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第3章 ケットシー編
41 ハントマンスパイダーとの戦い
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__________________________
種族 :ハントマンスパイダー
ランク :B
Lv :38
HP :3270/3270
MP :247/247
攻撃力 :298
防御力 :203
魔法攻撃力:254
魔法防御力:198
素早さ :207
アビリティ:共喰い Lv5 (MAX)
: 再生 Lv3
スキル :[捕縛の糸]
: [腐食の糸]
__________________________
「勘弁してくれよ……。
なんでこんなに何もかもデカイんだよ」
ステータスよりも、マナトの身長の二倍はありそうなハントマンスパイダーに愚痴を漏らした。
脚だけでマナトの身長くらいある。
子蜘蛛に比べると手足は一回り太く、硬く光沢のある毛に覆われていて、口には鋭い牙が生えていた。
ハントマンスパイダーは、マナトたちに気づくと、自分の巣に入ってこられたことへの怒りか、威嚇するように牙を合わせてガチガチ音を鳴らす。
感覚が絶賛麻痺中のマナトには、どこ吹く風だ。
威嚇して襲ってこないことをむしろチャンスだと思い、マナトは先制攻撃を仕掛けた。
一気に距離を詰めると、左脚の一本に剣を走らせる。
胴体を直接狙わないのは、マナトの身長より高いところにあって届かないからだ。
——キイィィィィィィィンンッ!
「!」
硬い。まるで鉄を切ったかのような重い手応え。
振動で少し手が震える。
それでも、マナトの使用している剣は優秀で、綺麗な切り口を見せながら、ハントマンスパイダーの脚を切り飛ばしていた。
「ギチギチギチギチッ!! 」
声帯を持たないハントマンスパイダーは、牙を使って悲鳴のような音を漏らした。
連続して左脚二本目も切る。
マナトから距離を置くように、ハントマンスパイダーが後退した。
「マナト、危ない!」
ジュリアのその言葉と同時。
後退したと見せかけたハントマンスパイダーが、尻の部分から糸を飛ばしてきた。
「うわっ!」
マナトはギリギリのところでその糸を交わす。
糸といっても、巨体のハントマンスパイダーが放つと綱ほどの太さがある。それをハントマンスパイダーは対峙したまま、狙い違わず尻から放ってきたのだ。
頭で尻が見えない分、予測するのは難しい。
マナトを捕まえ損ねた糸は、床に張り付くと、煙を上げ嫌な臭いを放ちながら周囲を溶かした。
[腐食の糸]だ。
ジュリアの言葉がなかったら、こうなっていたのはマナトの身体だ。状態異常無効を持っているから、もしかしたら平気なのかもしれないが、自分の身体で実験してみるつもりはさらさらない。
ほっとしたのも束の間、ハントマンスパイダーが、大きく口を開けて、マナトに襲いかかってきた。
「マナトを食べようなんて百年早いよ!
[一射必殺]!!」
次期族長と自ら宣言するだけあって、ジュリアの弓の腕前は凄かった。
ジュリアの放ったスキルの矢は、ハントマンスパイダーの動きを先読みするように正確に、四つある目の一つに突き刺さる。
耳障りな牙の音を立てて、ハントマンスパイダーは仰け反った。
「ナイスフォロー!」
礼代わりにそう褒めながら、マナトはハントマンスパイダーの胴体の下に滑り込むと、左側の残り二本の脚も切り落とした。
グラッ。
片側の脚を全部失って、流石にバランスを保てなくなったハントマンスパイダーが、倒れこんでくる。
マナトは慌てて胴体の下から抜け出すと、距離取る。
——ドォォォンッ!
