神の手プロジェクト~新世界創造したつもりが奴に蝕まれていく~

くりくりさん

文字の大きさ
43 / 48
第3章 ケットシー編

43 悲劇の連続

しおりを挟む
 バタンと、ジュリアのすぐ脇に、子蜘蛛が裏返しで落ちる。
 しばらくジタバタもがいていたが、やがてぴくりとも動かなくなった。

 その様子を呆然と見ていたジュリアは、そのまま視線を動かして、部屋の入り口の方から現れた人物に向けた。

「……マシュー? お前なんでこんなところに……?」

 現れたのは、マシューだった。
 動きにくそうな鎧で全身を覆い、弓を放った体勢で、ジュリアの言葉にも気づかず、ぼうっとしていた。

「おいっ、マシューってば! 人の話を聞けよ!」

「はっ…………! ご、ごめん。なんて言ったの?」

「だから、なんでこんな危ないところに来たかって聞いてんだよ!
 誰かと一緒なのか?」

「ううん。……ごめん、ジュリアンとマナトさんの後をずっとつけてたんだ。
 ジュリアンを助けようと思って」

「——バカ!
 弱っちいお前が助けに来たって、無駄死になんだよ!
 途中でのたれ死んでも分からないんだから、家で大人しくしてろよ!

 それになんだよ、その鎧! どこから持ち出してきたか知らないけど、ビビリまくってるじゃないか」

 本当は嬉しいのに、素直になれないジュリアは、文句に拍車をかける。
 せっかく助けに来たマシューは、あまりの言われように眉尻を下げた。

「酷いよ、ジュリアン。これでも僕頑張ったんだけど。
 それにほら、初めて狩れたし」

 ちらっと、子蜘蛛を見る。
 ジュリアも見たが、即座に切って捨てる。

「マシュー、お前こんなゲテモノ食べるつもりなのか?
 こんなの狩りじゃない、無効だ」

「そんなぁ~~」

「ほら、突っ立てるなら手伝え」

「手伝うって? ぞ、族長?! なんで族長が床に埋まってるの? 状況がさっぱり読み込めないんだけど……」

 ジュリアの手元を見たマシューは、驚きの声を上げた。
 ジュリアの手で肩口くらいまで糸が切られ、マナトたちのときのように生首ではなくなっていたが、それでもその姿は衝撃的だった。

「早く来い!」

 早く助け出さなければならないという焦りが、ジュリアの口調を荒くする。

「う、うん!」

 と、マシューが走り出したところで、突然転んだ。

「もうっ! 何やってるんだよ!」

「ごめん! で、でも何かに足を掴まれたみたいで……。
 これって、蜘蛛の糸……?」

 うつ伏せの状態から、えび反りになって後ろを振り返ったマシューは、自分の足に絡み付いている物の正体に気づくと、顔を青ざめさせた。

 部屋の入り口から子蜘蛛がマシューに向かって這ってくる。
 部屋に入ってすぐにあった卵が孵化したようだった。

「来ないでよ! うわっ!」

 子蜘蛛はマシューに飛びかかった。
 辛うじて体勢をうつ伏せから仰向けにしたマシューは、弓でその牙から身を守ろうと必死に抵抗する。

「マシュー!」

 ジュリアが弓を引くが、マシューと子蜘蛛が床で激しく攻防するので狙いを定め切れず、射ることができない。
 このままだと、ジュリアが短剣を握りしめて、マシューを助けに走り出しかねないので、マナトはハントマンスパイダーの追跡を諦めた。

 ハントマンスパイダーが壁に到着する。脚で掴む手間すら惜しいかのように、直接口に卵に齧り付く。
 マナトはその咀嚼音に苦い思いを浮かべながら、走り出していた。

「マシュー、平気か?! 」

「…………」

 全力疾走しながら、マシューに声をかけるが、返事がない。
 見れば、マシューは力なく床に倒れていて、その手から弓が零れ落ちた。
 子蜘蛛の一撃で意識を持っていかれたようだ。

 (もっと早く判断しとくんだった!)

 ハントマンスパイダーが全回復するのを阻止したいという気持ちが、マナトの行動を遅らせた。

 でもまだ間に合う。
 なんとか一命を取り留めているのは、大げさな装備にしか見えなかった鎧のおかげだ。急所が守られているから、まだなんとか保っているが、これ以上は厳しいだろう。

 マナトはマシューに辿り着くと、剣を一振りして子蜘蛛を倒す。
 マシューの足に絡み付いた糸を切ってやると、頬を軽くパチパチと叩いた。

「おい、マシュー! しっかりしろ!」

「………………ううっ」

 ぼんやりとだが、声が出てほっとする。額に大きなコブができているが、パッと見たところそれくらいしか怪我らしい怪我はなかった。

「今、治してやるから安心しろ」

 マナトがマシューの身体に手を置いた、その瞬間——

「キャアッ!」

 ジュリアの切羽詰まった悲鳴が上がった。
 弾かれたように、マナトはそちらを見る。
 ジュリアが、全回復したハントマンスパイダーの[捕縛の糸ホールドストリングス]に上半身を絡みとられていた。
 マナトのときと違うのは、尻から放たれたまま、その糸が切れていないことだ。

「ジュリア!! 」

 マナトは慌てて駆け出す。
 だが、その目に映ったのは、無情にも宙を舞う彼女の姿だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

狼になっちゃった!

家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで? 色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!? ……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう? これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...