王手☆スイーツたっぷりオフィスラブ ~甘い恋愛なんて将棋しか取柄の無い根暗な私にはマジ無理な世界だよ~

御実ダン

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17.この広告、大成果である。

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 私と千春は興奮冷めやらぬまま、いつもの宣伝広告部へと戻った。

 すると部署内は大変なことになっていた。

「はい、はい! ですからその件につきましては、追って公表する形で――」

「ありがとうございます! えぇ――」

「今このお電話では詳しくお伝え出来ないのですが、はい――」

 なぬ? これはなぬ?

 状況の整理がつかず、理解が追いつかない私に、栗山部長が近づいてきた。
 そして大声で言われた。

「やったな紀国!!」

「ひえぇすいません!! すいません!!」

 ガシッと両肩を掴まれる。怖い、そして痛いです、部長ッ!!

「ランキング1位おめでとう。そして、よく話題の広告塔に成ってくれたな。いま社内の電話はどこも鳴りっぱなしだ。消費者、卸売業者、将棋関係者やそのファンからもだ」

 は?

「キミのおかげで我がMG社の株も上がるだろう。そして将棋連盟とのタイアップもだ。俺たちの宣伝広告部も大いに盛り上がっているぞ!」

 その声に合わせて、部署にいた皆が拍手を私に送ってくれた。
 それはもう大きな大きな拍手だった。

「う、部長ぉ……」

 私の泣き声なんて、そこの電話機のコール音よりも小さかっただろう。
 そのくらい、皆の拍手が鳴り止まず、続いていた。

 後ろから千春が抱きついてくれた。
 あぁ、靖さん、早く彼に報告したい。

 この感動を、伝えたい。

 すると、想いが伝わったのか、突然私のスマホに着信が入った。
 靖さんだ! スマホを手にしたまま――

「栗山部長、少し席を外しても宜しいでしょうか」

 服の袖でぐいっと涙を拭いながら私は言った。
 部長は気前よく「あぁ、行ってこい!」と、許可してくれた。

「……もしもし」

 通路に出て、静かな空間を求めて私は歩いた。
 いや、私の長い髪が大きく揺れているから、思わず走っちゃったのかな。

「安奈、おめでとう!」

「や、靖さん……ありがとう」

 彼の声はとても嬉しそうだった。私も嬉しくて堪らなかった。

「いま出先でな、要件が済んだからこれから会社に戻るところだ」

「……はい」

「あと5分くらいで到着すると思う、着いたらすぐキミのところへ――」


 ガシャアアアアアアアン!!!!!


 途轍もない衝撃音。

 何かがぶつかり、何かが割れた。


 ――彼の声が聴こえなくなった。

「……うそ……でしょ……」
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