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第六章 花の記憶

(58)花の記憶 その3-2

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 それから何件か、孝の伝手のあるホテルや関係者などを回ってみたものの、やはり収穫は思わしくなかった。

「やっぱり、あの方法でいきますかね」

 克也は団地に帰る車の中で孝に言う。

「それしかないね。帰ったら真奈美と愛子ちゃんに話そう」

 日が陰り始めた頃に孝と克也は竹屋家に戻ってきた。

「おかえりなさい。どうだった?」

 愛子がふたりを玄関で出迎える。

「うん、残念ながら。でも、アイデアは出たから、それしかないかなって。愛子たちの方は?」

「うん……、そういうことなら綾香さんたちは、今回は見送ろうかって言ってたんだけど、それはどうしても嫌だからもうちょっと考えよう……って。今スマホ切ったとこだったんだけど、何かまとまらなくて」

「そうだったんだ……。あれ? 真奈美さんは?」

 愛子はふたりに向かって、人差し指を自分の口に当てる。

「良く寝てるよ……。昨日、眠ってなかったみたい」

 孝と克也は顔を見合わせ、それからお互いに微笑する。

「ご苦労さま。真奈美、満足した?」

 孝が愛子に向かって言う。

「うん……。すごく、安心したみたいです」

「そっか。それは良かった。じゃぁ、真奈美起こしちゃうとかわいそうだから、克也くんと愛子ちゃんのとこで、あの話しようか」

「そうですね。書き置きだけ残しておけば大丈夫でしょう」

 それから愛子と克也、孝の三人は竹屋家を静かに出て、真野家に移動する。
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