神の手プロジェクト~新世界創造したつもりが奴に蝕まれていく~

くりくりさん

文字の大きさ
5 / 48
プロローグ

5 死んでも働かされるなんて冗談だろ?

しおりを挟む
 衝撃的な事実を知らされて、もう永眠したくなった。
 けれどもそれも許されず、根気よく話を続けるしか、この拷問から逃れる術がない。
 気分はもう、ここさえ乗り切れれば感動のゴールが待っている、と自分を鼓舞するマラソン選手か何かだ。

「……事情は納得できないけど、分かったことにしよう。
 それで? どっちにも行けなかったら、俺はどうすればいいんだ?」

「地球の他に私が創造した星がある。
 ジャンルだとファンタジーに分類される星で、タンガリアという名前だ。

 人間の他に猫耳、エルフ、ドワーフ——様々な人種が共存していて、剣あり魔法ありで魔物もいるから、血湧き肉躍る冒険もできると保障しよう。

 そこで勇者として転生させてやろう。生まれながらにありとあらゆる能力——チートは君の望むままに与える。
 どうだ? 魅力的な話だろ?」

 自信満々、絶対に飛びつくと思っている顔だ。
 
 異世界転生。
 真人も小中高とどっぷりRPGゲームにハマったから、魅惑的な提案だとは思う。
 厨二病でなくても、ファンタジー好きなら、一度は考えたことがあるだろう。
 もし自分がこの世界の住人だったらと。

 それがチートを与えられて、自分の思うままに世界を変えていけるというなら、いくら犠牲を払ってでもなりたいだろう。
 転生した後は、勝ち組になれるのは決定しているのだから。

 ただ、真人は現在二十五歳のサラリーマンだ。
 ゲームから離れて久しく、長時間労働やパワハラに疲れて、寝たい働きたくない以外の感情を失ってしまった。
 身内も早くに亡くし、身軽な天涯孤独だ。彼女はいたが、会える時間がなくて振られた。

 生きることに縛られる理由は何もない。
 生きてたから、とりあえず生きてみただけだ。
 今さら、転生して人生を謳歌するより、働かずに死んでいたい気持ちの方が凌駕していた。

「どこが? やっと死ねたのに、また生き返って仕事しなきゃいけないとか、拷問以上の苦痛だよ。

 天国にも地獄にも行かせられないって言うんなら、頼むから消滅させてくれ。
 それが一番の罪滅ぼしだ」

「…………」

 女神ルキナが沈黙する。
 自信満々に提示した条件を真人があっさり蹴ったから怒っているのだろうか。
 そう真人が思っていると、

「…………っふ。あはははははっ!」

 なぜか、突然女神ルキナが腹を抱えて笑い出した。

「君って奴は。なんて面白い奴なんだ!
 最近の地球はつまらん者ばかりで、いっそ巨大隕石でも衝突させてやろうかと思っていたが……。

 気に入った!
 私の力を貸してやるから、神になれ」

「はあっ?!」

 真人は自分の耳を疑った。

 (今こいつ、『神になれ』って言わなかったか?)

 消滅させて欲しいと言ったことに対しての答えとしては、赤点どころか0点だ。
 どこをどう受け取れば、真人を神にしてやろうという発想に行き着くのか。
 女神ルキナは電波すぎて、話の展開についていけない。

 だが、確認しない訳にはいかないだろう。
 主に自分の保身のために。

「すまない。耳がどうかしたみたいだ。
 今、俺に神になれって言わなかったか?」

「もちろん」

 (『もちろん』、じゃねぇぇぇぇぇっ!! )

 胸中で絶叫した真人は、速攻で女神ルキナの説得に乗り出した。

「いいか、よーく考えるんだ。
 人間ごときに神の力なんて貸し与えるもんじゃない。
 人間の欲望はそれはそれは恐ろしい物なんだぞ。

 それに、神の仕事なんて、一番多くて面倒に決まってんじゃねぇか!!」

 力み過ぎて、思わず心の声が漏れるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

処理中です...