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#01 日々を生きる
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──食べる君が好き。
レタスは手で千切ってキャベツは千切りに。ドレッシングは自作。胡麻油と酢と醤油。トマトは四分の一に切ったものを二切れ。真空パックのコーンが残っていた。散らそう。スープは、如何しようか。貝類は無い。長葱と玉葱がある。乾燥ワカメと油揚げもあった。コンソメも味噌もある。卵もある。鳥がらスープの顆粒も未だ残っていた。ついでに小さな笊には山ほど唐辛子が積まれている。
ふむ。
「味噌汁とコンソメどっちにする?」
「んー?」
細い肩にかかる黒髪は酷い寝癖だった。持参して来たパジャマも色々乱れて居る。今更何かを言う事もないけれど。
「その前にシャワーか?」
「うん。沸いてるの?」
目を擦りきょろきょろと辺りを眺める姿は可愛らしいと思えた。寝起きの見当識障害が少し残っているらしい。枕かぬいぐるみでも抱えさせたら少女にしか見えないだろう。
「直ぐは入れるぞ。」
「うん。えっと、中華風が良い。」
「りょーかい。」
お湯を沸かして固形のコンソメと鳥がらスープの顆粒を放り込む。薄切りにしら玉葱も。卵はさっと溶いて塩コショウで味を整えておく。長葱も使おうか。輪切りでも良いだろうが、少し小さく刻んだ。色味が悪い気がするが、今から人参を入れても間に合わないし、アイツは辛いの苦手だから唐辛子は使えない。これで良いだろう。主食はパンだな。トースターに放り込む。フライパンを熱して、少し悩んだ。サラダ油で良いか。胡麻油とかオリーブ使うと変な顔されるしな。油が温まったらベーコンを敷いて両面を焼く。焦げる前に卵を落とす。塩コショウを振る。少し早めに水を回して蓋をした。
そう言えば着替えを用意してなかった。小さなバッグを勝手に漁って更衣室に放り込んでやる。どうやら今上がった所らしい。浴室から未だ眠そうな声が飛んで来る。
「ありがと。でも、もうちょっと遅く来て私の裸見ようとか思って頂戴ね?」
「はいはい。」
相手をしている暇は無い。トースターが焼き上がったパンを跳ね上げた。皿に並べて丁度焼き上がったベーコンと半熟の目玉焼きを乗せる。ダイニングのテーブルに並べる。サラダはそのまま、ドレッシングは好きに使えば良い。スープを少しだけ再加熱して、溶き卵を流し込む。お玉で受けてやって、箸で混ぜてやると綺麗に広がる。最後に長葱を散らしてやれば完成だ。
テレビを点けると天気予報だった。今日は晴れるらしい。悪くない。ジャムもあった方が良いか? ブルーベリーがあった筈だ。アレも丁度出て来た。さぁ、朝食にしよう。
「頂きまーす。」
「どうぞ、召し上がれ。」
ドレッシングは上手く出来ていた。トマトとも合う。
「相変わらず抜群の焼き加減だね。」
ソレはパンと目玉焼きとベーコンを頬張って笑った。
「次はサンドイッチにするか?」
「あ。それも良いねぇ、このサラダも挟んで食べれるんじゃない?」
成程。それも良いな。多少ドレッシングで汚れるかも知れないが、ここならそれも問題にならない。
「そしてスープおいしー。ホントにコンソメと鳥がらだけ?」
「多少塩振ってるけどな。玉葱と合うからじゃないか?」
「卵も塩加減が良いのよね。私がやるといっつも振り過ぎちゃうから。」
トーストと乗っている物をがっつきながら器用にスプーンでスープを呑んでいる。
「あー飲み物要らないや。シャキシャキサラダとスープで十分。ブルーベリーも明日かしら?」
合間にサラダを放っている。用意した料理は五分とかからずにソレの胃の中に収まってしまった。
「ふぅ、満足。」
「珈琲は?」
「ん? ああ、そうね。ふふっ、でも、休みだからってこんなに幸せだとバチ当たりそう。」
「偶にだから良いだろ。俺も綺麗に食って貰えると嬉しい。」
インスタントの珈琲に砂糖とミルクを放る。砂糖は少しだけ多目に。好みの物は好み通りに愉しむ方が良い。
「んふふ、甘くて、美味しい。」
「そうか。後はどうする?」
「んー? んー。そうねぇ、君の傍に居たいわねぇ。何もしなくて良いから、だらーっと。」
「掃除もするし買い物も行くぞ。」
「つれないなぁ、手伝うし、付き合うけど。ふふっ、何だろうねぇ、こういうの。」
遅れて食べ終わった俺も珈琲を呑んだ。ブラックだ。苦みと香りが鼻から抜けて行く。
「幸せー。ありがとね、私なんかの傍に居てくれて。」
頭を撫でてやる。それで良かった。それが良かった。髪を気にしている。少し切り過ぎたと思っているらしい。
「それも似合ってるよ。」
「だからさー、もっと似合うのあると思うのよね。」
また伸ばしながら探せば良い。伝えなかったけれど、やたらと温かい固まりがくっ付いて来た。伝わったようだった。片付けは少し後になるか。良いだろう。折角の休みだ。贅沢に使ってしまおう。
