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番外編パート2 お姉さんの下着を濡らしたら合格できる予備校があるらしい
(15)お姉さんの下着を濡らしたら合格できる予備校があるらしい エピローグ
しおりを挟む「それで、陽太くんとはその後どうなったんですか?」
真野愛子(まのあいこ)は、綾女の話を目を輝かせながら聞いていた。時はそれから八年後。綾女はまだ独身のままだった。
その日、愛子と二人で話していたのは、綾女がなぜ今でも独身を貫いているのかという、ある意味綾女にとっては一番危険な話題だった。これを逃したら聞けなくなるかも知れないと心の中で思いながら、愛子は意を決して綾女に聞いた。それから綾女は自分の部屋で愛子に滔々と陽太との思い出話をしていたのだった。
「うん、その後なんだけどね……」
綾女は悲しそうな目をしながら愛子に続きを聞かせる。
陽太の合格発表が差し迫る三月十一日のお昼すぎ。突如として襲ってきた今まで誰も経験したことのない大地震。その日から全てが変わった。
綾女はオフィスの復旧処理に多忙を極めていた。通信手段も限られていたので陽太にもなかなか連絡をつけられない。だが、心の片隅にはいつも陽太がいた。
「ずっと、連絡取れなかったままだったんだ。地震がきっかけでオフィスも移転することになっちゃったし。でもね……」
オフィスの移転準備も片付いてようやく通常業務ができるようになってきたある日のこと、一人の女の子が訪問してきた。
「あらっ、なずなちゃん!」
最初に声をかけたのは香織だった。それから香織と裕子はなずなのもとに駆け寄って抱きしめ合う。
「良かったよぉー! 無事だったんだねっ」
「はいっ。今日はご報告にきました。あの、うちが引っ越すことになっちゃいまして……」
「あら……」
話しているなずなも、そしてその場にいた四人も一様に暗い顔になる。
「だいたい、理由は想像つくけど……、どこなの?」
「福島です」
「えっ……」
四人は一様に息を呑む。
「お父さんの会社が、関係してて……、行かなくちゃいけなくなったんです。皆さん、本当にお世話に……、なりました……。ぐすっ……」
四人は次に語る言葉を見つけられなかった。
「あ……、それと、これ、お兄ちゃんから、綾女さんに……って」
なずなは一通の手紙を綾女に渡す。
「今日、一緒に来られればよかったんですが、お兄ちゃん、既に先に福島に行ってるんです。会えなくて本当に辛そうでしたけど、私に、この手紙を託した時に言ってました。『このまま別れるなんてことには絶対にしない』って」
「そう……」
綾女は肩を落としながらも、少しだけ笑顔を見せた。
「あと、報告しておかなければならないことがもうひとつ。お兄ちゃん、合格はしました。ただ、行くかどうかは……」
「そうか……。そうよね……」
「なずなちゃんっ!」
突然、めぐみが大きな声で、なずなの名を呼ぶ。
「は、はいっ」
「なずなちゃんのこと、絶対、迎えに行くから。それから、陽太くんも。ちょっと時間かかるかもしれないけど、待ってて」
めぐみは真っ直ぐになずなの目を見て、涙を瞳にいっぱい貯めながら力強く言う。なずなは一瞬驚いていたが、目をぱちぱちさせると、涙がぽたぽたとこぼれ落ちた。
「ふぇっ……、あ、ありがとう……ございますっ……」
それからなずなは声を上げて泣いた。香織と裕子がなずなの肩を抱いて一緒に泣く。
めぐみも綾女も、その場で立ち尽くしたまま、涙を流していた。
「そうか……。丁度、その時だったんですね……」
「うん。なずなちゃんは、うちの会社に憧れてて、卒業したら絶対入社するから、って、約束してたんだ。それが……」
「あの地震で……」
「うん。陽太くんも大学は受かったものの、おうちが福島だと通いきれないのと、陽太くん自身が大学に行っている場合じゃなくなっちゃったんだ」
「福島ってことだと、だいたい想像はつきますね」
「うん……。だから私からは連絡することしなかったんだけど、なずなちゃんを通じて私に定期的に手紙が届くようになったの」
「へぇー。どんな内容だったんですか?」
「んー、それは、内緒」
「えーっ、そこまで話しておいて、もったいぶらないでくださいよー」
綾女は微笑みながら、続けて言葉を紡ぐ。
「でもね、陽太くんは、今も、どこかで私のこと見守っていてくれてる、って自信はあるんだ」
「きっと……、ううん。絶対そうです。もしかすると、もう近くにいるのかも……」
愛子も微笑みながら綾女に言う。
「あっという間に八年も過ぎちゃった……。そんな感じね」
綾女は、ふっと視線を外して窓の外を見る
「いい天気ね。そろそろ買い物行こっか」
「はい。みんな、待ってますから」
愛子と綾女は笑顔で外出の準備をするのだった。
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