ただ沈む

白子明太子

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第二章

水の檻

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「思羽ー。次なんやっけのー。」
「あー、数学やなかった?」
「うわぁ……」
    いつも通りだ。俺は思羽 空。高二。自称進学校に通ってる。数学は嫌い。親は公務員で普通に暮らしてきた。高一までは部活もしてたがメンタルが豆腐すぎて、退部届けを恐る恐る出したのが2ヶ月前の話だ。
「思羽ー。今日の新井の機嫌はどっちやと思う?」
 こいつは同じクラスの谷屋 真。俺に負けず劣らす学年底辺である。
「お前どうせ先生の機嫌が良かろうと悪かろうと課題終わってないんやろ。諦めてしばかれてこい。」
「お前もじゃろー」
「すまんが何か今日はやってきた」
「はぁ?裏切りもんが」
ドアが空く。
「お前ら座れ。始めるぞ」地獄の1時間だ。
   最近考えることがある。学校って水の檻みたいだと。自由に泳げない。息はしずらい。常に見られてる感覚がして気持ち悪い。周りの温度に合わせるしかない。だからと言って外に飛び出せるかと言われたら結局できない。ぬるま湯に使っておくのが楽だからだ。そうしてズルズル過ごしていく。息のしずらさに我慢すればそこそこ快適な環境だ。
「この問題の所、板書しろ。思羽。」あいあいさー。
 

 やっと一日が終わった。今日は気持ち長かったように感じる。
「思羽ー。今日暇ー?俺の彼女の誕生日が近いんやけどプレゼント一緒に選んでくれん?」爆発してしまえ。
「酷いなー?思羽ー?」 つい言葉に出てたか。
「あー、残念やけどお前らのイチャイチャの為に俺の人生削りたくない。」
 「酷いなー。いつもいつも。」 あー、スリランカとかに飛ばされねぇかな。こいつ。
「どこ?そこ?」「また、明日。」
帰って何しよ。最近ハマってるアプリゲーでもするか。寝るか。本でも読むか。
まぁ良い。帰って決めよう。
橋を渡ろうとしていた。何故か恐らく同じ学校であろう女子がいた。別にそれだけなら珍しくも何ともなかった。彼女が欄干の上に座って空を見上げてなければ。やべぇやつだと思った。当たり前だ。自分の運が尽き果てたことを呪いなが通り過ぎようとした。
彼女がこっちを見た。
「ねぇ、一緒にちょっと沈んでくんね?」
「は?」
これが彼女との最初の出会いだった。
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