巨体が床に落ちて、地震のような揺れが襲ってきた。
床に転がったハントマンスパイダーは、口から緑色の液体を吐き出ながら、憎悪に満ちた殺意のようなものを向けてくる。
マナトは素早くステータスを確認した。
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種族 :ハントマンスパイダー
ランク :B
Lv :38
HP :1045/3270
MP :197/247
攻撃力 :298
防御力 :203
魔法攻撃力:254
魔法防御力:198
素早さ :207
アビリティ:共喰い Lv5 (MAX)
: 再生 Lv3
スキル :[捕縛の糸]
: [腐食の糸]
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「まだ、1000も残ってるのかよ……」
「マナト、なんか言った?」
「いや、なんでもない」
胴体ではなく脚を狙っていたせいだろうか。
子蜘蛛のときは一撃で屠れることも多かっただけに、まだ三分の一もHPが残っていることにうんざりする。
だが、ようやくそれも終わりだ。
胴体を直接叩けば、いくらなんでも数発と持たないだろう。
片側の脚を失ったハントマンスパイダーは動けない。気をつけるとすれば、[捕縛の糸]や[腐食の糸]だが、さすがにこの状態だと放てないはずだ。
それでも一応はおかしな行動をしないか意識しつつ、マナトは終わらせるために剣を振り下ろした。
「——やめてぇっっっ!」
ハントマンスパイダーの頭をもう少しでぶった斬るという寸前で、ジュリアが悲鳴に近い声を上げた。
「!! 」
突然のストップに、マナトは反応した。咄嗟にそうできたのは、戦闘の中で感覚が鋭敏になっていたからだろう。
普段のときなら、反応できずに振り下ろして数秒後に気づいたかもしれない。
重力に従って落ちようとする剣を、腕の力を使って無理やり上へ上げる。
変に力を入れてしまったのか、腕に痛みが走った。
だが、そのおかげで、マナトの剣はハントマンスパイダーの頭を少し切った状態で止まる。
「なんで止めるんだ!」
これで終わると思っただけに、振り返ったマナトの言い方が少しトゲトゲしくなるのは仕方ない。
ジュリアは、それには答えず、ヘナヘナと床に座り込んだ。
「おい!」
「間に合ってよかった…………」
気づかないうちに何かに襲われたのかと焦りかけたマナトに、ジュリアはそう呟くように言った。
(なんのことを言ってるんだ?)
マナトは眉根を寄せながら、前へ向き直る。
「!」
ハントマンスパイダーのすぐ傍らに、信じられないものを発見して、マナトは一瞬自分の目を疑った。
床からバーナードの首が生えていた。
種族 :ハントマンスパイダー
ランク :B
Lv :38
HP :3270/3270
MP :247/247
攻撃力 :298
防御力 :203
魔法攻撃力:254
魔法防御力:198
素早さ :207
アビリティ:共喰い Lv5 (MAX)
: 再生 Lv3
スキル :[捕縛の糸]
: [腐食の糸]
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「勘弁してくれよ……。
なんでこんなに何もかもデカイんだよ」
ステータスよりも、マナトの身長の二倍はありそうなハントマンスパイダーに愚痴を漏らした。
脚だけでマナトの身長くらいある。
子蜘蛛に比べると手足は一回り太く、硬く光沢のある毛に覆われていて、口には鋭い牙が生えていた。
ハントマンスパイダーは、マナトたちに気づくと、自分の巣に入ってこられたことへの怒りか、威嚇するように牙を合わせてガチガチ音を鳴らす。
感覚が絶賛麻痺中のマナトには、どこ吹く風だ。
威嚇して襲ってこないことをむしろチャンスだと思い、マナトは先制攻撃を仕掛けた。
一気に距離を詰めると、左脚の一本に剣を走らせる。
胴体を直接狙わないのは、マナトの身長より高いところにあって届かないからだ。
——キイィィィィィィィンンッ!
