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第六章 花の記憶

(61)花の記憶 その3-5

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「さて、キャストのセッティングも終わったところで、改めて」

 孝と涼が、竹屋家の画面から出てくる。

「三次元同時中継、企画してからセッティングまで準備を手伝ってくれた涼くんと、雄哉くんに改めて感謝。ありがとう」

 三つの部屋から同時に拍手が沸き起こる。

「いや、大したことしてないし、仕事の延長みたいなもんだったし」
「自分も大したことは……。でも、うまくいってよかったです」

 涼と雄哉は照れながらカメラに向かって頭を下げる。

「じゃ、改めて僕から説明しておくと、今、それぞれの部屋のテレビに映っているのは、ビデオカメラをパソコンにつないで、それをテレビで拡大した映像なんだよ。こういうことするのは、昔は大きな機材や人手が必要だったけど、ネットのおかげで、仕組みとやり方さえ分かってれば、家庭でもできるようになったんだ」

 孝に続いて涼がカメラに出てくる。

「そうなると俺の出番だなってことで、機材の調達や調整はやらせてもらったよ。各部屋にカメラ三台くらいずつ置いてあるから、自由に使って撮影するといいよ。別に仕事じゃないし、映したいところ、どんどん映して。その時は生で見れなくても、あとで見れたりもできるから、本当、どんどん回してよ。あとで楽しみにしてる」

 そしてその後から雄哉が涼に促されて出てくる。

「僕のほうは、仕事のコネ使って、グッズとかコスプレとか、いろいろ揃えてみました。よかったら使ってください」

 そして再び三つの画面から同時に拍手がわく。

「じゃぁ、そろそろ乾杯しよっか」

 それそれのリビングに用意された飲み物を全員が取る。

「乾杯の音頭は、真奈美」

 孝がカメラに向かって真奈美を呼び出す。

「わ、私?」
「うん。真奈美さんお願い」

 愛子がカメラに向かって笑顔で言う。真奈美の隣にいた克也と綾女も、笑顔で頷いて真奈美を促す。

「じゃぁ……、素敵な出会いに、そして、こんなすごーいパーティにっ、乾杯っ!!」
「乾杯っ!」

 こうして、総勢十一名を三箇所に分け、同時中継をするという孝のアイデアのもとに準備がされ、参加者全員が待ちに待っていたパーティーの幕が開いたのであった。
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