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第1章 新世界創造
16 犯人をつきとめよう
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「…………誰だよ、こんな勝手なことした奴」
マナトは、長いこと茫然自失していた。
その間、口を挟まずに黙っていたルキナは、マナトがボソッと呟いた言葉に、ほっと息を漏らした。
「マナトでないのだとすれば、何かしらの痕跡が残っているはずだ。調べてみよう」
ルキナがそう言ってキーボードに触れると、いつもの画面が切り替わって、真っ暗になった。
電源が落ちたのかと思ったがそうではなく、ルキナの目にも留まらぬタイピングに反応して、数列が上から下へと流れていく。
「あった。…………これか?」
ルキナの言葉に反応したように、一つの単語が現れる。
それは——
「『guest』? お客さん、のことか?」
自分が知る中で『guest』の意味は、それしか思いつかなかった。
この世界の創造主であるマナトが招待していないのに、勝手に来るなんてことがあるだろうか。
疑問が顔に現れていたのだろう。
ルキナはパソコンを見つめたまま、首を横に振った。
「残念だが、その通りだ。
誰かが昨日の深夜三時に、このパソコンにアクセスしている。
その者が、書き換えを行ったと推測される」
(このパソコンって、オンラインだったのか?)
という疑問もあったが、マナトが気になったのは他のことだった。
「そんなにホイホイ、俺の世界に侵入できたりするものなのか?
言ってみればハッキングみたいなことだろ?」
ルキナは気まずそうにマナトを見上げた。
「すまない。セキュリティーに関しては、簡易な物しか展開していなかったんだ。
……その、他の神が興味を示すとは思ってなくて。
知識さえあれば、マナトの世界に入るのは難しくはない」
遠慮してルキナは言葉を濁したが、マナトはああと納得した。
つまりルキナは、無名の新人の神が創ったド下手な世界に、どの神が興味を持つのかと高を括っていたらしい。
責めるつもりは全くない。
自分でさえ、こだわりもなく創った世界なのだ。
ルキナがそう思っても仕方がないことだった。
ただ一点、知的生命体を存在させないこと以外は。
「……なあ、今からでも知的生命体を消すことは出来ないのか?」
「それは君自身が身をもって体験しているだろう?
一度生み出してしまった者を、この管理者モードで消す——殺すことはルール違反だ。
出来ることと言えば、隕石を落とすとか、より強い生命体を創って知的生命体を糧にする性質を与えて放り込むか、それくらいだな。
どちらも運任せで——恐らく全滅はさせられない。
それが嫌なら、他に新しい世界を創り出して、この世界を滅ぼすか、だ」
「…………」
それは嫌だった。
こだわりがないにしろ、処女作というのは特別な物だ。
初めて創ったこの世界を失いたくはない。
かといって、マナトが知的生命体を存在させるつもりがなかったという理由で、生まれてしまった彼らに苦難を与えるのも、どうかと思う。
部屋でパソコンで仕事を行っているとつい忘れがちになるが、ゲームではなく実物を伴った本物の世界なのだ。
ルキナが創った地球と同じで、マナトのように自分で物を考えて動き、少しぶつけただけで痛がる知的生命体がいるはずなのだ。
それを身勝手な理由で、卑劣な行為に及ぶことは、マナトには出来ない。
創り出されてしまった以上、仕方がないと諦めた。
だが、許せないこともある。
「ルキナ、その『guest』って奴、まだ俺の世界の中にいるのか?」
ルキナの指が答えを探るようにキーボードを踊る。
「——いる」
「じゃあ、今から簡単には破れないセキュリティーをかけてくれ」
「えっ? そんなことをすれば、『guest』が居座ったままになるぞ」
マナトは、初めて浮かべるだろう笑みを作った。
「それでいいんだ。——俺が直接殺しにいく」
怒りに満ちた、それは残忍な笑みだった。
マナトは、長いこと茫然自失していた。
その間、口を挟まずに黙っていたルキナは、マナトがボソッと呟いた言葉に、ほっと息を漏らした。
「マナトでないのだとすれば、何かしらの痕跡が残っているはずだ。調べてみよう」
ルキナがそう言ってキーボードに触れると、いつもの画面が切り替わって、真っ暗になった。
電源が落ちたのかと思ったがそうではなく、ルキナの目にも留まらぬタイピングに反応して、数列が上から下へと流れていく。
「あった。…………これか?」
ルキナの言葉に反応したように、一つの単語が現れる。
それは——
「『guest』? お客さん、のことか?」
自分が知る中で『guest』の意味は、それしか思いつかなかった。
この世界の創造主であるマナトが招待していないのに、勝手に来るなんてことがあるだろうか。
疑問が顔に現れていたのだろう。
ルキナはパソコンを見つめたまま、首を横に振った。
「残念だが、その通りだ。
誰かが昨日の深夜三時に、このパソコンにアクセスしている。
その者が、書き換えを行ったと推測される」
(このパソコンって、オンラインだったのか?)
という疑問もあったが、マナトが気になったのは他のことだった。
「そんなにホイホイ、俺の世界に侵入できたりするものなのか?
言ってみればハッキングみたいなことだろ?」
ルキナは気まずそうにマナトを見上げた。
「すまない。セキュリティーに関しては、簡易な物しか展開していなかったんだ。
……その、他の神が興味を示すとは思ってなくて。
知識さえあれば、マナトの世界に入るのは難しくはない」
遠慮してルキナは言葉を濁したが、マナトはああと納得した。
つまりルキナは、無名の新人の神が創ったド下手な世界に、どの神が興味を持つのかと高を括っていたらしい。
責めるつもりは全くない。
自分でさえ、こだわりもなく創った世界なのだ。
ルキナがそう思っても仕方がないことだった。
ただ一点、知的生命体を存在させないこと以外は。
「……なあ、今からでも知的生命体を消すことは出来ないのか?」
「それは君自身が身をもって体験しているだろう?
一度生み出してしまった者を、この管理者モードで消す——殺すことはルール違反だ。
出来ることと言えば、隕石を落とすとか、より強い生命体を創って知的生命体を糧にする性質を与えて放り込むか、それくらいだな。
どちらも運任せで——恐らく全滅はさせられない。
それが嫌なら、他に新しい世界を創り出して、この世界を滅ぼすか、だ」
「…………」
それは嫌だった。
こだわりがないにしろ、処女作というのは特別な物だ。
初めて創ったこの世界を失いたくはない。
かといって、マナトが知的生命体を存在させるつもりがなかったという理由で、生まれてしまった彼らに苦難を与えるのも、どうかと思う。
部屋でパソコンで仕事を行っているとつい忘れがちになるが、ゲームではなく実物を伴った本物の世界なのだ。
ルキナが創った地球と同じで、マナトのように自分で物を考えて動き、少しぶつけただけで痛がる知的生命体がいるはずなのだ。
それを身勝手な理由で、卑劣な行為に及ぶことは、マナトには出来ない。
創り出されてしまった以上、仕方がないと諦めた。
だが、許せないこともある。
「ルキナ、その『guest』って奴、まだ俺の世界の中にいるのか?」
ルキナの指が答えを探るようにキーボードを踊る。
「——いる」
「じゃあ、今から簡単には破れないセキュリティーをかけてくれ」
「えっ? そんなことをすれば、『guest』が居座ったままになるぞ」
マナトは、初めて浮かべるだろう笑みを作った。
「それでいいんだ。——俺が直接殺しにいく」
怒りに満ちた、それは残忍な笑みだった。
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