神の手プロジェクト~新世界創造したつもりが奴に蝕まれていく~

くりくりさん

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第1章 新世界創造

10 そんなに変わらない日常

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 マナトは、夢も見ずに深い眠りについていた。

 ピピピピピピッ!

 頭の上で鳴り響く目覚ましにも気づかない。

 ピピピピピピッ!

 まるで死人のようにただ眠っている。

 ピピピピピピ——ガン!

「いい加減に起きないかー!!」

 朝からルキナの大声が響き渡った。

「んー…………。あぁ、ルキナか、おはよう」

 ルキナが叫んでも起きず、布団を剥がれ枕を引き抜かれ、最終的にベッドから床に落とされて、やっと起きたマナトは、そう挨拶した。

 元々マナトを起こせなかった時点で目覚ましの意味を成していなかった時計だが、それがバラバラに壊されている。
 馬鹿力か神の力だかを発揮して目覚まし時計を粉砕した当の本人は、鬼のような面相になっていた。

「君は、どれだけ寝れば気が済むんだ? 
 今日で丸二日目だぞ」

「へぇー、二日。
 後一日くらい寝させてもらえば、自己新記録だったのに」

「そういう問題じゃない!
 もう。君と話してると私まで調子を狂わされる。
 食事にしよう、着替えておいで」
 
 その後ろ姿を見送って、マナトは大きなあくびを一つした。

「ふあ~あ。だりぃ、さすがに寝すぎたかな。でも、神さまに食事って必要なのか?」

 そのとき、ぐぅと腹が鳴ったので、マナトは着替えついでに、三日間半くらい入っていなかった風呂も済ませてから部屋に戻った。

 食卓の上には、理想の朝食が並べられていた。
 湯気の立つ白米に味噌汁。焼き鮭と卵焼き。納豆、海苔。
 普段、食事より睡眠を優先して、朝食は抜くかコンビニでパンという生活を何年も送っていたマナトにとっては、何よりのご馳走だった。

「旨そう。これ全部ルキナが作ったのか?」

「料理は得意なんだ。遠慮なく食べてくれ」

 食卓には二人分用意されていて、先に椅子に座ったマナトと自分用のお茶を置くと、ルキナも向かい合って座った。

「いただきます」

 お箸を手に取り、まず口に運んだのはわかめとシメジのシンプルな味噌汁。
 ズズッとすすると、少し味薄めのマナト好みの味がした。
 眠気が去って、空腹に支配されたマナトは、一気に飲み干した。

「おいしい。ルキナはいいお嫁さんになるな」

「——ぶっ!! ゴホッゴホッ!! な、何を急に言い出す!
 君は私をからかって遊んでいるのか?!」

「……いや、普通に褒めただけなんだけど。
 そんな過剰に反応されたら、俺が逆に勘違いするぞ」

「~~っ!! いじわる!」

 顔を真っ赤にするルキナを笑って、他愛のない会話を楽しみながら朝食を食べ終えた。
 流し場で使い終わった食器を洗ってくれているルキナの背中を見ながら、マナトは今の状況について考える。

 自分が死んで神の力を得たとは信じがたい。
 未だに何か壮大なドッキリか何かではないかと思ってしまう。

 『天上世界』と呼ばれる、神が棲む空間にマナトはいるらしい。
 らしい、というのはマナトはその空間を直接見たわけではないからだ。
 マナトが『天上世界』に来た時は、すでにルキナの手によって、地球の自分の家になってしまっていた。
 神は他にもいるらしいが、交流は普段余りなく、それぞれ自分の空間(家?)に引きこもって出てこない。
 なので、ご近所さんに挨拶すらしていない。

 だから、死んだという事実を忘れそうになる。
 よく見れば、所々違うところがあるし、窓の外を見れば景色は同じでも人の気配が全くないのでそれと分かるが、ふとした瞬間どうしてもそう思わずにはいられない。

 いずれ時間が解決してくれるだろう。

 神の力については、謎に包まれている。
 今のところ出来るといったら、ゲームプログラマーのようなことだけだ。
 ルキナが、死んだマナトの魂に接触したり、この部屋を用意してくれたみたいに、他にも神の力の使い方はありそうだが、初歩の初歩すらマスター出来ていない自分が教えて欲しいというのは早すぎる気がした。

 (神の力がなくても困らないしな)

 せめて、新世界創造が軌道に乗るまで待とうと思った。
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