神の手プロジェクト~新世界創造したつもりが奴に蝕まれていく~

くりくりさん

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第1章 新世界創造

14 人間はいらない

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「……マナト、本気で言ってるのか?
 これで完成と言うことは、進化が著しく遅れるんだぞ?」

 マナトの言葉を聞いたルキナは、そう諭してきた。

 今まで右も左も分からないマナトに、根気よく手を貸し続けてくれたルキナに反論するのは辛かったが、もう決意は固まっていた。

「いいんだ。
 最終的に知的生命体がいないといけないって神のルールはないんだろ?」

「まぁ、そうだが……」

「だったら、俺の世界はこれでいい。これはこれで癒される」

 草原を茶色まだらの兎もどきが跳ね、海では一角獣のシャチが悠々と泳ぎ、空では巨大鳥が王者のように旋回している。
 長い時間をかけて進化させたとしても、その伸びしろはほとんどないだろう。

 まるで、ユーザーが減ってサービスが終了する間際のオンラインゲームのようだ。
 エンディングが不明のまま、中途半端に世界が終わろうとしている。

 じっと画面を覗いていたマナトの背中に、詰問口調でルキナが言った。

「マナト。君が創りたくないのは、本当に知的生命体?
 それとも——人間か?」

 その質問は、ルキナにしては珍しく核心を突いていた。
 すぐには返答できず、画面から目を離さないまま、彼女を責める。

「……だから、人の心を勝手に読むなって言ってるだろ」

「嘘だと思うかもしれないが、今回は読んでいない。
 もしかしたら、そう言うかもしれないと思っていたんだ。
 君は優しいから」

 マナトは弾かれたように、振り返ってルキナを見た。
 軽蔑しているだろうと思っていたのに、彼女は痛みをこらえるような顔をしていた。
 気持ちを汲もうとしてくれているのは嬉しかったが、そんな自己犠牲の精神から言った訳でないマナトには、余計に重荷に感じられた。

「俺が優しい? 自己中の間違いだろ。
 今まで人間に酷い目に遭わされてきたから、創ってやらないって言ってんだぞ。

 ルキナの創造物で人間の俺が、人間を憎んでるんだ。
 嫌なら……、今から消滅させてくれてもいい」

「自分を卑下するのはよせ。
 君は自分と同じ苦しみを、他人に味わって欲しくないと思ってるんだろ?
 その気持ちを否定するつもりはないよ」

「…………。女神っぽい台詞だな」

「ぽい、ではなくて女神だからな。
 今からでもいいぞ。
 さあ、存分に私を褒め讃えるがいい!」

「馬鹿言ってろ。……ありがとうな」

 ルキナの言うことは半分正解で半分間違いだ。マナトの中には、確かに人間に対する憎しみがあるのだから。

 でも、彼女がマナトを良いように言ってくれたことで、心に使えていた物がスッと消えていくのを感じた。

 女神らしい慈愛に満ちた笑顔を浮かべたルキナは、そうだと思い出した顔になった。

「そう言えば、まだ名前をつけてなかったな。
 完成したマナトの世界に名前をつけてやるといい」

「名前か……」

 突然言われても、すぐには浮かんでこない。
 やっぱり、一度きりのことだから、自分が気に入る名前にしたい。
 あれがいいかこれがいいか悩んでいると、

「マナト」

 名前を呼ばれた。

「私の役目もこれまでだ。
 明日からは君一人で頑張るといい」

「!」

 嫌だという否定を口にしそうになって、マナトは口をつぐむ。

 そうだ。最初からそう言う約束だった。
 彼女はマナトが新世界を創るのを手伝うために、毎日来てくれていたに過ぎない。
 世界が完成したら、彼女がマナトに会う理由はなくなる。

 やっとマナトの世話から解放されるのに、嫌だなんて無理を言ってルキナを引き止める権利は自分にはない。

 肯定するつもりが、口から出たのは全く別の言葉だった。

「折角だから、じっくり名前を考えたいんだ。
 明日まで待ってくれない?」

 ——せめてあと一日だけ、君を束縛してもいい?

 彼女の答えはYesだった。
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