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番外編パート2 お姉さんの下着を濡らしたら合格できる予備校があるらしい
(14)お姉さんの下着を濡らしたら合格できる予備校があるらしい その6
しおりを挟む陽太と綾女の初デートの日を境に、ふたりを取り巻く環境も目まぐるしく変化していった。夏期集中講座で予備校に缶詰になる陽太、綾女の方は会社の立ち上げが本格化して毎日駆け回る日々が続く。そして夏が過ぎて秋、冬と季節はあっという間に巡っていく。陽太は綾女に会いたい気持ちを堪え、必死で机に向かう。それは、あの夜に綾女と約束したことだった。
「これから陽太くんと会うことは少なくなると思う。そろそろ会社も本格的に動き出さないといけないし。合格率八〇パーまで持っていけたんだから、陽太くんはもう、自信持っていいと思う。あとは、それを維持して勉強を続けるだけ。でね、陽太くん、私も辛いんだけど、合格するまでは、もう、会わないほうがいいと思うんだ」
陽太は一瞬目を見開くが、それから目をつぶって頭を冷やす。そうだ。僕はこういうことしている場合じゃなかった……。
「わかりました。つらいですけど……、出来る限り、綾女さんのオフィスに向かわないようにします」
「でも、どうしても辛くなったら、いつでも来ていいから。あと、これ、私の携帯の番号。何かあったら、いつでもかけてね。それから、これだけは覚えておいて。私はいつでも陽太くんの傍にいるから」
「はい」
そうして迎えた決戦前の前夜、クリスマス、お正月と年中行事もあったが、陽太と綾女は軽く電話で会話を交わして終わらせた。全ては合格が決まってから……。陽太はその日まで綾女への溢れる思いを封じてきた。
その日、陽太は眠れなかった。目が冴えて仕方がない。部屋に暖房がついているのに寒気もする。そして、一度電気をつけて起き上がって机に向かう。
「これは……、どうしよう……」
手に取ったシャープペンがころっと床に転がり落ちる。そこで陽太は自分自身が震えているのに気がつく。
陽太はきゅっと目をつぶり、再び目を開くと、携帯を取り出し、数少ないアドレスから目的の番号へかける。
「もしもし……」
「陽太くん……、そうか。明日だね」
聞き慣れた安心する声。陽太は今からでも会いに行きたい衝動に駆られながらも、自分がどんな状況なのかを告白する。
「緊張してるんだね……。うん。大丈夫。私は、いつでもそばにいるよ」
「綾女さん……」
「陽太くんなら大丈夫。今まで、頑張ってきたんだもん。あとは、明日、自分を信じて机にむかうだけだよ」
綾女は子供をあやすような優しい声で陽太に話す。陽太はその声を子守唄代わりにようやく深い眠りにつくことができたのだった。
「んー、今更なんだけどね」
めぐみがオフィスの休憩に使っているテーブルの方で綾女と向かい合って話していた。
「陽太くん、あのあと、ここで勉強続けていても、結果は一緒だったと思うんだよねー」
綾女は目を見開いてめぐみを見る。
「えっ、それって、わたしたちの努力無駄だったってことですか?」
「ううん、そうじゃなくって。たしかに、あの夏の辺りからバタバタしだしちゃって私達も陽太くんの勉強見てあげられなくなっちゃったけど、ちょっとは陽太くんに時間あげられたかなって思ったのよ。実際、それくらい余裕あったでしょ」
「まぁ……、そうですけど、そこで、もし私が手を差し伸べたら……」
「うん。だから……ね。さっきの話だと、受験前、陽太くんすっごいナーバスだったってことじゃない」
「はい。お兄ちゃん、すっごいピリピリしてました。私はまだ経験がないから分かんなかったけど、受験って、そんなに緊張するもんなんだ、って思いました」
一緒にお茶をしていたなずながめぐみに向かって口を開く。
「でも、やっぱり、恋愛ごととか、そういうのは、邪魔だと思うんだよ。最後は」
綾女は、自分に言い聞かせるように言葉を紡ぐ。
「私ね、ちょっと昔の漫画ですっごい好きな話があって、あれは確か、東大目指してる男の子、が浪人生なのに女子寮に入ることになっちゃって、って話で……」
「あ、その話、私も知ってます。女の子たちとドタバタやりながらも、結局合格しちゃうんですよね。ありえないー、って思いましたけど、面白かったですね」
めぐみとなずなが意気投合してその漫画の話題で盛り上がる。
「綾女も、陽太くんも、真面目なところあるからねー。もうちょっと、肩の力抜いても良かったんじゃないかなって。そう思ったのよ」
「もう、あとは結果を待つのみですから……。結果がどうあれ、陽太くんには会います」
「うん。会ってあげてください。お兄ちゃん、最近ずっとそわそわしてます」
「それって、受験の結果が……じゃないのかな?」
「もちろん、それもあると思いますけど……ね」
なずなは、綾女を上目遣いに見る。
「お兄ちゃん、待ってますよ」
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