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第3章 ケットシー編
27 一宿一飯の恩義は伝説級
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家の主人を追い出すことに成功したマナトは、家探しをし始めた。
目的は金でも金品でもない。
けれど、ケットシー族にとっては重要な——
「あった」
多分、マシューの自室だろう。
棚に置かれていたそれを、マナトは手に取った。
半月の丸みを帯びるシルエット。
木と蔓で作られているそれは、弓だった。
「マシューが帰ってくる前に、さっさと片づけないとな」
泥棒ではないが、許可なく人の家の物を漁るのは、やはりやましい。
「これって、情報見れんのかな?」
今までできたのは、人や動物といった生きたものだけだった。
試したことがなかったことに気づき、マナトは手にした弓の情報を見たいと強く思ってみた。
__________________________
名前 :木の弓
Lv :3
攻撃力 :8
防御力 :0
命中率 :30
属性 :—
__________________________
「見れたけど……、武器の性能悪すぎだろ」
材料が木と蔓という時点で、あまり期待はしていなかったが、思った以上の数値の悪さだった。
つまり、マシューが狩りをするとき、ゲームでいうなら武器が素手で、ほぼ自身のステータスの力で行っているということだ。
現代日本なら、弓から猟銃に換えてスコープをつけたりといった科学力に頼ればいいのだが、ジェンレーンではそうもいかない。
その代わり、この世界には魔法という便利な物がある。
あちらでは道具を改造するなら、プロ並みの技術と知識が必要になるが、こちらでは素人でも手軽にできる。
マシュー自身を強くすることは無理でも、武器の威力を上げて、武器の力で強くすることならできるのではないか、マナトはそう考えた。
最初はズルだとしても、レベルを上げて自信をつければ、マシューならきっといい狩人になるだろう。
(俺は神なんだし、加護を押しつけてやろう)
ニヤリと笑うマナトは、悪どい顔をしていた。
「弓矢の方につけてもいいけど……。やっぱり本体の方がいいよな」
マナトは空間収納を呼び出し、手を突っ込む。
「攻撃力アップと命中率アップに使えそうな物……——おっ、来た」
手に触れる物の感触。
出てきたのは、液体が入った二つの色違いの小瓶だった。
詳細を弓と同じように見てみる。
「赤色が攻撃力アップで、黄色が命中率アップ、っと」
どうやらかけるだけで良さそうなので、零さないように気をつけながら弓矢にかけ、馴染ませていく。
「……こんなので本当に上がるのか?」
お手軽すぎて、効能に不安を覚える。
マナトは気づいていなかったが、空間収納に入っているアイテムは全て最高レベルの物だった。
ジェンレーンに住む者にとっては、その中の一つでも所持していれば、英雄や賢者と呼ばれるだけの価値があるほどに。
マナトが油が何かを塗るようにして気軽に使用している攻撃力アップも命中率アップも、見る者が見れば、目を剥くような伝説級の至宝だったのだ。
「おっ、本当に上がった!」
__________________________
名前 :木の弓
Lv :3
攻撃力 :508(500)
防御力 :0
命中率 :80(50)
属性 :—
__________________________
( )内の数値は、補正値だろうか。
数値が上がったことに気を良くしたマナトは、弓を元に戻した。
「一宿一飯の恩義は返さないとな」
そう呟くと、マナトはそっとマシューの自室を出た。
こうして弓は、木の弓にしてはあり得ないほどの威力と命中率を持つことになったのである。
マシューがその威力に腰を抜かすのはもっと先の話。
そして部屋を出たマナトは何食わぬ顔でダイニングに座り、興奮して帰ってきたマシューを迎えたのだった。
目的は金でも金品でもない。
けれど、ケットシー族にとっては重要な——
「あった」
多分、マシューの自室だろう。
棚に置かれていたそれを、マナトは手に取った。
半月の丸みを帯びるシルエット。
木と蔓で作られているそれは、弓だった。
「マシューが帰ってくる前に、さっさと片づけないとな」
泥棒ではないが、許可なく人の家の物を漁るのは、やはりやましい。
「これって、情報見れんのかな?」
今までできたのは、人や動物といった生きたものだけだった。
試したことがなかったことに気づき、マナトは手にした弓の情報を見たいと強く思ってみた。
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名前 :木の弓
Lv :3
攻撃力 :8
防御力 :0
命中率 :30
属性 :—
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「見れたけど……、武器の性能悪すぎだろ」
材料が木と蔓という時点で、あまり期待はしていなかったが、思った以上の数値の悪さだった。
つまり、マシューが狩りをするとき、ゲームでいうなら武器が素手で、ほぼ自身のステータスの力で行っているということだ。
現代日本なら、弓から猟銃に換えてスコープをつけたりといった科学力に頼ればいいのだが、ジェンレーンではそうもいかない。
その代わり、この世界には魔法という便利な物がある。
あちらでは道具を改造するなら、プロ並みの技術と知識が必要になるが、こちらでは素人でも手軽にできる。
マシュー自身を強くすることは無理でも、武器の威力を上げて、武器の力で強くすることならできるのではないか、マナトはそう考えた。
最初はズルだとしても、レベルを上げて自信をつければ、マシューならきっといい狩人になるだろう。
(俺は神なんだし、加護を押しつけてやろう)
ニヤリと笑うマナトは、悪どい顔をしていた。
「弓矢の方につけてもいいけど……。やっぱり本体の方がいいよな」
マナトは空間収納を呼び出し、手を突っ込む。
「攻撃力アップと命中率アップに使えそうな物……——おっ、来た」
手に触れる物の感触。
出てきたのは、液体が入った二つの色違いの小瓶だった。
詳細を弓と同じように見てみる。
「赤色が攻撃力アップで、黄色が命中率アップ、っと」
どうやらかけるだけで良さそうなので、零さないように気をつけながら弓矢にかけ、馴染ませていく。
「……こんなので本当に上がるのか?」
お手軽すぎて、効能に不安を覚える。
マナトは気づいていなかったが、空間収納に入っているアイテムは全て最高レベルの物だった。
ジェンレーンに住む者にとっては、その中の一つでも所持していれば、英雄や賢者と呼ばれるだけの価値があるほどに。
マナトが油が何かを塗るようにして気軽に使用している攻撃力アップも命中率アップも、見る者が見れば、目を剥くような伝説級の至宝だったのだ。
「おっ、本当に上がった!」
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名前 :木の弓
Lv :3
攻撃力 :508(500)
防御力 :0
命中率 :80(50)
属性 :—
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( )内の数値は、補正値だろうか。
数値が上がったことに気を良くしたマナトは、弓を元に戻した。
「一宿一飯の恩義は返さないとな」
そう呟くと、マナトはそっとマシューの自室を出た。
こうして弓は、木の弓にしてはあり得ないほどの威力と命中率を持つことになったのである。
マシューがその威力に腰を抜かすのはもっと先の話。
そして部屋を出たマナトは何食わぬ顔でダイニングに座り、興奮して帰ってきたマシューを迎えたのだった。
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