別れることになっても愛があれば逢えるんだよっ

うさみあきら

文字の大きさ
3 / 7
第一章

(3) その2-1

しおりを挟む

 それから同じ学校に通うことになった愛子と克也は、登下校も毎日一緒にするようになり、学校から帰ってきて早々に愛子の生花店で過ごしたり、近くの公園に遊びに行ったりするようになっていた。

 ある日の下校時、愛子は寄り道をして、克也を河原のほとりにある「ヒミツの場所」へと案内する。

「きれい……」

 鮮やかに黄色い花を咲き誇らせ、菜の花の群れが、小さなふたりを包み込む。

「ふふっ、克也くんも気に入った?」

「うん。すごいねー」

「ワタシの、ヒミツの場所だよっ」

「ヒミツ?」

「うん」

 克也は、ヒミツという言葉に反応し、顔を赤くしてしまった。

「克也くん?」

 棒立ちになって顔を赤くしてうつむいている克也の反応が不思議で、愛子は克也の顔を下から覗き込む。

「どうしたの?」

 克也は、愛子が、ヒミツというコトバに秘められた意味を知らないのだということに気がついた。

「ね、ねぇ、愛子ちゃん」

「なに?」

「ヒミツって、どういうコトすることか知ってる?」

「んー……、ナイショのこと?」

「うん……、そうなんだけど、もっと……、ハズカシイコトすることだよっ」

「ハズカシイコト?」

 克也の頭には、お姉さんが教えてくれた、「ヒミツ」のことしか頭に浮かんでいなかった。

「どんなコト?」

 純粋な目で克也の目を覗き込んで答えを求める愛子。克也は顔を真赤にしながら答える。

「ハダカになって……、くっつきあったり……」

「えっ? どうしてハダカになるの?」

 愛子の純粋無垢な質問に克也は戸惑いながらも正直に答える。

「ハダカで、くっつくと、キモチイイんだよっ」

「うーん……、良くわかんないけど、そうなんだっ。ね、克也くんは、ヒミツのこと、したいの?」

 克也はさらに顔を真赤にして、コクリと頷く。

「うーん、でも、お外でハダカになるのは寒いし、恥ずかしいからなぁ……」

 愛子は、克也の求めに応じようと小さな頭を巡らせる。

「あ、愛子ちゃん」

「ん?」

「ハダカにならなくても、ヒミツのこと、できるよ」

 克也はお姉さんに教えてもらった、「服を着ててもできるヒミツ」のことを思い出す。

「でも、これは、大好きな人にしか、やっちゃダメなんだって」

「そっかぁー」

 愛子は克也の目を見て、満面の笑みで素直なコトバを紡ぐ。

「ワタシ、克也くんのこと、だーいすきっ!」

 克也も、愛子の思いに応えるように、素直なコトバを吐き出す。

「ほ、ボクも、愛子ちゃんのこと、大好きだよっ!」

 克也は思い切って、自分の気持を吐露して、愛子との距離を縮めると、両手でその小さな身体を抱きしめる。愛子は、克也の思いも付かない行動にビックリする。

「か、カツヤくん?」

「愛子ちゃんっ!」

 それから克也は、お姉さんに教えてもらった、唇を唇で重ね合わせるコト。それを愛子にぎこちなくする。

「ん……、んむぅ……」

 愛子はびっくりしながらも、必死な克也の動作を受け入れる。

『カツヤくん、ワタシのこと、こんなに好きなんだっ!』

 愛子も重ねた唇をぎゅっと押し付ける。思わぬ愛子の反応に克也はびっくりして、バランスを崩し、後ろに倒れ込んでしまう。菜の花の群れがクッションになって克也の背中を支え、ふわっと黄色い花びらが方々に舞い上がる。愛子も克也と一緒にぽふっと倒れ込んで、克也を押し倒すような形になる。

「わぁっ……、きれいっ!」

 愛子は舞い上がった黄色い花びらが、ひらひらと落ちる様子に見とれていた。それから、克也に向かって笑顔で言う。

「ふふっ、ヒミツのこと、しちゃったねっ!」

 克也は一瞬キョトンとしていたが、愛子につられて、笑顔を返していた。

「ふふっ、ヒミツっ、克也くんと、ふたりだけのヒミツだよっ」

 愛子はとても嬉しそうに、克也の手をとってブンブン振り回す。克也も愛子の笑顔を見て嬉しくなる。と同時に、このままこの手を離したくないという衝動にも駆られていた。

 そうしてふたりが笑い合っていると、愛子の母親がいつものように迎えに来る。

「愛子ーっ、克也くーん、買い物に行くから上がってきなさーい!」

「はーいっ!」

 ふたりは体を起こして立ち上がると、ポンポンっと、お互いの体についた花びらや土埃を払い合って、愛子の母親のもとに駆けていくのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

田舎の幼馴染に囲い込まれた

兎角
恋愛
25.10/21 殴り書きの続き更新 都会に飛び出した田舎娘が渋々帰郷した田舎のムチムチ幼馴染に囲い込まれてズブズブになる予定 ※殴り書きなので改行などない状態です…そのうち直します。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【SS更新】付き合ってもいないのに、幼なじみの佐藤がプロポーズしてきた(本編完結済)

ぽぽよ
恋愛
「俺らさ、結婚しない?」 三十二歳、独身同士。 幼なじみの佐藤が、たこ焼きパーティの最中に突然言い出した。 付き合ってもないのに。 夢見てた甘いプロポーズじゃないけれど、佐藤となら居心地いいし、給料もあるし、嫁姑問題もないし、性格も知ってる。 断る理由が、ない。 こうして、交際0日で結婚することが決まった。 「とりあえず同棲すっか」 軽いノリで決まってゆく未来。 ゆるっとだらっと流れていく物語。 ※本編は全7話。 ※本編完結後、ゆるいSS投稿予定。 ※サイドストーリー(切なめ)投稿予定。 ※スパダリは一人もいません笑

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...