神の手プロジェクト~新世界創造したつもりが奴に蝕まれていく~

くりくりさん

文字の大きさ
28 / 48
第3章 ケットシー編

28 マナトは男色で未成年好き?

しおりを挟む
「すみません、マナトさん。
 地図を返してもらおうとしたんですけど、『それとこれとは話は別だ!』って言われてしまって……」

「うん? それは俺の問題だから自分で解決するよ。
 それより上手くいったみたいだな」

 マシューは吹っ切れたような笑顔で、力強く頷いた。

「はい! ジュリアンに、「僕と友達になって欲しい」って言ったら頭を叩かれました。「ちっちゃいときから、ずっと友達なのに、今さら言うな!」って」

 (……それ、笑顔で言うことなのか?)

 マシューは変だ。というか、絶対にジュリアンに毒されて感覚が麻痺している。
 マナトなら、いちいち叩かないで普通に会話しろよ、とまず愚痴を言っている。
 それを笑顔で言うマシューは、絶対にマゾだ。
 
「本当に嬉しかった。
 それから、僕の不安を全部打ち明けたんです。特に狩りが出来なくて悩んでることを。
 そしたらジュリアンが、「僕に面倒を見させろ」って言ってくれて、弓の練習につきあってくれることになりました。

 今まで僕は遠慮し過ぎてたんです!

 今、僕がしないといけないことは、自分の実力のなさを嘆いて距離を取ることじゃなく、ジュリアンに——友達に迷惑をかけてでも、がむしゃらに練習することなんです。

 同じ練習量で足りないっていうのなら、倒れるまで練習して追いつけばいい。僕はやりますよ!」

「そ……、そうか。がんばれよ」

 本当に家を出て行く前と同一人物なのかと思うほど、マシューは何かに駆られたようにまくし立てる。
 夢と希望に溢れて入社してくる新入社員を見ているようで、ちょっと引いてしまう。彼らは一年も経たずに現実を知り、マナトのようになってしまうのだから。

「はい!」

 苦手だなと思われているとはつゆ知らず、マシューは満面の笑顔で頷いた。
 そのまま深いお辞儀をする。

「なんてお礼を言っていいか。
 マナトさんがいなかったら、きっとこのままジュリアンから逃げてしまっていたと思います。
 そうならなくて良かったって今なら思います。
 本当にありがとうございました」

「俺は何もしてないよ。……真面目に言わないでくれ、恥ずかしいから」

 (自分はそんなに立派な人間じゃないし)

 むしろ、面と言われるなんてどんな嫌がらせ? と顔に血が昇るのを感じながら思うマナトだった。
 その様子を見たマシューが笑いながら何かを言いかけたので、褒め殺されては敵わないと、マナトは慌てて話の流れを変えた。

「マシュー、腹減った。何か食わせてくれ」

 あからさま過ぎただろうか。
 一瞬、マシューは目をまん丸にしたが、そこには何も触れないでくれた。
 苦笑されたように見えたのは、きっと気のせいだと信じたい。

「少し待っていてください。腕によりをかけて作りますから」

 最近、獲物が激減し猟にも影響が出ているらしく、肉料理ではなかったが、マシューの作る素朴な料理に、マナトは舌鼓を打つのだった。


__________________________




「うぅー…………、まぶし……」

 眩しくて眠れない。
 目を覚ますと、開いた窓から入ってくる風にカーテンが揺れ、朝陽というには少し遅い日差しが、マナトに降り注いでいた。

 寝ぼけ眼を擦りながら、いつもの見慣れた自分の部屋でないことに戸惑う。
 そしてすぐにここがマシューの家で、昨日は泊めてもらったのだと思い出した。

 欠伸をしながら身体を伸ばす。

「ふぁ~~ぁ。もうちょっと寝れたら最高だったのになぁ…………ん?」

 布団が不自然に盛り上がっている。
 ぼんやりとしていたマナトは、何気なく布団をめくった。

「!!」

 そこに想像もしていなかったものが現れて、驚愕で息を飲んだ。
 バクバクと、起きたての心臓が早鐘を打つ。

 (なんでここにジュリアンがいる?!)

