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第3章 ケットシー編
30 にゃんこの好きなアレで捕まえよう
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「ここをこうして、こうっと」
記憶を頼りに、マナトはマシューの家の前で、箒のような物を制作していた。
材料は腕くらいある太い棒と蔓と藁だ。
棒の先っぽに藁をつけて、蔦で巻きつけて固定する。
ポイントは、藁をいかにふかふかにして棒につけられるかだ。
思わず飛びつかずにはいられないように、そこだけは気を使って、数十分ほどで仕上げた。
「よし、猫じゃらし完成だ」
猫といえばマタタビか、猫じゃらし。
マタタビは残念ながら手に入らないので、ならばとマナトは巨大猫じゃらしを作ったのだった。
完全に猫扱いしているとジュリアンに知れたら、また怒るだろうが、追いかけっこに余計な労力を使わされるよりよっぽどいい。
相手は地の利に富んでいるのだ。いくらマナトが素早くても、建物に逃げ込まれたら見つけるのは困難だ。
「まだ、あいつは見つからないかね」
ジュリアンの父親の族長バーナードが、様子を見にやってきた。
おはようございますとマナトは挨拶をして、曖昧に笑う。
見つからないどころか、今まで一緒に寝ていたのに逃しましたとは言えない。
バーナードは、それを迷惑しているととったのだろう、
「あいつのお転婆にも困ったものだ。
これから狩りだというのに準備もしないで、皆に迷惑ばかりかけよって。ただでさえ、獲物が減っておると言うのに。
あれが次の族長になるかもしれんと思うと頭が痛いわ。
——おぉ、お客人の前でみっともなかったな。忘れてくれ」
(そう言いつつ、息子が大好きなんだよなぁ、バーナードさん。ジュリアンのことを喋ってるとき、めっちゃ笑顔なの気づいてないのか?)
マシューにも気づかれているくらいだ。ケットシー族全員がバーナードのことを親バカだと思っているに違いない。
筋肉のムキムキの見た目強面のおっさんが、一人息子を可愛がる様子はそれはそれで微笑ましそうだが。
「いえ、俺も見つけたら狩りのこと伝えておきますよ」
「ありがたい。ちょっとぐらい喝を入れてやっても構わんからな。
よろしく頼む」
バーナードはマナトの肩を軽く叩くと、狩りの準備のために戻って行った。
その背を完全に消えるまで見送ると、マナトは巨大猫じゃらしを手に、村を一通り歩いて回った。
ケットシー族は狩猟民族だと聞いていたが、完全な肉食でないことは、昨日マシューの作った食事からも分かっていた。
村には畑があり野菜が植えられ、道端の木には美味しそうな果物がなっている。
家の庭には、数は少ないが鶏に似た鳥も飼われていたから、村全体で自給自足ができそうだが、それでは満足できないらしい。
狩りで成果を上げることは、狩猟民族であるケットシー族の誇りのようなものなのだろうか。
マナトには分からない世界だ。
考えながら歩いていると、門の近くまで来てしまっていた。
(引き返すか)
そのとき、ガサガサと近くの茂みが鳴る。
風にしては音の鳴り方がおかしいなと視線をやると、しゃがんだ体勢でこちらを覗くジュリアンと目が合った。
「!」
お互い硬直する。先に解けたのはマナトの方だった。
逃げられる前に、試しにそっと猫じゃらしを横に動かしてみる。
ジュリアンの大きな目が、同じ方向に動く。
反対に動かしても同じ。
(やっぱり反応してる!)
