神の手プロジェクト~新世界創造したつもりが奴に蝕まれていく~

くりくりさん

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第3章 ケットシー編

29 地図を隠すなら胸の中

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「で、話に戻るけど。
 俺が地図を取り返しにこないから、様子を見に来たのか?」

 ジュリアンがひとしきり文句を言い終わったのを見計らって、そう確認した。
 いつもの生意気な感じではなく、どこか仏頂面になっているのは、まださっきのことを引きずっているからだろうか。

「そうだよ! いらないのかって言おうと思って来たのに、お前寝てるから。
 どうやっても起きなくて、段々疲れてきたから、それで……」

 隣で寝てしまった、と。
 もごもごと口の中で呟く。

 そんなに、マナトのことが嫌いなのだろうか。
 村に無断侵入したときから嫌われていたのは知っていたが、わざわざ会いに来る手間をかけてまで、嫌がらせしに来るとは思わなかった。
 ここは大人のマナトが折れるべきだろう。面倒くさいなと思いつつ、口を開いた。

「俺のどこがそんなに気に入らないんだ? 
 謝るから、地図を返してくれ」

「…………」

 だけど、返ってきたのは沈黙だった。
 何か不満があったからマナトのところに来たはずなのに、それを言わない理由が分からない。

「なんだよ、その沈黙は。言ってくれなきゃ分からないだろ」

 問い詰めると、ジュリアンは今度は泣きそうな顔になった。

 (子どもって本当に、よく分からん)

 泣きたいのはこっちだというのに。
 朝から(もう昼前だが)忍耐が試されるな、とマナトは溜め息を吐いた。

「……俺に、どうして欲しいんだ?」

「地図が欲しかったら、僕を捕まえてみろ」

 その言葉を待っていたのだろうか。
 マナトが言うと間髪入れずに、ジュリアンが返答してきた。
 生意気にふんぞり返る。

 あまりの変わりように少し腹が立ったので、マナトはジュリアンの両肩を掴んでやった。

「えっ? ちょっ、ちょっとタンマ! 急になんて卑怯だぞ!」

「卑怯でもなんでも、捕まえりゃいいんだろ。
 さぁ、返してもらうぞ」

 ジュリアンは暴れるが、ステータス強化されたマナトの腕はびくともしない。

 捕まえてみろと言うくらいだから、どこかに隠し持っているはずだが、ジュリアンの服装で隠す場所といったら、一つしかない。
 マナトは、ジュリアンの胸の懐に手を伸ばした。

「!!」

 胸に触れた瞬間、ジュリアンが無茶苦茶に暴れ出す。

「おい、暴れるなって。観念しろ——うわっ!」

 それでもマナトの手が離れないと分かると、唯一自由に動かせた首を使って頭突きをしてくる。
 痛いと思って咄嗟に手を離してから、しまったと思う。無意識に痛いと思ってしまうが、今のマナトは防御力が高くて痛みは感じないのだ。

 解放されるとジュリアンは、ベッドから飛び降りて一気に距離をとった。
 まだ今なら捕まえ直せると、マナトも立ち上がりかけたところへ、

「ルキナ」

「!」

 ジュリアンの口から出るはずのない名前が出て、思わずマナトは動きを止める。
 ジュリアンは額を押さえながら涙目で、マナトの反応を窺っていた。

「……どうして、その名前を」

 ルキナのことを知っているのか。
 マナトがそう聞き返そうとする前に、

「寝言には気をつけろよな」

 ジュリアンは額の痛みもあってか、嘲笑するのに失敗して、泣き笑いになっていた。
 ひらりと身をひるがえすと、ドアを開けて出て行く。

 ドアが閉まった向こうで、マシューが突然家の中に現れたジュリアンに驚いて、どこから来たのか質問する声が聞こえた。
「窓からだよ!」
「なんで怒ってるの?」
「ほっとけよ!」
 バタバタ走る音がして、それっきり会話が聞こえなくなる。

「…………」

 マナトは布団に突っ伏した。

 (寝言でルキナを呼んでたのか?)

 全然、記憶にない。
 いつも通り、朝まで夢も見ずに寝たと思っていたのに。

 (ルキナ……。どこにいるんだ?)

 マシューの控えめなノックでドアを叩かれるまで、マナトはルキナのことを想い続けた。
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