな顔をする私を見て、竹中さんがすかさずフォローする。
「栗山部長、『タケノコの里』の方が彼女の好みなのでは?」
なんだそのフォローは!?
「ふむ……まぁ好きな方の名前にすれば良い。ただ、個人的にはタケノコ派だからこそ、キミにはキノコ派を盛り上げてもらいたいのだよ。なぁに、ネット将棋は私も彼も心得ている。通常業務の量はキミだけ特別に少なくするから、毎日2時間は宣伝として将棋を指しなさい。不安があれば、いつでも私か彼に相談しなさい」
今この瞬間が一番不安なんですけど!!
そして、それだけを述べた栗山部長は満足そうに自身の席へと戻っていった。
「さて、俺もそろそろ行かなくてはならない。紀国、なるべく勝ち上がって、話題の広告塔になってくれよな」
あぁ、ハンサムマッチョ竹中さん。見事な香車の雀刺しを決めてくれたわね。
「あっはっはー! 頑張ってね、キノコの山ちゃん!」
「……もうそれでいいよ、私の名前……」
バシバシと叩かれた背中は、思った以上に痛かった。
0
あなたにおすすめの小説
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
雪の日に
藤谷 郁
恋愛
私には許嫁がいる。
親同士の約束で、生まれる前から決まっていた結婚相手。
大学卒業を控えた冬。
私は彼に会うため、雪の金沢へと旅立つ――
※作品の初出は2014年(平成26年)。鉄道・駅などの描写は当時のものです。
十年間虐げられたお針子令嬢、冷徹侯爵に狂おしいほど愛される。
er
恋愛
十年前に両親を亡くしたセレスティーナは、後見人の叔父に財産を奪われ、物置部屋で使用人同然の扱いを受けていた。義妹ミレイユのために毎日ドレスを縫わされる日々——でも彼女には『星霜の記憶』という、物の過去と未来を視る特別な力があった。隠されていた舞踏会の招待状を見つけて決死の潜入を果たすと、冷徹で美しいヴィルフォール侯爵と運命の再会! 義妹のドレスが破れて大恥、叔父も悪事を暴かれて追放されるはめに。失われた伝説の刺繍技術を復活させたセレスティーナは宮廷筆頭職人に抜擢され、「ずっと君を探していた」と侯爵に溺愛される——
フリーランスエンジニアの優しすぎる無償の愛
春咲さゆ
恋愛
26歳OLの木崎茉莉は人生のどん底にいた。上手くいかないことに慣れ、心を凍らせることで自分を守る毎日に絶望した茉莉は、雨の夜に思わず人生の終わりを願ってしまう。そんな茉莉に手を差し伸べたかっこいい彼。茉莉は、なぜか無償の愛のような優しさをくれる不思議な男性に少しずつ救われ、前を向いていく。けれど、疑ってしまうほど親切な彼には、親切であり続ける理由があって……。雨の夜の出会いがもたらした、優しくも切ない物語。
これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。
でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。
もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……?
表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。
全年齢作品です。
ベリーズカフェ公開日 2022/09/21
アルファポリス公開日 2025/06/19
作品の無断転載はご遠慮ください。
崖からポイ捨てされた不運令嬢ですが、銀髪イケメン竜王に『最愛の伴侶』としてスカウトされました!
有賀冬馬
恋愛
不作も天災も、全部わたしのせい!?
「不運な女」と虐げられ、生贄として崖から捨てられたわたし、ミラ。
でも、落ちた先で待っていたのは、まぶしいほど綺麗な銀髪の竜王・アルベルト様でした!
「君がいたから、この国は守られていたんだよ」
えっ、わたしって実はすごい聖女だったの!?
竜宮城で贅沢三昧&溺愛生活スタート!
そんな中、わたしを捨てて大ピンチになった元婚約者が「ミラ、戻ってきて!」と泣きついてきて……。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる