別れることになっても愛があれば逢えるんだよっ

うさみあきら

文字の大きさ
2 / 7
第一章

(2) その1-2

しおりを挟む
 愛子の両親が営む生花店『シェリーフルール』は、陽当りの良い、広い道路に面した場所にあり、付近は個人が経営するお洒落な喫茶店やレストラン、洋服屋などが並んでいた。この町のことをかつて訪れたことのある作家が「Blue Town」と名付けて紹介したことから周囲に広まり、女性に人気の一大スポットとなっていた。
 中でも『シェリーフルール』、そして、三軒ほど隣りにあるパン屋『みなみベーカリー』は一二を争うほどの人気店で、週末は若い女性客でいつも賑わっていた。

 その「Blue Town」に引っ越してきた克也の家は、『シェリーフルール』とそんなに離れていない新築アパートの一階であった。引っ越しが落ち着いてから克也の母が、『シェリーフルール』に挨拶に訪れた日のことだった。
 克也は、新しい学校の挨拶がてら、母親と一緒に近所挨拶に連れ回されていた。

「さっき挨拶に行った、パン屋さん、美味しそうだったなぁ……」

 克也は母親の後を付きながら、そんなことを考えていると、目の前に色とりどりの花で埋め尽くされた店が現れる。そして、花に囲まれて、楽しそうにしている女の子……。

「あっ!」

 克也は思わず声を上げる。母親は克也の様子を不思議がっていたが、その事を気にせず、生花店の店内へと入っていく。
 母親が店主である愛子の両親と挨拶を交わしている間、克也はずっと花と戯れている女の子のことが気になって仕方なかった。

 克也の視線に女の子は気がつくと、ニコッと微笑んで挨拶する。

「こんにちわっ!」

「こ、こんにちわ」

 慌てて克也も挨拶する。

「見かけない子だねー。遠くからきたの?」

「う、うん。最近、引っ越してきた」

「そっかそっかぁー。私はアイコ。キミは?」

「僕はカツヤ」

「カツヤくんかー。よろしくねっ!」

 愛子は満面の笑みで克也の腕をとって握手をする。

 これが、愛子と克也の、ホントウの最初の出会いだった。
 
 それから愛子は克也の手をとって店内をくるくる回って案内する。

「ね、ね、カツヤくんもお花好きなの?」

「う……、うん」

 愛子の笑顔につられて思わず克也はうなずいてしまう。
 それを聞いた愛子の顔が、ぱぁっ、と輝く。

「そっかぁー! 男の子でお花好きなお友達っていないから、カツヤくんが一番最初だよっ」

「そ、そうなんだ……っ」

「うんっ!」

 一番最初、という言葉がとても嬉しくて、克也も自然と笑顔になる。

 こうしてふたりが会話している間に、母親の挨拶が終わって克也のもとにやってくる。

「あら、可愛い女の子、お子さんですか?」

「はい。愛子っていいます。うちの自慢の看板娘です」

 愛子の父親が、笑みを浮かべて克也の母親に紹介する。
 そこに、入口の方から女性の客がやってきて、愛子の父親に挨拶する。

「いらっしゃい。綾香さん」

「こんにちわっ。って、あれ? 克也くんと、お母さん?」

 女性の客は、目を丸めてそこにいた克也と母親を見る。

「あ……。お姉さん」

「びっくり! 引っ越したって聞いてたけど、まさか、この辺り?」

「はい。このすぐ近くに引っ越してきました。綾香さんもこの辺りなんですねー」

 克也の母親が嬉しそうに、綾女に答える。

「そうなんですよー。私もこの近くに住んでて……。そっかー。よかったー。また逢えるとは思ってなかったよー」

 お姉さんは嬉しそうに克也の頭を撫でる。そして、隣で克也の手を繋いでいる愛子にも気がつく。

「愛子ちゃんとも、もう仲良くなったんだ」

「うん! はじめてのお友達っ!」

 愛子は、嬉しそうにお姉さんに言う。

「初めて? ……あ、そっか。愛子ちゃんにとっては、男の子のお友達は、初めてってことかー」

「うん!」

「よかったねー。克也くん、愛子ちゃんのことよろしくね。そういえば、優菜ちゃんにも似てるし……、そっか。克也くん、そういうことかー」

 お姉さんは全てを察したように克也に向かってニヤリと笑う。克也はなにか大事なものを知られたような気分になってドキドキする。

「ふふっ。大丈夫。克也くんと愛子ちゃんか。お似合いっ。お姉さんも応援しちゃおう!」

 綾香は愛子と克也に視線を合わせるようにしゃがむと、ふたりの頭を撫でた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【SS更新】付き合ってもいないのに、幼なじみの佐藤がプロポーズしてきた(本編完結済)

ぽぽよ
恋愛
「俺らさ、結婚しない?」 三十二歳、独身同士。 幼なじみの佐藤が、たこ焼きパーティの最中に突然言い出した。 付き合ってもないのに。 夢見てた甘いプロポーズじゃないけれど、佐藤となら居心地いいし、給料もあるし、嫁姑問題もないし、性格も知ってる。 断る理由が、ない。 こうして、交際0日で結婚することが決まった。 「とりあえず同棲すっか」 軽いノリで決まってゆく未来。 ゆるっとだらっと流れていく物語。 ※本編は全7話。 ※本編完結後、ゆるいSS投稿予定。 ※サイドストーリー(切なめ)投稿予定。 ※スパダリは一人もいません笑

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

田舎の幼馴染に囲い込まれた

兎角
恋愛
25.10/21 殴り書きの続き更新 都会に飛び出した田舎娘が渋々帰郷した田舎のムチムチ幼馴染に囲い込まれてズブズブになる予定 ※殴り書きなので改行などない状態です…そのうち直します。

処理中です...