「!」
硬い。まるで鉄を切ったかのような重い手応え。
振動で少し手が震える。
それでも、マナトの使用している剣は優秀で、綺麗な切り口を見せながら、ハントマンスパイダーの脚を切り飛ばしていた。
「ギチギチギチギチッ!! 」
声帯を持たないハントマンスパイダーは、牙を使って悲鳴のような音を漏らした。
連続して左脚二本目も切る。
マナトから距離を置くように、ハントマンスパイダーが後退した。
「マナト、危ない!」
ジュリアのその言葉と同時。
後退したと見せかけたハントマンスパイダーが、尻の部分から糸を飛ばしてきた。
「うわっ!」
マナトはギリギリのところでその糸を交わす。
糸といっても、巨体のハントマンスパイダーが放つと綱ほどの太さがある。それをハントマンスパイダーは対峙したまま、狙い違わず尻から放ってきたのだ。
頭で尻が見えない分、予測するのは難しい。
マナトを捕まえ損ねた糸は、床に張り付くと、煙を上げ嫌な臭いを放ちながら周囲を溶かした。
[腐食の糸]だ。
ジュリアの言葉がなかったら、こうなっていたのはマナトの身体だ。状態異常無効を持っているから、もしかしたら平気なのかもしれないが、自分の身体で実験してみるつもりはさらさらない。
ほっとしたのも束の間、ハントマンスパイダーが、大きく口を開けて、マナトに襲いかかってきた。
「マナトを食べようなんて百年早いよ!
[一射必殺]!!」
次期族長と自ら宣言するだけあって、ジュリアの弓の腕前は凄かった。
ジュリアの放ったスキルの矢は、ハントマンスパイダーの動きを先読みするように正確に、四つある目の一つに突き刺さる。
耳障りな牙の音を立てて、ハントマンスパイダーは仰け反った。
「ナイスフォロー!」
礼代わりにそう褒めながら、マナトはハントマンスパイダーの胴体の下に滑り込むと、左側の残り二本の脚も切り落とした。
グラッ。
片側の脚を全部失って、流石にバランスを保てなくなったハントマンスパイダーが、倒れこんでくる。
マナトは慌てて胴体の下から抜け出すと、距離取る。
——ドォォォンッ!
巨体が床に落ちて、地震のような揺れが襲ってきた。
床に転がったハントマンスパイダーは、口から緑色の液体を吐き出ながら、憎悪に満ちた殺意のようなものを向けてくる。
マナトは素早くステータスを確認した。
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種族 :ハントマンスパイダー
ランク :B
Lv :38
HP :1045/3270
MP :197/247
攻撃力 :298
防御力 :203
魔法攻撃力:254
魔法防御力:198
素早さ :207
アビリティ:共喰い Lv5 (MAX)
: 再生 Lv3
スキル :[捕縛の糸]
: [腐食の糸]
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「まだ、1000も残ってるのかよ……」
「マナト、なんか言った?」
「いや、なんでもない」
胴体ではなく脚を狙っていたせいだろうか。
子蜘蛛のときは一撃で屠れることも多かっただけに、まだ三分の一もHPが残っていることにうんざりする。
だが、ようやくそれも終わりだ。
胴体を直接叩けば、いくらなんでも数発と持たないだろう。
片側の脚を失ったハントマンスパイダーは動けない。気をつけるとすれば、[捕縛の糸]や[腐食の糸]だが、さすがにこの状態だと放てないはずだ。
それでも一応はおかしな行動をしないか意識しつつ、マナトは終わらせるために剣を振り下ろした。
「——やめてぇっっっ!」
ハントマンスパイダーの頭をもう少しでぶった斬るという寸前で、ジュリアが悲鳴に近い声を上げた。
「!! 」
突然のストップに、マナトは反応した。咄嗟にそうできたのは、戦闘の中で感覚が鋭敏になっていたからだろう。
普段のときなら、反応できずに振り下ろして数秒後に気づいたかもしれない。
重力に従って落ちようとする剣を、腕の力を使って無理やり上へ上げる。
変に力を入れてしまったのか、腕に痛みが走った。
だが、そのおかげで、マナトの剣はハントマンスパイダーの頭を少し切った状態で止まる。
「なんで止めるんだ!」
これで終わると思っただけに、振り返ったマナトの言い方が少しトゲトゲしくなるのは仕方ない。
ジュリアは、それには答えず、ヘナヘナと床に座り込んだ。
「おい!」
「間に合ってよかった…………」
気づかないうちに何かに襲われたのかと焦りかけたマナトに、ジュリアはそう呟くように言った。
(なんのことを言ってるんだ?)
マナトは眉根を寄せながら、前へ向き直る。
「!」
ハントマンスパイダーのすぐ傍らに、信じられないものを発見して、マナトは一瞬自分の目を疑った。
床からバーナードの首が生えていた。
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