レタスは手で千切ってキャベツは千切りに。ドレッシングは自作。胡麻油と酢と醤油。トマトは四分の一に切ったものを二切れ。真空パックのコーンが残っていた。散らそう。スープは、如何しようか。貝類は無い。長葱と玉葱がある。乾燥ワカメと油揚げもあった。コンソメも味噌もある。卵もある。鳥がらスープの顆粒も未だ残っていた。ついでに小さな笊には山ほど唐辛子が積まれている。
ふむ。
「味噌汁とコンソメどっちにする?」
「んー?」
細い肩にかかる黒髪は酷い寝癖だった。持参して来たパジャマも色々乱れて居る。今更何かを言う事もないけれど。
「その前にシャワーか?」
「うん。沸いてるの?」
目を擦りきょろきょろと辺りを眺める姿は可愛らしいと思えた。寝起きの見当識障害が少し残っているらしい。枕かぬいぐるみでも抱えさせたら少女にしか見えないだろう。
「直ぐは入れるぞ。」
「うん。えっと、中華風が良い。」
「りょーかい。」
お湯を沸かして固形のコンソメと鳥がらスープの顆粒を放り込む。薄切りにしら玉葱も。卵はさっと溶いて塩コショウで味を整えておく。長葱も使おうか。輪切りでも良いだろうが、少し小さく刻んだ。色味が悪い気がするが、今から人参を入れても間に合わないし、アイツは辛いの苦手だから唐辛子は使えない。これで良いだろう。主食はパンだな。トースターに放り込む。フライパンを熱して、少し悩んだ。サラダ油で良いか。胡麻油とかオリーブ使うと変な顔されるしな。油が温まったらベーコンを敷いて両面を焼く。焦げる前に卵を落とす。塩コショウを振る。少し早めに水を回して蓋をした。
そう言えば着替えを用意してなかった。小さなバッグを勝手に漁って更衣室に放り込んでやる。どうやら今上がった所らしい。浴室から未だ眠そうな声が飛んで来る。
「ありがと。でも、もうちょっと遅く来て私の裸見ようとか思って頂戴ね?」
「はいはい。」
相手をしている暇は無い。トースターが焼き上がったパンを跳ね上げた。皿に並べて丁度焼き上がったベーコンと半熟の目玉焼きを乗せる。ダイニングのテーブルに並べる。サラダはそのまま、ドレッシングは好きに使えば良い。スープを少しだけ再加熱して、溶き卵を流し込む。お玉で受けてやって、箸で混ぜてやると綺麗に広がる。最後に長葱を散らしてやれば完成だ。
テレビを点けると天気予報だった。今日は晴れるらしい。悪くない。ジャムもあった方が良いか? ブルーベリーがあった筈だ。アレも丁度出て来た。さぁ、朝食にしよう。
「頂きまーす。」
「どうぞ、召し上がれ。」
ドレッシングは上手く出来ていた。トマトとも合う。
「相変わらず抜群の焼き加減だね。」
ソレはパンと目玉焼きとベーコンを頬張って笑った。
「次はサンドイッチにするか?」
「あ。それも良いねぇ、このサラダも挟んで食べれるんじゃない?」
成程。それも良いな。多少ドレッシングで汚れるかも知れないが、ここならそれも問題にならない。
「そしてスープおいしー。ホントにコンソメと鳥がらだけ?」
「多少塩振ってるけどな。玉葱と合うからじゃないか?」
「卵も塩加減が良いのよね。私がやるといっつも振り過ぎちゃうから。」
トーストと乗っている物をがっつきながら器用にスプーンでスープを呑んでいる。
「あー飲み物要らないや。シャキシャキサラダとスープで十分。ブルーベリーも明日かしら?」
合間にサラダを放っている。用意した料理は五分とかからずにソレの胃の中に収まってしまった。
「ふぅ、満足。」
「珈琲は?」
「ん? ああ、そうね。ふふっ、でも、休みだからってこんなに幸せだとバチ当たりそう。」
「偶にだから良いだろ。俺も綺麗に食って貰えると嬉しい。」
インスタントの珈琲に砂糖とミルクを放る。砂糖は少しだけ多目に。好みの物は好み通りに愉しむ方が良い。
「んふふ、甘くて、美味しい。」
「そうか。後はどうする?」
「んー? んー。そうねぇ、君の傍に居たいわねぇ。何もしなくて良いから、だらーっと。」
「掃除もするし買い物も行くぞ。」
「つれないなぁ、手伝うし、付き合うけど。ふふっ、何だろうねぇ、こういうの。」
遅れて食べ終わった俺も珈琲を呑んだ。ブラックだ。苦みと香りが鼻から抜けて行く。
「幸せー。ありがとね、私なんかの傍に居てくれて。」
頭を撫でてやる。それで良かった。それが良かった。髪を気にしている。少し切り過ぎたと思っているらしい。
「それも似合ってるよ。」
「だからさー、もっと似合うのあると思うのよね。」
また伸ばしながら探せば良い。伝えなかったけれど、やたらと温かい固まりがくっ付いて来た。伝わったようだった。片付けは少し後になるか。良いだろう。折角の休みだ。贅沢に使ってしまおう。
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