どうやら茂みを鳴らしてしまったのも、これに反応してのようだった。
マナトはちょっと感動する。作ったものが猫じゃらしと認められたようで嬉しい。
あとは簡単だった。
捕らえようという態度は見せず、ネズミっぽい飛びつきたくなりそうな動きをさせるだけだ。
「とおっ!!」
かけ声と共にジュリアンが飛び出してきて、猫じゃらしに抱きつく。
耳と尻尾がピンと立っているのが面白い。
猫じゃらしを捕まえれたことに一瞬、喜色を浮かべたジュリアンだったが、はっとして固まり、恐る恐る上目遣いにマナトを見てきた。
思わずにんまりと笑ってしまったのは仕方ない。
ジュリアンは、パタリと猫じゃらしを落とす。踵を返して逃げようとするその首根っこを、マナトは素早く掴んだ。
「きゃっ!」
猫じゃらしにジュリアンが足を滑らせる。
「っと!」
首を掴んでいたのが幸いして、マナトは後ろからジュリアンを抱きとめることで、コケるのを防いだ。
「さぁ、今度こそ返してもらうからな」
マナトはジュリアンの耳元でそう言った。
記憶を頼りに、マナトはマシューの家の前で、箒のような物を制作していた。
材料は腕くらいある太い棒と蔓と藁だ。
棒の先っぽに藁をつけて、蔦で巻きつけて固定する。
ポイントは、藁をいかにふかふかにして棒につけられるかだ。
思わず飛びつかずにはいられないように、そこだけは気を使って、数十分ほどで仕上げた。
「よし、猫じゃらし完成だ」
猫といえばマタタビか、猫じゃらし。
マタタビは残念ながら手に入らないので、ならばとマナトは巨大猫じゃらしを作ったのだった。
完全に猫扱いしているとジュリアンに知れたら、また怒るだろうが、追いかけっこに余計な労力を使わされるよりよっぽどいい。
相手は地の利に富んでいるのだ。いくらマナトが素早くても、建物に逃げ込まれたら見つけるのは困難だ。
「まだ、あいつは見つからないかね」
ジュリアンの父親の族長バーナードが、様子を見にやってきた。
おはようございますとマナトは挨拶をして、曖昧に笑う。
見つからないどころか、今まで一緒に寝ていたのに逃しましたとは言えない。
バーナードは、それを迷惑しているととったのだろう、
「あいつのお転婆にも困ったものだ。
これから狩りだというのに準備もしないで、皆に迷惑ばかりかけよって。ただでさえ、獲物が減っておると言うのに。
あれが次の族長になるかもしれんと思うと頭が痛いわ。
——おぉ、お客人の前でみっともなかったな。忘れてくれ」
(そう言いつつ、息子が大好きなんだよなぁ、バーナードさん。ジュリアンのことを喋ってるとき、めっちゃ笑顔なの気づいてないのか?)
マシューにも気づかれているくらいだ。ケットシー族全員がバーナードのことを親バカだと思っているに違いない。
筋肉のムキムキの見た目強面のおっさんが、一人息子を可愛がる様子はそれはそれで微笑ましそうだが。
「いえ、俺も見つけたら狩りのこと伝えておきますよ」
「ありがたい。ちょっとぐらい喝を入れてやっても構わんからな。
よろしく頼む」
バーナードはマナトの肩を軽く叩くと、狩りの準備のために戻って行った。
その背を完全に消えるまで見送ると、マナトは巨大猫じゃらしを手に、村を一通り歩いて回った。
ケットシー族は狩猟民族だと聞いていたが、完全な肉食でないことは、昨日マシューの作った食事からも分かっていた。
村には畑があり野菜が植えられ、道端の木には美味しそうな果物がなっている。
家の庭には、数は少ないが鶏に似た鳥も飼われていたから、村全体で自給自足ができそうだが、それでは満足できないらしい。
狩りで成果を上げることは、狩猟民族であるケットシー族の誇りのようなものなのだろうか。
マナトには分からない世界だ。
考えながら歩いていると、門の近くまで来てしまっていた。
(引き返すか)
そのとき、ガサガサと近くの茂みが鳴る。
風にしては音の鳴り方がおかしいなと視線をやると、しゃがんだ体勢でこちらを覗くジュリアンと目が合った。
「!」
お互い硬直する。先に解けたのはマナトの方だった。
逃げられる前に、試しにそっと猫じゃらしを横に動かしてみる。
ジュリアンの大きな目が、同じ方向に動く。
反対に動かしても同じ。
(やっぱり反応してる!)
どうやら茂みを鳴らしてしまったのも、これに反応してのようだった。
マナトはちょっと感動する。作ったものが猫じゃらしと認められたようで嬉しい。
あとは簡単だった。
捕らえようという態度は見せず、ネズミっぽい飛びつきたくなりそうな動きをさせるだけだ。
「とおっ!!」
かけ声と共にジュリアンが飛び出してきて、猫じゃらしに抱きつく。
耳と尻尾がピンと立っているのが面白い。
猫じゃらしを捕まえれたことに一瞬、喜色を浮かべたジュリアンだったが、はっとして固まり、恐る恐る上目遣いにマナトを見てきた。
思わずにんまりと笑ってしまったのは仕方ない。
ジュリアンは、パタリと猫じゃらしを落とす。踵を返して逃げようとするその首根っこを、マナトは素早く掴んだ。
「きゃっ!」
猫じゃらしにジュリアンが足を滑らせる。
「っと!」
首を掴んでいたのが幸いして、マナトは後ろからジュリアンを抱きとめることで、コケるのを防いだ。
「さぁ、今度こそ返してもらうからな」
マナトはジュリアンの耳元でそう言った。
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