 頭がパニックになって、咄嗟に言葉が出てこない。
 マナトの左側のちょうど腰辺りに、猫のように横向きに丸まったジュリアンが寝ていた。
 昨夜、マナトがベッドに潜り込むまで、確かにいなかったはずなのに。
 
 そんなマナトをよそに、布団を剥がれて寒かったのか、ジュリアンは暖を求めて、スリスリとマナトの腰に抱きついて来た。
 それと同時に、尻尾も太ももに絡み付いてくる。

 (男と一緒に寝る趣味はない!)

 嫌悪感は不思議と感じなかったが、十五になる少年に抱きつかれて、このまま寝かせておいてやろうという殊勝な気持ちにはならなかった。

「起きろ、ジュリアン」

 マナトは、驚かされたこともあり、ジュリアンの肩を少し乱暴に揺さぶった。

「んー……、あぁマナト。おはよう」

 それが素なのか、寝起きのジュリアンは素直に挨拶をした。
 ずっと毛を逆立てて嫌われていた猫に懐かれたようで、少し嬉しいと思ってしまう、が。

 (この状況で嬉しいとか、変態過ぎんだろ俺)

「『おはよう』じゃない。いつまでもくっつくな!」

「!」

 怒ると、ジュリアンはようやく、自分がマナトに抱きついていることに気がついたようだ。
 慌ててマナトの腰に回した手と、太ももの尻尾を離すと起き上がった。
 
「どこから入ってきた、というより何しに来た?」

 マナトの質問に、乱れた髪を直していたジュリアンの顔に生意気さが戻る。
 頬を膨らませて、マナトを睨みつけてきた。

「なんで取り返しにこないんだよ!」

「何が?」

「はぁ?! 地図だよ地図!! 大事な物だろ」

 (いや、分かってるなら返せよ)

 マナトは胸中でツッコんだが、話には乗らず、別の疑問をぶつけた。

「それがなんで、俺の隣で寝ることに繋がるんだ?」

「! ……そ、それは…………」

 痛いところを突かれたらしい。
 それはそうだろう。昨日出会ったばかりの旅人のベッドに潜り込む理由なんて、そうそう見つからないはずだ。
 
 ジュリアンが返答に困っているのが面白くなって、ついからかってしまった。

「そんなに俺と一緒に寝たいなら、ずっと隣を開けておいてやろうか?」

「~~~~~っ!!」

 自分で言って鳥肌が立つ。
 自分の身も多少切ってしまったが、その分ジュリアンは凄まじく怒ってくれるだろう。と、思いきや、

 (あれ? 思ってたのと反応が違うな)

 顔を真っ赤にするまでは予想通りだったが、何も言ってこない。目も合わせてくれない。

 (これって、ヤバイよな……)

 本気でマナトが未成年が好きな男色だと思われている。
 そういう目で見れば、ベッドの上で二人、今まさにマナトがジュリアンを襲おうとしている図に見えないこともない。
 ジェンレーンではどうか知らないが、日本なら手が後ろに回ってしまう。それ以上に、社会的に抹殺される。
 マナトは慌てた。

 (俺、健全に女の子が好きだから!
 いや、この言い方も変かもしれないけど。つき合うなら同じ歳か年上のお姉さんタイプの女性がいいんだ!
 断じて年下の生意気な少年には興味はない!)

 自分で言い出したことなのに、そう考えるのは失礼だろうが、焦っているマナトは気づいていなかった。

 顔を赤くしたまま、ジュリアンが断りの文句か何かを言おうとしたので、慌てて言葉を被した。

「冗談だ。本気にとるなよ」

「…………えっ?」

 決意して何かを言おうとしていたジュリアンは、ぽかんと口を開けた。

 (なんとかセーフ! 間に合った!)

 未成年好きの男色、という最大にして最悪の称号を回避したマナトは、胸中でガッツポーズを作った。

 しばらく呆然としていたが、やがてマナトの言葉を噛み砕くと、その顔が怒りでもっと赤くなる。

「バカバカバカバカ、バ~~ッカ!!」

 ようやく求めていた反応を引き出せたことに、マナトは安堵して笑った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

処理中です...